道が、止まらない?
魔法と地下27階のお話。
ちょっと短いです。ごめんなさい。
巨大蝙蝠から出てきたのは、中サイズで良品質の魔法結晶だった。それが大量に得られたのだ。金に換えたら幾らになるのか。へへへ。
「よし。回収したらとっとと進むぞ!」
と言っても、次の区画に進むにはまだまだ時間がかかりそうだ。俺達は、念のために装備の補給と、水分をとっておく。
「それにしても、なんで中サイズなんだろうな?」
「「??なんで??」」
俺の何気ない一言に対して、ウラガとグラスは首をかしげていた。そんなに変な事を言っただろうか?
「考えても見ろよ。どうやって魔獣は産まれるんだ?そもそも何で魔法結晶ができるんだ?なんでサイズが大きいやつは、大概深い階層に行かなきゃ出ないんだ?」
Web小説喉では、階層が深くなるにつれて、自然とこういった類の物のランクは上がる。だがそれに対して、深い疑問を感じていたのだ。
そもそも、このダンジョンは出来たてだ。なら階層の違いによる、ダンジョンが出来てからの時間はそれほど変わらない。つまり時間は無関係。
じゃあ濃度なのだろうか?魔法結晶はその名の通り、魔力が満ちた結晶だ。空気中や地面を流れる魔力が多いと、より大きな魔法結晶に育つのだろうか?
さらに魔法結晶は、その中身の魔力を使いきると、タダの石になる。完全に魔力が消える前なら魔力の補充ができる。と、ウラガが教えてくれるが、ならなぜダンジョンでは、魔法結晶が生まれるのか?
「分からない事ばかりだ。」
「本当にテルは考え過ぎだって。そんなもんだと考えた方が、楽だろう?」
「そうですよ。そんなのは、学者にでも任せればいいのです。私たちは冒険者なのですよ。」
ウラガやグラスにとっては、それが普通の事なので違和感すら覚えないようだ。俺は呆れられた顔を二人に向けらてしまった。だって俺の世界には無かったものなのだ。そりゃ気になるだろう。
「うーーん。でもなぁ。あ!次の道が来たら移るぞ!」
俺は全然納得できていないが、ダンジョンの真っただ中で考える事でもない。それに、次の区画へ移るための、道のブロックと接触するのを【地形把握】で感じ取ったので、この思考は一時保留とする事にした。
それから、俺達は【地形把握】をフル利用して、最短コースで道を選んでいく。自分のいる道自体が動くので、タイミングさえ逃さなければ、安全に移動できるので、かなり便利だった。そして俺達は既に、27階の中央付近へとやってきていた。
「暗いな。」
「あぁ。完全に暗い。」
「え?私はまだまだ見えますよ。」
時間的にはまだ昼の12時にもなっていないのに、あたりはもう夕方の様に暗くなっていた。人である俺とウラガにとっては、十分に暗さを感じているのだが、竜人族のグラスにとってはまだまだ昼間の様に見えているらしい。羨ましいぞ。獣人族。
「このままいくと、モノリスも蝙蝠も見えなくなるな。」
「じゃぁ、あれ使っちゃうか!」
「使っちゃおう!今のうちから訓練しないとなw」
「??」
俺達がそう言いあいながら頷くと、ウラガの手のひらから、真っ白な光の球が現れた。【光魔法】で作った魔法のライトだ。
「お。初めて作ったけど、なかなか上手くいったな。」
ウラガの光球は、ユキのようにフヨフヨと、ウラガの周りを漂っている。一つが完成したウラガはさらにもう一つ、光球を出現させると、さらに周りは明るくなった。そして3つ目を出そうとるが、光がなかなか形にならず、徐々に大きく球体をなしていく。しかし、最初に出した光球がバリン!と音を上げると、空気へ溶けるように消えていった。
やはり魔法のスキルレベル1では、同時に展開する数は2つが限界の様だ。ウラガは、大量の汗をかきながらも、とても悔しそうな表情を浮かべている。3つ目をどうしても出したかったのだろう。
「今度は俺の番だな。」
俺はそう言って【光魔法】で、光のナイフを作り出した。イメージは、剣の形をしたランプだ。光量は魔力で増やしていけるようだった。俺の光ナイフも無事成功して、一気に周りは昼間の様相へと戻っていた。
「でも、戦闘になったら困るよなぁ。」
「だよなぁ。」
レベルが40を超えている俺達は、最大でスキルを3つ同時に使用しても、なんら負担なく使用できる。だが、俺は【土魔法】と【遠隔操作】で砂ナイフを。ウラガは【土魔法】と【大盾】を使う事が多いので、それに【光魔法】をプラスすると、スキルを3つ使う事になる。そうなれば、咄嗟の時に、効果的に他のスキルを使えないのだ。
「まぁどっちかが使えれば良いから、それぞれフォローし合おう。」
「だな。」
考えても埒が明かないので、とりあえず魔力量の多い俺が、光ナイフを使って、道全体を明るくしている。
それから再び道を進んでいくが、ライトの存在はかなり有り難かった。進む度に暗くなるので、もう辺りは真っ暗だ。そんな中で、黒やこげ茶色のモノリスや蝙蝠は、見つけるのが非常に困難だ。さらに魔獣だけでなく、複数枚の岩のギロチンや、転がる巨大岩。砂嵐に、徐々に狭まる道等、より対応が面倒になってきた罠まで、暗がりの中で対処しなければならないのだ。面倒この上ない。
もし【光魔法】が無くて、ろうそく等で明かりをとっている冒険者なら、確実に死んでいただろう。そう思わせる機会が多々あるのだ。
「スキル様々だな。」
本当にスキルの効果は偉大だと感じる瞬間だった。何気なくとってきたスキル達だが、確実にダンジョンに則した物になっている。もしかして、自称神様が仕組んだのか?と勘繰ってしまうほど、なかなか便利な物が揃っている。
そうしてスキルに感謝しながらも、俺達はどんどんと27階を進み、あっという間に28階への階段へとやって来れた。俺達は安全地帯に腰かけながら、昼食の準備をしていく。
「それにしても、楽だよなぁ。このまま楽だと良いのに。」
「だよなぁ。時には楽したいもんな」
「まったくですよ。」
いくら固有能力とレベルで底上げされた能力だとしても、まだ14歳のグラスにとっては、今までの階層は地獄だったはずだ。より高レベルの俺達でも、ヘバる時があったくらいなのだ。グラスは本当に良く、着いてこれていると思う。
そんなグラスにとって、一つ一つの道で休憩をとれるこのフロアは、本当に楽だったのだろう。このままの調子が続く事を願わずにはいられない。
俺達は、昼食にパスタとスープを平らげてから、次の28階へと脚を進めた。
「道が、止まらない?」
今までは、道と道が繋がると、数分間繋がったままだったのだが、28階からは、それが止まることなく、道が繋がり始めてから、再び切れるまで20秒ほどで完結してしまう。
そして、何より面倒なのが、蝙蝠達も道を移動して行き来している事だ。今まではそれぞれの道から出る事は無かった蝙蝠が、道を渡って違う道へとやってくるのだ。こんなに何度も道が交差する環境では、今まで通りに休憩する事は叶わないだろう。
俺達3人は、顔を見合わせて覚悟を決めたかのように頷き合い、目の前に出来た道へと脚を進めるのだった。
というわけで、光魔法のお話会になってしまいました。
魔法はもっとサラっといって、ダンジョンを書こうとも思ったのですが、なぜか魔法をガッツリ。ナゼダー。
テル君は、魔法結晶の仕組みが気になってしかたの無いようです。作者も気になります。ドウシヨー。
次回は地下28階以降の話の予定。