10:防火扉の下で
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――ファンフォンファンフォンファンフォン――
『防火扉が作動しました。防火扉が作動しました。設備員は現場を確認して下さい』
マリと谷山が農業談議に花を咲かせていると、発報音と共にシステム音声が流れた。どうやら火災時に作動する防火扉が、何らかの影響で作動したようだった。直ぐに防災監視盤のモニターで現場箇所を確認し現場急行する。
現場は新しく増設された階層と階層を繋ぐ階段の入口にある防火扉だった。谷山は火元が無い以上、火災原因は何かを考えながらも、良くある施設の誤作動だろうなと思いながら現場に向かっていった。
「いやしかし、ダンジョンの設備でも誤作動ってあるものなの?」
「防災設備の誤作動はやはりセンサーを過敏にしておりますので、ちょっとした粉塵や、水蒸気でも反応してしまうかもしれません。センサーの感度を下げる訳には行きませんし、その度にマスターを現場に行かせることも忍びないです。早急に遊撃隊の新設を提案したいところですが……」
「そうだな。設備員俺だけじゃ災害時何も動けないしな。指揮者、誘導員、連絡、放送、救護、遊撃の最低6名欲しいね……場所が大きければ誘導も増やさないとだし。っとおや?」
そこには防火扉を背に、体育座りをし、顔を下に向けている少女のような人影があった。
「人間!? マリ、まだ外と繋いでないんでしょ?」
「マスター。これは……ゴブリンです」
「はいぃ? どう見ても人間の女の子じゃん。どうしたんだ~? ごめんな、そこ寄りかかると防火扉反応しちゃうから避けてくれないかい?」
「うっ……ズル……」
「もしかして泣いているのかい?」
近付くにつれて状況が分かってきた。服装は布を纏ったゴブリン特有の服装で、所々体に痣や切り傷がある。小刻みに震えながら座っている彼女は怯えているようにも見えた。
「ひっ……」
「マスター。どうやらこの個体だけ急激に進化し、群から追い出されたのでしょう」
「そんな……今まで一緒に仕事してきたのに」
「魔物の進化は急激に姿が変化する為、種族にもよりますが、群から出て行くのが自然です。特に彼女の場合何段階か飛ばして進化してますので、群から拒絶されたのではないでしょうか」
マリの推測を聞いた谷山は、直ぐに少女にに向き直り、優しく声を掛ける。
「大丈夫かい? 僕は君のマスターだよ」
「ます、たー? ……」
「そうだよ。一緒にいこう」
「……はい」
「流石マスター。マスター権限を使い、少女誘拐もとい保護するなんてお優しい」
「人聞きの悪い単語が聞こえたぞ」
谷山は防火扉を復旧させた後、少女の手を取り、支えながら防災センターまで戻っていった。
農業パート続いたので防災に戻りました……