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魂の伴侶、それは魂の片割れツインレイ

7月7日、今日は星のカーニバルだ。


国中から、カーニバルを見ようと、このアルマンドの街に人が集まって来ている。


宿屋も酒場も人で一杯だ。


武具屋や道具屋も、夜には店を閉めて、カーニバルに出かける。


今のうちに行っておかなければ。


【武具屋】


「アッサム様。ご注文のランス、出来てますよ」


「これは良い…今から慣らして、北の遠征に持って行こう」


「ありがとうございます」


「アッサム。新聞見たわよ」


「コリアンダー。お前の店は隣りだろ」


「だから、ここに入るのが見えたのよ」


それはそうだが…暇なヤツだ。


コリアンダーは、サロンが暇な時は、道具屋を手伝っている。


まあ、コリアンダーのサロンが暇だという事は、病人やケガ人が居ないという事で、それはそれで良い事だけれど…


「新聞の取材受けたのね」


「仕方なくな」


「星のカーニバルの日から、ってところが貴方らしいわね」


「意味が良くわからんが」


「だって、何か運命的な物を感じない?」


「運命ねえ…?女性はそういう話しが好きだな」


「東方の国では、七夕と言って願い事を書いて笹に吊るすそうよ」


「ほう」


「天上では、離れ離れの男女の星が、年に一度天の川を渡って会えるのよ。ロマンチックよね」


ロマンチックねえ…


コリアンダーも女性だった事を忘れていた。


そう言えば、私がまだ見習い騎士だった頃「好き」だと言われた事が有ったな。


幼馴染みにいきなりそんな事を言われて、私は、ただ驚くばかりだったけれど。


「星のカーニバルの夜に仕事をするなんて、騎士団ぐらいよ」


警備なのだから仕方が無い。



〈夜の城下町。馬に跨り巡回する騎士達。石畳の上を歩く足毛馬ミューズ〉


私は、愛馬ミューズと共に街の安全を見てまわっている。


本当に開いている店は、宿屋と酒場ぐらいだ。


天の星達のように、地上でも離れ離れの男女が、この日ばかりはどうしても会うのだと言う。


私にはそんな相手は居ないが。


探していた…


あの夢を見るずっと前から、私は誰かを探していた気がする。


だから、コリアンダーに「好き」と言われた時も、何か違う気がしたのだ。


自分の魂の半分…そんな事って…


そんな相手が本当に居るのだろうか?


パレードの時間だ。


先導しなければ…


星が綺麗だ。


晴れて良かった。


「行くぞ、ミューズ」


【メインストリート】


大通りは、人でごった返していた。


「ああ、通りに出るな」


「危ないぞ」


警備の騎士達が怒鳴っている。


私の先導するパレードが人々の見物する通りを進む。


着飾った人や、大きな人形…


パレードが終わると、街は明かりを消して、星空を楽しむ。


こんな平和がいつまでも続けば良い。


東方の国の七夕の願い事…


私なら、世界が平和でありますように、と書くだろう。


今日の仕事は、これで終わりだ。


私は、少し街を見て回る事にした。


どこもカップルで一杯だな。


【橋の上】


「コリアンダー。1人か」


「男友達なんて、アッサムぐらいしか居ないもの、貴方が仕事なんだから1人よ」


「それは、悪かったな」


「悪いと思うなら、少しぐらい付き合いなさいよね」


「酔ってるな。送って行こう」



【コリアンダーのサロン】


「こんな夜に、女性が1人で酔っ払っていては危ないではないか」


「大丈夫よ。私にはナイトが居るから」


「わかったわかった…今日はもう休め。明日からまた忙しくなるぞ」


「何よ。コラ、ナイト・アッサム。騎士道はどうしたのよ?レディには優しくしなきゃでしょ?」


「酒癖悪いぞ。まあ、明日は覚えていないだろうが」


誰がレディなんだか…


【城下町】


翌日、街の人達は後片付けに追われていた。


「あーあ、大量のゴミだ」


「でも、楽しかったな」


「後片付けは大変だけど、それでもカーニバルは楽しいよ」


【ギルド・レ・シルフィード】


カーニバルが終われば、またいつもの日常が戻ってくる。


「ミント。今日の依頼は?」


「漁師さんからです。海に魔物が出るので、漁について行ってほしいって」


「了解」


「行ってらっしゃいマスター」


「マスターはよせ、って言ったろ」


「気をつけて、アッサムさん」


今日は海に出るのか…


ミューズは連れて行けないな。


港に預けて行くしかない。


私は、新しいランスを手にギルドを出た。


【アルマンド南門】


「通してくれ」


「ナイト・アッサム。どうぞお通り下さい」


「開門!」


「お気をつけて」


【港町ロンド】


この町は、いつも賑わっているな。


漁師達が取れ立ての魚を売っていたり、出店が有ったり、人々の情報交換の場にもなっている。


桟橋に何艘かの船が停泊している。


あれか。



「アッサムさん、こっちこっち!」


「待たせたな」


「どうぞ乗って下さい」


【船の上】


船の上からアルマンドを眺めるのも良いものだな。


遠くに城が見える。


こちらの丘には、修道院だ。


「出港!」


〈舟は漁場へ向かう。丘の上の修道院では、1人の修道女が海を見ていた〉


【船の上】


途中、海の魔物達と戦いながら進んだ。


「イカの化け物が出るらしいんです」


「俺の漁師仲間が、見た、って言ってたぜ」


【ギルド・レ・シルフィード】


「漁師と一緒に海って、アッサム1人で?」


「そうですよ」


「最近クラーケンの目撃情報が有るのよ。漁師が襲われた、とも聞いてるわ」


「私も聞きました。ギルドマスターも知っているはずですけど」


「ヒーラーを連れて行かないで、この前みたいになったら、どうするのよ!」


【船の上】


漁師達が網を引き上げていると、巨大なイカの足が、甲板を叩きつけた。


「うわーっ!!」


「出たな。やはりクラーケンか」


新しいランスを試すのにちょうど良い。


私は、クラーケンの足を突いた。


何本もの足で、船ごと海に引き摺り込もうとしている。


ランスで薙ぎ払って突く。


吸盤が私の身体に、吸い付いてくる。


クラーケンは、そのまま足を海の中へ戻そうとしている。


このままでは、海の中へ引き摺り込まれてしまう。


船の上足を引きずるクラーケンの頭が見えてきた。


私は、ランスで思いっきり奴の頭を突いた。


「やったな、アッサムさん」


漁師達は、クラーケンを引き上げた。


船を覆い尽くすほどの大きさだ。


「本当に、良くこれで船が沈まなかったもんだ」


「修理は必要だけどな」


「皆んな無事か?」


「はい。無事です」


「港に戻りますよ」


私は、クラーケンから、使えそうな素材を剥ぎ取った。



【港の船着き場】


港に戻り船を降りると、コリアンダーが待っていた。


「すぐヒーリングするから」


「大丈夫だ、って」


「大丈夫じゃないでしょ。ほら、こんなにケガしてるじゃない」


「エネルギーは消耗しているが、食べれば元気になる。クラーケンは、美味しくないだろうが」


「もう、じっとしてて」


コリアンダーは、文句を言いながらも、ヒーリングをして、傷の手当てをしてくれた。


翌日私は、騎士団に顔を出した。


【騎士団】


「ナイト・アッサム。手紙が届いてますよ」


「ありがとう」


何通かの手紙の中で、手を触れただけでとても気になる物が有った。


何だ?


この感覚は…?


封を開けて読んでみた。


それは、北の国境遠征の無事を祈った手紙だった。


何故だかわからないが、この人と私は何か有るのではないか…?


直感で、そう感じた。


その時だった。


どうしたんだろう…?


身体のまわりから、何か泡のように湧き出て、全身を包まれたような感覚になった。


なんだか身体が温かく感じる。


もう一度良く手紙を読んでみた。


修道院からだ。


星のカーニバルの日、新聞で遠征を知り、心配になったらしい。


シスターローズマリー…


【コリアンダーのサロン】


コリアンダーに話すと、それは人のエネルギーではないか、と言う。


「今も感じる?」


「感じると言うより、ずっと居る」


何か、オーラを纏ったかのように、身体を包んでいる。


温かかったり、冷たかったり、ヒリヒリしたり、優しかったり…


これは、本当に人のエネルギーなのだろうか?


だとしたら、いったい何故だ?


一度も会った事の無い人だ…



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