11:酪農の戦士
「さてさて、とりあえず怪我の手当てか。救護道具があったと思ったんだけど」
「こちらですね。常備薬は揃っております。外傷に即効性のあるポーションや、魔力切れの際の不快感を和らげるものなど、こちらの世界ならではのラインナップで常備しております」
「ポーション! こいつを振り掛けとけばいいのか?」
「飲ませても、傷口に振りかけても大丈夫です」
「どれどれ」
谷山の振りかけた蒼いポーションは、ゴブリンの体にある無数の怪我を治していった。
「は、はわぁわぁ」
「大丈夫? 痛くない?」
「はい、もう痛くありません。マスター」
「いや、君までマスターと呼ばなくてもいいんだよ」
「いえ、マスターはマスターですので」
「所で君はどうしてあそこで傷だらけだったの?」
「えっと、私も最初は皆と同じゴブリンだったのですが、いつも通り作業をやっているうちに、体が光初めて、この姿に。いきなり姿が変わったものだから、皆私だと思わず攻撃してきたのです」
「その作業というのは?」
「うんと、家畜の動物を止め棒で気絶させる作業です」
「マリ、進化の原因はこれか?」
「家畜を叩いて進化するまでの経験値を稼ぐとなると……現実的には厳しいですね。鑑定を行ってみましょう」
「鑑定って?」
「個体の名前や種族、ステータスやスキルを確認できます。ちなみにマスターの鑑定はマスター権限の範囲の及ぶ物に限りますが」
「なるほど。まぁ、自分の召喚したものが何なのか分からなかったら、ダンジョン作れないしな。で、どうするの?」
「目で確認して、知りたいと強く思えば浮かんでくると思います」
「よーし」
「ひっう」
ゴブリンの少女は突然睨た事に少し反応してしまうが、大人しく鑑定結果をまっていた。結果はこの通り。
種族:ハイゴブリン
名前:なし
性別:メス
管理者:谷山
LV:30
体力:250
魔力:100
筋力:280
俊敏:150
スキル一覧
一般
棒術LV3
根気LV3
剛力LV2
体術LV1
指揮LV1
レア
経験値増加LV5
称号
追われし者
「どうやら彼女だけ経験値を多く貰えたんだね」
「マスター。情報をもらいますね……これは凄い結果です。保護できて良かったです」
「やっぱレアな個体なの?」
「レアどころではありません。レアスキルを所持して召喚される事は珍しい事ではありますが、無い事はないのです。ですが、いきなりレベルが5
というのはありえません。どういう要因でスキルのレベルが上がったのかは不明ですが、とても珍しいことです」
「作業は交代でやってなかったの? 指示しなかったっけ?」
「うぅ、マスターや皆の為に頑張りたくて……」
「なんというブラック戦士。君の思いもありがたいし、素晴らしいけど、そんな事では君の体が壊れてしまうよ。会社というか、君のように優しく思いやりのある子は、このダンジョンで長く働いてもらいたいんだ」
「あ、有難うございます!」
「今は、病み上がりだしゆっくりここで休んでね」
「はいっ!」