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【火魔法】?なんだってー!!

グラスの修行のお話。

29階への階段で、急遽修行タイムになった。理由は、順調に進み過ぎたという、なんとも言い難いものだった。


そして、この修行のメインはグラスだ。グラス本人の希望だと、【光魔法】を覚えたいらしいのだが、それには【水魔法2】と【空間把握2】という、一般人でもなかなか習得できる人がいない物を覚えて、初めて習得できるのだ。昨日今日出来るわけではない。


「~~と言うわけなんだ。だから【光魔法】は無理なんだよ。」

「うーー。」


俺の説明を受けたグラスは、頬を膨らましながら、唸り声を上げいる。尻尾もへにゃっている。理解はできるが、悔しいようだ。


「だから、グラスに合った物を覚えようと思う。」

「私に合った??」


【光魔法】ができないのなら、グラスができる物を、スキルとして自在に使いこなせるようになればいいのだ。


「獣人族の村で、蜂が飛んできた事があっただろう?その時、グラスが巨大な翼を出した事を覚えているか?」

「えぇ。覚えてる。」

「グラスは竜人族なんだよね。固有能力の【竜力】も持ってる。」

「その通りです。」

「なら、【竜化】とかできるだろう?」

「えぇ!!【竜化】!?【竜化】っていうと100年に一人、できるかどうかって言われてます!私には、無理です。」

「あ。そんなに難しい事なんだ。うーん。でもなぁ。」


俺の無知のせいで、かなり無茶な事を言っているようだ。無知って怖い。


「でも翼は出せた。なら素質はあるはずだよ。」

「でもあれは、必死で。偶然で。」

「それを必然にするんだよ。ちょっとずつやってみよう。」

「・・・分かりました!やります!」


と言う事でなんとかグラスもやる気になったので、どうやって【竜化】するかを考える。


「とりあえず、何がしたい?翼を巨大化する?火とか吹く?」

「そうですねぇ。私は火を吹きたいです!翼を出すのは経験済みですから、覚えやすいかもしれないですけど。」

「あ。火を吹けるんだね。」


ちょっと冗談で火を吹くとか言ってみたのに、本当に出来るようだ。やっぱり無知って怖い。


「まずは、火かぁ。【火魔法】を覚えるべきなのか?」

「魔法!!やります!」

「って言われても、俺も覚えていないしなぁ。」


俺は久しぶりに“魔法の袋”から、“ライゼの成り上がり”のメモを取り出した。そこに書かれている【火魔法】の欄を読んでみる。


■火魔法。攻撃系魔法の威力が、他の基本魔法の中で断トツである。その本質は不明だが、火を出すのはその一端でしかないと考える。覚えるためには、家程の巨大な火の柱を前にして、魔力を流し、炎が自分から出している事を意識する事がコツである。たき火程度だと、火の恩恵が少ないようだ。


ユキが教えてくれたのだが、火魔法の本質は、発熱と吸熱にあるらしい。なので、“ライゼ”が考えているように、火を出すのは力の一端なのだ。さすがライゼである。


「家サイズの巨大な炎かぁ。無理だな。」


俺は即答で、この案を却下した。なぜならここはダンジョンなのだ。しかも深い深い地面の底に居る。巨大な火なんか出したら、俺達は一瞬で酸欠で死んでしまうのだ。


「テルさーん。」


それでもグラスは諦められないようで、瞳をウルウルさせながら、こちらを一身に見てきた。まるで子犬だ。


「はぁ。食事で作るくらいの火なら、いつも使ってるから大丈夫かなぁ。」

「(パァァ!!)」


日頃、ダンジョンで食事を作る時にも、火の魔法結晶で火を出している。おそらくだが、どこかから風が流れているのだろう。ダンジョンの安心設計に、組み込まれているのかもしれない。俺からのGOサインを聞いて、グラスの顔は弾けんばかりの笑顔になった。


「ついでに料理するからね。酸素は貴重なんだから。」

「?。はーい。」


一瞬?マークを浮かべたようだ。たぶん酸素という言葉の意味は分かっていないだろう。だが修行できるなら、そんな些細な事はどうでも良いようだ。


それから1時間近くかけて、グラスは火に向かって魔力を流し続けた。ちなみに、料理で使う火は火の魔法結晶では無く、それを着火マン代わりにして、まきで維持している。


「だはぁ。無理です。」

「ちゃんと考えてやってるのか?【竜力】の固有能力を意識するんだぞ!」

「分かってますよぉ。でもわかんないですー。」


グラスの集中力は完全に消えたようで、床に直に座って休憩している。


「まぁ無理もないか。【竜力】自体、謎だもんなぁ。」


俺の【オール・フォー・ソード】やウラガの【ハイガード】の様に、用途がはっきりと分からないから、固有能力を使おうにも使えていないのだ。


「あ。火が消えちゃいました。」


毎回料理ををしているので、ギリギリの薪の量しか使っていなかったのだ。燃える物が無くなって、火が消えてしまったようだ。


「ウラガ!火の魔法結晶と、薪を投げてくれ!」

「ほーい。」


料理の邪魔になるので、ウラガに預けていた“魔法の袋”から、火の魔法結晶と薪を投げて貰う。


「グラス。もう1時間だけだぞ。」

「やったー!」

「あ。ヤベ。」


グラスに修行続行を伝えている最中に、ウラガの方から不穏な声が聞こえてきた。ウラガの放った魔法結晶が突然、空中で不思議な軌道をとり、喜んでいるグラスの口の中へと入ってしまったのだ。


「!!(ごっくん)」


一番驚いたのは、グラスであろう。突然口の中に、小石サイズの物が入って来たのだから。そしてそれが、ウラガの放った火の魔法結晶だと分かっているのだから。


「わーー!!飲んじゃいました!飲んじゃいましよ!!!」

「落ちつけ!とりあえず落ちつけ!!」


俺もグラスも完全にパニックになっていた。放った本人のウラガも血相を変えて、駆け寄ってきた。そして、ウラガの背中をバンバン叩いて、吐き出させようとする。


だが、グラスのパニックは最高潮に達しているのか、なんとかして胃から出そうと、身体に力を入れてしまった。その拍子に魔力も高まってしまう。


「ゴハァ。ボオオオ!」


胃の中の火の魔法結晶が、グラスの魔力を感知したようで、グラスの口からは、大量の炎が吐き出された。


「水!ユキ!頼む!」


咄嗟にユキに頼んで、グラスの真上から全身を濡らす程の水を浴びせた。もちろんグラスの口の中にも、しっかりと水が入ったのを確認する。


「グラス!大丈夫か!声は出さなくていい!首を動かして答えろ。」

「ケホ。大丈夫ですよ。喉も口の中も火傷してませんから。」

「「え??」」


普通、あれほどの炎を吐いたのなら、胃や喉。食道や口の中は火傷でただれてもおかしくない。なのに、グラスはへっちゃらなのだそうだ。


俺達が呆気にとられていると、グラスは何かを確認するように、虚空に視線を移している。おそらくステータスを確認しているのだろう。そしてグラスの口から、あり得ない言葉が出てきた。


「【火魔法】覚えちゃいましたw」

「「【火魔法】?なんだってー!!」」


あり得ない事が続いたが、グラスの言葉は衝撃的なものだった。俺とウラガは、信じられないものを見るかのように、その後グラスを問い詰めていくのであった。


ご都合主義的な感じのお話でした。おそらく彼女の仕業だと考えられます。最近出てこなかったのに。苦笑しながら読んで頂けたのなら、幸いです。(幸いか?)

テル君は、テンパってるのか冷静なんだか、分からないですね。

次回は、修行の続きと29階以降の話の予定。


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