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東京最前線  作者: 及川りのせ
EP.01 無職透明
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01

 可哀相な男は頭を抱えながら地面に蹲っていた。その脇腹に無慈悲な足蹴りがお見舞いされて男は悲鳴を上げる。次から拳を叩きつけているのは五人の少年。意気地のかけらも感じられない、どうしようもないふやけた笑みを浮かべていた。その内の一人が男の胸ポケットを探ろうを手を差しのばした。

 金曜夜の繁華街。カツアゲなんて珍しくもなかろう。しかし無抵抗の人間を囲って襲うというのはどうにも腹の虫が好かない。少年たちの背後から岸和田(きしわだ)が声をかけた。

「その辺にしておきなさい」

「誰だよオッサン」

 誰にその口きいてんだてめえ、などとは言わずに至って控え目に言葉を継いだ。

「小遣いならやるから帰りなさい」

 財布を取り出し中身を広げた。一万円札が数枚ばかり、朝から働き回ったあとの残金全てだ。

「これだけかよ。飲み代にもなんねー」

「成人してるようには見えないが」

「うるせえな貧乏人。コンビニでも行ってもっと出してこい」

 岸和田のネクタイを掴もうと伸びてきた手は空を切る。肌を打つ乾いた音が鳴り少年の身体は半回転した。

 これだからガキは大嫌いなのだ。あくまで政治的解決を提案してやったのに、こちらが下手に出ればどこまでもつけあがる。仏の顔も三度までという言葉はあるが、あいにく仏でも聖人でもないから三度目などない。先の暴言に今の反抗的な態度、鉄拳教育を施すに十分な理由は出揃った。

 あとの四人が束になり踊りかかってくるが同じこと。右手で投げ飛ばし、右膝を腹に食らわせ、左手を顔面に繰り出して、左足で蹴り上げた。各々一撃、虚勢の炎は燃え殻も残さず蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


「おい坊主」

「お願い蹴らないでっ」

 いつまでも地面にへばっていた男をつま先で小突くと大袈裟に身体を跳ねさせた。岸和田が手を貸し起こしてやると、これまた手応えのない軽さである。やっと面を上げた顔つきはまだ若く幼さの残るものであるが、殴られて腫れた頬の分を差し引いても人並み以上の面構えといったところだ。黒目がちな眼が静かに開く。

「どこぞの会社の係長でしょうか。ありがとうございます」

「随分な中間管理職出してくんな」

「部長って齢でもないなあと思いまして」

 そこはお世話でもシャチョサーンくらい言えないものかと、岸和田は顔を引きつらせた。

 アリガトデス。こちらの心うちを見透かしたのかと思うような片言で男が立ち上がろうとしたその時だ。

 ガクン。

 前のめりで顎から倒れる勢いでへたり込んでしまった。寸前のところで岸和田の片足にしがみつき地面との衝突は免れ、布地を掴む指に力がこもる。

「……オ腹、空イタ」

「知らねえよ」

「……オ金、取ラレタ」

「知らねえよ」

 弱々しく瞳を湿らせ見上げてこようが知ったことではないし、奢られる義理はあっても奢ってやる情けはない。無理やり振りほどこうとするほど余計に絡み付いてくる様はイヤホンコードのようだった。

「離せよ」

「ヤダ」

「離れろ」

「ヤダ」

「ぶち回すぞ!」

「あらやだ、マサシさんもとうとう堕ちるとこまで堕ちたのね」

 誰だよ、お取り込み中に割り込むな。岸和田が声の方に振り向くと、嫌と言うほど見覚えのある派手な化粧が目に飛び込んだ。行きつけのクラブの、本人曰わくお嬢さん。

「一般人を恫喝なんて感心しないわ」

「むしろゆすられている側だ」

「ふーん」

 レイカの冷めた視線が岸和田と男を二往復する。ゴキュキュル。腹の虫が低音域を震わせた。レイカは華やかなネイルアートが施されている指先を赤い唇に当てる。

「何か食べたいの?」

 レイカの言葉に男は千切れんばかりの勢いで首を縦に振る。なんだ私の店で食べればいいじゃない。ちょうどいいわ、マサシさんこのまま同伴してね。などと男とレイカにだけ都合の良い勝手なスケジュールが押し付けられる。岸和田が反論を挟み込む隙など与えられなかった。


「一年ほど前まで大学生をしてました。問題を起こして退学になりました。それが原因で親にも勘当されました。なので住み込みの仕事を探してこの町に来ました。五軒に断られようやく雇ってくれたのがここのはす向かいのお店でした。しかし一昨日でクビになりました。その夜不審者に絡まれ全財産を強奪され口封じに暴行されました。今日も同じ目に遭い、盗る物もないのに袋叩きにされていたのが先ほどの出来事です」

 ユウスケと名乗った男の身上話は、酒の肴にするには少々重たいものであった。含んだばかりのウイスキーに何も味わいを感じなかった。レイカも開いた口が冒頭から塞がっていない。

「とどのつまり住所不定の」

「無職です。今にも透明になりそうです……」

 要するに一昨日の夜からいきなり菓子パンも買えない窮地に立たされていたわけで、食わせてくれる人ならば誰彼構わず尾を振り回すしかなかったのだろう。一度目の転落はなんとか踏ん張り持ちこたえたようだが、はてさて二度目はどうだ。為されるがままに殴られていたあの光景から心境を慮かるだけでも同情を禁じ得ない。今だけは嫌なことを忘れなさいとレイカがグラスを静かに差し出した。


 ユウスケが店も追われた理由は最初のタバコも吸い終わらぬ内に判明した。

 グラスにまだ三センチほどの水深を残し酔い潰れた。レイカの手からボトルを奪い確認したアルコール度数はわずかに五度。ほぼジュースじゃないか。一年もこの男を飼っていられた店に喝采を送りたい。まさか未成年じゃないだろうと尋ねたところ、据わった目でダブルピース。在学していたならば四年生になっていた。

「あ、思い出した。顔は良いんだけどなかなか会えない伝説のホストがいるって。写真でしか見たことないけど超似てる」

 レイカがさり気なく呟いた。超早く言えよバカヤロウ。すぐに戦闘不能で離脱するから滅多にエンカウント出来ない的な意味合いでの伝説扱いなのだろう。きょう日アイドルですら会えるというのに、ツチノコ並に会えないホストに存在意義はないのだ。

「嬢の間ではそれなりに有名よ。その子に出会えたら店のトップになれるって」

 夜蝶にしてそこまで言わしめるほどのレアキャラなど店にとって足手まとい以外の何であるというのか。あのまま野垂れ死にさせたほうが世間様のためになったのではないかと、助けたことをいささか後悔し始めた。

 そんな岸和田の心境を知ってか知らずか、ユウスケがグラスの残りをいつの間にか飲み干して、ボトルに手を出そうとしている。やめろ、これ以上飲むなと慌ててその手を払いのけた。

「なにするんですかー」

「もう十分出来上がってるんだよ、出来損ないが」

「くーだーさーいー」

 やめろいやだの押し問答の末に思わずゲンコツをくれてやった時、レイカがとんでもないこと口走った。

「マサシさんたちのところで面倒見てあげならいいじゃない」

「馬鹿を言うな。託児施設じゃないんだぞ」

 腐っても貴方は、この町を牛耳る道心会(どうしんかい)のホープでしょう、どうにかしなさい。これ以上飲んだらこの子きっと死ぬわよ。一言目はさておき二言目の指摘はごもっともである。ボトルを睨みつける目はとっくにおかしい。ぶつぶつと「神サマなんて信じるもんか」とかの言葉が呪詛のように紡がれていた。

「……道心会って、関東随一の反社会的勢力ですよね」

「その言い方くそ腹立つな」

「いっそここで殺して」

「やらねえよ!」

「じゃあひとりで死んでやる!」


 店で死なれたら迷惑だから今日は帰って頂戴と、レイカは蝶のように手を振って二人を店外に追い出した。酩酊しているユウスケは立てるわけもなく岸和田の足に絡みつく。

「もうひとつ思い出した。ちょうど一年前ね、立て続けに潰れたクラブが五軒ある。この子を入店拒否したところなら面白いわね」

 そんな出来すぎた話があってたまるかと岸和田は顔を上げた。だがしかし不幸スートでロイヤルストレートフラッシュを決めてしまった男でもある。店のひとつやふたつ呪い倒していても……その先を考えるのはやめておこう。

 立って歩かないなら神田川に突き落とすぞと凄んでみても立ち上がれなかった彼を結局背負って歩き出す。さて、このゴミどこに捨ててやろうか。処理券は何枚貼り付ければ回収してくれるのか。あるいは淀橋あたりから放流するか。そんなことを考えながらはたと立ち止まったのはユウスケを拾ってしまった場所だった。

「ここに置いていこうとしたでしょ」

 湿度の高い声が耳元で囁かれる。

 いいんです、いいんです。助けて頂いた上にご飯まで食べさせてくれてこれ以上は望みませんから、ここに置いていって構いません。このご恩は一生忘れません。といってもあと数日の命だと思うので数日だけですが忘れません。草葉の影からあなたの更なるご活躍とご健勝を……。

「うるせえ、黙れ! 」

 祈るな。何があっても祈るなよ。クソがつくほど縁起の悪いこんなやつに祈祷されたら、手持ちの運気も諸手を挙げて逃げ出すに違いない。そんなことを考えていたらますます湿っぽくなった声がした。

「マサシさんと呼ばれてましたね」

「岸和田でいい」

「岸和田さん、言わなきゃいけないことが」

「今度は何だ」

「吐く」

「うあっ」

 背中から振り落とす間もなく、鼻をつく刺激臭と首から背中を伝う生温い感覚に襲われる。モーゼよろしく目の前の人波が一瞬で割れた。注がれる視線は同情なのかはたまた一緒くたにゴミ扱いされたものなのか。


 どうにかこうにか自宅に辿り着き、岸和田はユウスケを風呂場へ放り込んだ。

 汚された背広をゴミ袋にまとめながらいよいよ苛立ちもどす黒さを帯びてくる。程なく風呂から出てきたユウスケは赤ら顔が一転して青ざめた顔をしていた。

「怒って、ますよね?」

「本気で川に沈めなかっただけ有り難く思え」

「……はい」

「明日の朝出て行け。必ず出て行けよ!」


 夜は穏やかに明けた。

 あげた服はオーバーサイズで、ユウスケは余った丈を几帳面に折り目をつけて合わせていく。

 どこに行く。考え中です。足代くらいならやるけど。歩きますので。おう、そうか。

 目覚めてから交わした会話はこれきりで、この部屋からつつがなく送り出せば役目は終わる。姿は見送らず、玄関の扉が閉まる音だけを聞いていた。ようやく解放された静寂の中で紫煙をくゆらせる。気まぐれに見せた老婆心がこんなにも肩凝るものだったとは。しかしそのひとときも、何かがなぎ倒された騒音に打ち砕かれた。


 岸和田が窓の外を見るとデジャヴの光景が広がっていた。夜通し遊んだ帰り道なのだろうか、馬鹿共の顔ぶれは昨夜と同じ。ユウスケは駐輪場に投げ飛ばされたようである。未だかつてここまで運に見放された男がいただろうかと、再びの同情心が湧き起こる。ことと次第によってはもうひと世話焼かないわけでもなかったが、昨夜と違っていたのはユウスケが丸腰ではない点だ。自転車にかけてあったビニル傘を手にしている。懸命な判断だ。数の暴力に訴える輩など愚直に対峙する必要はない。

 だがユウスケは何か躊躇している様子で、傘を構えたかと思えばわずかに切っ先を落とす。そこに踏み込まれ肩を打たれてしまった。


「やっちまえ」


 ユウスケの耳に届くか届かないかのボリュームで野次を飛ばしてみたところ、岸和田に気付いた様子はなかったが、背中だけがピクリと反応して狙いが定まった。

 結末から先に述べるなら五人まとめて返り討ちにしてしまった。殴りかかってくる腕を、飛びかかってくる足を的確に打ち払う太刀筋に思わず感嘆が漏れる。傷つけるためでなく身を守るため動きに無駄のない、実に華麗な傘さばきであった。徐々に間合いはユウスケにとって有利なものとなる。最後の一人は手もとが狂ったのかそれとも狙い通りであったのか、大きく振りかぶった一撃が脳天に繰り出される。そいつが大の字に昏倒した時、勝敗は決したも同然であった。ひょうひょうとしたユウスケの横顔が朝日に白く照らされていた。



「やっちまえという天の声が聞こえまして」

 もう一度部屋によって入ることを許可したところ、ユウスケはへらりと笑ってそう言った。天の声は紛れもなく岸和田の声である。

「実家は道場なんですよ」

 こいつには悪い意味で驚きの連続であったが、出自についてはあの身のこなしを見てからならば納得だ。一瞬、ユウスケの顔が曇る。気にならないわけでもないが、縁切った家のことに触れるのは無粋というものだ。

「さっきのは傷害罪になりますか。岸和田さん経験豊富そう」

「二言目が余計だからな。お前のそういうところが癪に障る」

「ぶたないでっ」

 岸和田が振り上げた拳はクロスで防御される。すかさず突き出した足は向こう脛を捉え、ユウスケはその場に崩れ落ちた。

「いまのは傷害!」

「躾だバカヤロウ」

 ここ数日ので一番痛いと、ユウスケは左足を抱えて恨みがましい視線を投げてくる。素直に殴られておかないやつが悪い。二度目はもっと酷いものがお見舞いされるのがお約束である。そんなやりとりの最中、まだ早朝だというのに電話が鳴った。

「遅い!」

 鼓膜を突き刺す怒号の主は我らが長、久間(ひさま)であった。ワンコールで取りましたよ、などと口答えをすれば火に油の展開は想像に容易い。それについては何も言わず岸和田はすっと受話器を耳から遠ざける。あんまり大声で喚き立てるからほとんど用件を聞き取ることは出来なかったが、早急に赴く必要がある気配だけは察知した。ユウスケにも声は聞こえていたようで気もそぞろな様子だ。

「そういうわけだから俺は行く」

「え。岸和田さんの親分見てみたい」

 まるでパンダが来てるぞというような期待の色で顔が輝く。来るな行かせろのやりとりをする時間すら惜しい。勝手にしろとだけ告げ、岸和田は大急ぎで自宅を飛び出した。



「くまモンに似てますね」

 首まで怒りで赤く染めた久間の表情に慄き、ユウスケの一言に頭痛をもらった。口を開けるなと岸和田が肘鉄を見舞う。

 鋭い三白眼と、浅黒く日焼けした恰幅の良い体つき。それを猛獣としての熊と呼び畏怖する者は数多あるが、ゆるキャラにまで行き着くものは後にも先にもこの馬鹿だけだろう。朝七時を回ったばかりの事務所はがらんどうとしていて久間の他にいたのはヒデキだけだった。ユウスケの道すがらいきなりパイを投げつけるような暴言行為に彼も沸点間近だ。

「破門状を出すことになった。なのに全然人が集まらねえ」

 パソコンの画面から目を逸らさず久間が唸る。警官誤射の件は結局そうなるのかと、早朝から鼻息荒げ怒りを剥き出しにしている理由にも合点した。岸和田とて例に漏れず昨日も一日その始末に奔走していたわけで、身の空いているものは少ない。そこに出状業務がのしかかる。頭痛がますます酷くなった。ヒデキは古傷が疼くのか右胸のあたりをさすっている。ユウスケは手前がくまの顔をしてクエスチョンマークを飛ばしていた。

「いつまでに」

「昼前には出したい」

 昼前という柔らかい響きの単語が鋼鉄の重厚感をもって脳内をリフレインする。ヒデキはもう諦めてペンを持ち作業に取りかかっている。つまれたハガキの総数は目測で千枚を超える。この際ついてきたユウスケも戦力にねじ込むとして、昼までに千枚の宛名書き。三人力で間に合うか、いいや絶望的に無理だろう。

 しかし、無理です、と申し伝えるのは無茶な話だ。サルトルやマルクスを並べたてたとて、久間の示す色が真実なのだ。そういうものなのだ。

 お前も手伝え。そう命じようとしたが隣にいたはずのユウスケが、いつの間にか久間の真横でパソコンに向かい何かをしていて肝を冷やした。

「住所録が入ってるなら宛名を差込印刷をしたらいいじゃないですかー」

「なんだそれは」

「ですから、差込印刷で」

 口を開ければ無礼の限りを尽くしてきたユウスケが、とうとう禁句を言ってのけた。久間の顔がより一層の険しさを極める。体感温度は氷点下にまで落ち込んだ。派手にペンを落とす音が聞こえ「もうコイツやっちゃっていいよねえ!」とヒデキが頓狂な声で叫ぶ。

 とうの昔に岸和田を始め何人もの人間が、その機能の存在など指摘している。それでも久間は「なんだそれは」「訳の分からないことをするな」「ややこしい、手で書け」と言い放ちとりつく島もなかったのである。訳の分からないことはややこしいから仕方ないものとして受け入れるしかないのだ。

 最後に手を出した男はとくに不幸だった。送状作成を指示されていたのだが、印刷ボタンを押す瞬間を目撃した久間にあばらを数本持って行かれた。その上にやっぱり手書きでやり直しさせられたのだが、あまりの悪筆で宛所不明の返戻が多発したためペン字講座の履修を余儀なくされるという後日談つきだ。やんちゃ盛りの成人式前夜、五年前のヒデキのことである。以来暗黙のルールとして、例えそれが破門状だろうと年賀状だろうと異を唱える者もなくなった。


「急ぎならサクッと終わらせましょうよ」

「おい、訳の分からないことをするな」

 ユウスケがずいと久間の体を押しのけてついにパソコンの真正面に陣取った。ヒデキは絶句し瞬きすらも忘れてしまっている。

 時間にして五分余り。軽やかにキーを叩く音と同時に動き始めたプリンター。腱鞘炎に悩まされ血豆を潰していた日々が、白い箱に吸い込まれるハガキのように呆気なく流されていく。

「なんだこれは。誰だか知らんが君、便利なもの知ってるな」

 知らなかったぞ。そう言いながら歯を見せて笑う久間に膝の力も抜けて倒れてしまいそうだ。

「この枚数を全部手書きするとか脳筋すぎません?」

 さり気なく差し込まれた毎度毎度の暴言を諫める気力もわき起こらない。今度の年賀状はもうやらなくていいのかな、乾いた声でヒデキがうわ言のように漏らす。傍若無人とも思えたユウスケの振る舞いに疲弊しきっていたはずなのに、たかがこれだけのことで人助けはしておくものだと思えてしまった岸和田は、ひどくやるせない気持ちになった。


(完)

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