2:白の世界
マジで! 火災!? どんな確立!? 最近消防訓練の講習を休日返上して行ってきたけども!!
「谷山さん、16階が現場です。エレベーター仕えません。消火器もって急ぎましょう」
「うわ……」
ここ地下2階だよ……
てか新卒が初期消火班って! 絶対火災想定してないでしょうおおおおお!!!
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「防火扉が作動してますね。扉が熱くないので、バックドラフトは無いと思われます。私の後に付いて来て下さい」
おぉ、なんて頼もしい! 警備さん便りになります!
「煙が凄いですね……」
「煙で火点が確認できません。これでは初期消火不可能です。防災センターに連絡しましょう」
「スプリンクラーが作動してませんね」
「制御弁は確か……」
スプリンクラーの制御弁は50m先
「あ、私が鍵を持っているので、制御弁は私が開けてきます! 確かあのあたりに排煙口のボタンもあったと思うので!」
「分かりました。私は防災センターに連絡してますね」
うおぉ、急に視界が……
鍵鍵っと、これかな?
谷山が鍵の束を弄りながら、制御弁の鍵を手間取っているうちに谷山は完全に煙に撒かれしまっていた。
「や、やばい! 先に排煙するべきだった……ボタンどこだ……」
既に視界は無く、煙で目を刺激され、まともに開くことも出来ず、息も咳き込み、上手く呼吸が出来なくなっていった。
谷山さーん 谷山さーん
かすかに聞こえる人の声を聞きながら谷山は意識を失っていった。
――目が覚めるとそこは白の世界。目に写る全てが白。
ぼーっと見渡してしばらくすると意識が回復してきた。
そういえば……っと火災現場を思い出す。結局火元は分からず、まさか煙に撒かれて軽く死んでしまうとは思いもよらなかった。
煙っておそろしぃ。
今知っても遅い話。これからどうするかってか俺は今どうなの? って感じだ。
自分が思ってた華やかな仕事ではなかったけど、仕事が決まらず実家にうだうだ寄生するのは親に申しわけなかったから、藁をも掴む思い出飛び込んだこの業界。地味だけど、資格の勉強は思ったより専門的で面白かった。
空気環境測定とか、ビル内の空気成分を測定する仕事とかも知れたし。
地味だけど、ビル法で定められてるものだから、ビルがある限りなくならない仕事だ。
ま、もはやこれまでか……
谷山がゴロンと後ろに寝転がり寝そべりかえった所に人の足、そして目線を上に伸ばすと……
「――白だ……」
「ひっっ!?」
ばしん!
音は乾いていた。