表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

4

「お待たせ致しました。例えば、こちらの作品などいかがでしょうか」


「え……」



 彼が差し出した一冊の本。


 記憶に深く刻まれたそれを唐突に示されて、上手く言葉を継げない。その本は、その本だけは、いま見たくなかった。



 私の戸惑いを違う方向に察したのか、彼はその本の説明を始めた。



「実を言うとね、私の一押しなんです、この作家さん。まだ若い方らしくて、そんなに作品数はないんですけどね。それぞれに手書きPOPを立てて、ほら、あそこの一角。ちょっと目立たないですけれど、この作家さんの特設コーナーを作ったりしてるんですよ」



 そう嬉しそうに話しながら、彼は店内の片隅を示す。私はと言えば、とてもではないがそちらを確認する気にはなれず、俯き入ってしまう。



「この作品を…… なぜ私に薦めるんですか」


「この作品、その方の処女作なんです。最近はなんだかちょっと書けてないみたいで、新しい作品が発表されていないんですけどね」


「はぁ…… えっと、だから?」


「すみません、私にもよくわからないんです」


「そんな、無責任です」


「そう言われましても、とても感覚的なことなので…… えっと、とにかく貴方にこの本と向き合って欲しかった、ではダメですか? ちょっと自慢なんですけど、これまで人に本を薦めて外したことないんですよ、僕」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ