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これ、全部“中サイズ”で品質が“良い”じゃないか!

地下26階と27階の話です。

「もしかして、この階層って動かない方が正解か?」


26階層を進む俺達は、十字路であるブロックにやってきていた。先ほどから、数分に一度のペースで、別のブロックと接触して、道が繋がったり壁になったりを繰り返している。


階層全体が、数百を超えるブロックで分かれて、それがある程度の範囲内で、ランダムに移動しているのだ。つまり、俺達のいる十字路も、ゆっくりと移動している。


【地形把握】で広く感覚を広げると、既に最初の階段があった場所から、300mは移動している。たった2つしかブロックを移動していないし、実質歩いた距離は100mにも満たないだろう。


「なんだか楽だな。」

「そうですねー。楽ですねー」


ウラガもグラスも、自分たちのいるブロックが移動しているのをスキルを使って、認識しているようだ。


「モノリスは、近づかないと動き出さない。罠は、そもそも俺達があんまり動かないから作動もしない。こんなに楽で良いのかなぁ?」


俺達が楽だと感じるのは、スキルがあるからだ。もし【地形把握】や【周辺把握】を習得していないと、自分達がどこにいるのかも分からず、当てもなく移動しただろう。そして、大量の罠と、面倒なモノリス達の餌食になるのだ。


「あ。次に来るやつで移動するぞ。」

「「りょーかい」」


【地形把握】で次に来るであろうブロックを読んで、移動を開始する。


ずっと観察していたから分かった事だが、ブロックは150m間隔で、移動する範囲が決まっているようだ。


つまり150mの間で、色々な道が自由に動いているのだ。なので、次の区画へ移動するためには、別の区画と接するタイミングで動かないければいけない。それが次なのだ。


そうして俺達はベストな選択を繰り返して、最小限の移動だけでどんどんと26階層を進んでいく。何度か罠やモノリスに遭遇したが、今までの苦労が、嘘のようだ。だが、26階層も中盤になってきて、俺は少し違和感を感じ始めていた。


「もしかして・・・ちょっと暗くなってきた??」

「言われれば、確かに。」


今までのダンジョンは、昼と夜がはっきりと別れていたのだが、今いる場所はなんだが薄暗くなってきていたのだ。別に前が見えないとかではないのだが、もしこのまま暗くなると、非常に拙いかもしれない。俺は、嫌な予感を抱えながらも、先へと進んでいった。


相変わらず、【地形把握】の恩恵で最小限の異動で、どんどんと26階を進んだ。モノリスも、小さな四角に分裂される前に、砂ナイフを【遠隔操作】で操り、心臓を串刺しにするので、必ず一体は一瞬で倒す事ができた。だいたいが3体以上で襲ってくるので、他のモノリス達は、その間に分裂してしまうのだ。


それでもウラガの盾と、グラスの【聴覚強化】のおかげで、時間はかかっても俺達は無傷で進めた。


罠に関しても、落とし穴から、岩の砲弾。ギロチンや地震といった、今までとそれほど変わらない。そもそもグラスの【危険予知】のおかげで、自分達が踏む事はまず無い。モノリスが作動させて、俺達が巻き添えを食らうのだ。非常に面倒臭い。


そんなこんなで、たった2時間ほどで27階層の階段までやってこれた。非常に順調だ。このままだと、このステージは楽勝に感じるが、きっとそうはならないのだろう。だが、今はそれよりも気になる事がある。


「それにしても、やっぱり暗くなってるよな?」

「なってるな。」

「このままいくと、見えなくなりますね。」


俺達が階段に着いたころには、周りの明るさは夕方並になっていた。この26階層を含めたステージは、移動する道と暗闇が特徴なのだろう。人は視力に頼って生きているので、暗くなるのは、非常に厄介なのだ。しかも、モノリスは大量に分裂する。それを暗がりで倒すのは、ほぼ不可能だろう。


二人もそれが分かっているようで、少しだけ不安に思っているようだ。だが、俺達には秘策がある。どれくらい効果があるのかは不明だが、きっと役に立つだろう。


俺達は、水分補給をしたり、休憩がてら装備のチェックをするくらいで、次に27階層へとやってきた。


27階層の明るさは元に戻っていて、昼間の明るさだった。そして、先ほどと同様に、階段前の道が、数分おきに変化していっていた。


「相変わらず広いよなぁ。それに、さっきより変わる速度が速い?かも。」


ダンジョンの広さは言わずもがな。【地形把握】で感知できる5kmを超えている。そして、気になるのが、道のブロックが移動する速度が速まっている。先ほどまでは、数分間は接触していたのに、今は1分程で、移動を開始してしまう。


「確かに早いけど、その分、早く移動できるだろ。いいじゃんか。」


ウラガの前向きな発言に押されるように、俺達はとりあえずT字の道が来たので、それへと移動した。


「あ。敵がいる!気を付けろ!」


俺は完全に油断して、【周辺把握】を切っていたのだ。色々考えていたのも、悪かったのかもしれない。T字路の中央辺りに、確かに魔獣の反応があるのだ。


「わかってるよ。テル。気を抜くなよw」

「考えるのも、程々にして下さいね。」


二人はしっかりと警戒を行っていたようで、俺だけが気付けていなかったようだ。結構クルものがあるな。反省しよう。


俺が二人より一歩遅れて気付いた敵は、俺達が道に入った瞬間に飛んできていた。


蝙蝠こうもり?」


それは、こげ茶色のそこそこ大きな蝙蝠だった。身体は30cm程で、魔獣としては小さいのだが翼が大きい。片翼だけで、1mはあるだろうか。それが10羽ほどの集団で飛んできた。だが10羽もいるのに、羽音が全く聞こえない。不思議だ。


すかさずウラガが【大盾】を展開して俺達を守る体勢に入った。まずは敵の出方を見るのだ。俺は俺で、大盾の外に、ずっと保持している砂ナイフを浮かしている。砂は貴重なので、再利用しているのだ。魔力を込めて振動させない限り、維持するだけならそんなに魔力は減らないのだ。


俺達が戦闘態勢に入ったのを見て、蝙蝠は距離をとった攻撃から始めるようだ。


まずは一匹の蝙蝠が、定番の魔法で攻撃してきた。だがその威力は、今までとは比べ物にならなかった。【土魔法】で作った10cm程の三角錐型の岩を、回転を加えながら、猛スピードで撃ってきたのだ。拳銃で撃ったかのようなスピードで放たれた岩は、ウラガの【大盾】にバキ!という音と共に突き刺さっていた。


「マジかよ!ちゃんと【土魔法】で硬化してんだぞ!」


ウラガも力を抜いていた訳ではないようで、しっかりと魔力を使って、盾の強度を増していたにも関わらず、蝙蝠の攻撃が突き刺さったのだ。ウラガの驚愕した顔からも、その威力が窺える。


残りの9匹の蝙蝠も、攻撃が有効だと判断すると、各自で自分の前に三角錐の岩を形成していく。


「拙い!速攻で叩く!」


俺は砂ナイフ以外に、新たに【土魔法】で岩ナイフを3本作りだして、それを巨大蝙蝠へとぶっ放した。だが、蝙蝠達は音も無くスイっと身体を動かして、俺のナイフを避けてしまった。回避能力もかなり高いようだ。


「なめるなよ!」


俺は【遠隔操作】で蝙蝠にかわされたナイフを、再び蝙蝠達へと切りつけた。だがそれすらも蝙蝠達は避けていく。


「クソ!面倒だが、一体ずつだ!」


俺はバラバラに動かしていた砂と岩のナイフを、一体の蝙蝠へと集中させるように、四方から切りつけた。


これにはさすがの蝙蝠もなすすべが無く、ナイフが身体に触れたが、蝙蝠を切れたのは振動させた砂ナイフだけだった。圧縮していない岩ナイフは、ガキンという音と共に、蝙蝠の翼すら傷つけられずに砕け散った。


「見かけより、相当硬いみたいですね。」


そんな感想をグラスが漏らす。だが一番その硬さを実感しているのは、俺なのだ。折角作った岩ナイフが無駄になってしまったのだ。


そんな感想を抱いている間も、蝙蝠達は攻撃の手を緩める事は無かった。一匹に攻撃が集中した途端、また【土魔法】で三角錐の岩を形成し直して、俺達へと猛スピードで放ってきたのだ。


「俺も良いとこ見せなきゃな!」


そう言いながら、ウラガはさらに【受け流し】のスキルを発動させて、飛んでくる岩を、盾の表面を滑らせる様にして、受け流していく。だが9本もの岩を全て一度に受け流す事はできなかったようで、5本もの岩が新たに【大盾】に突き刺さっていた。


「拙いな。一度張り直す!」


合計6本もの岩が刺さった【大盾】は、全体にひびが入っており、今にも壊れそうになっていたのだ。ウラガが一度【大盾】を解除して、再び張り直そうとした瞬間を狙ったかのように、一匹の蝙蝠が突撃をかけてきた。


鋭い牙をのぞかせている。あれで噛まれたら痛そうだ。というか、肉を持って行かれそうだ。


「させるか!」


俺は、今の攻防の間に、新たに【土魔法】で圧縮した土ナイフを準備していた。それと、先ほどから使っている砂ナイフを、迫ってくる蝙蝠へと投げつけた。


最初の土ナイフ一本は回避されたが、残りのナイフは、深々と蝙蝠へと刺す事ができた。魔力を使って圧縮して作った土ナイフは、硬い蝙蝠でも砕ける事は無く、蝙蝠の羽を片方切断出来たし、砂ナイフは蝙蝠の身体の中央を完全に貫いていた。貫かれた蝙蝠は、地面に転げるようにして落ちて、そのまま動かなくなった。


「よし。反撃開始だ!」


俺は4本のナイフを使い、回避力の高い蝙蝠を一匹ずつ、確実に仕留めていく。その間に、何度もウラガへと岩の弾丸が発射されたが、ウラガは辛うじてこれを防いでくれた。


それから5分もしない間に、合計10匹の蝙蝠を倒す事に成功した。


「ふぅ。疲れたぁ。」

「お疲れ様です。今回の蝙蝠は、魔法結晶を砕かなくて良いみたいなので、回収してきますね。」


そう言えばそうだ。今までは攻略に必死だったり、魔法結晶と心臓が近かったりしたので、まともに回収していなかった。魔法結晶を回収しなければ、最悪赤字になってしまうし、貴重な魔法結晶を放置する事も無い。このフロアは、比較的安全を確保し安のだ。しっかりと回収しよう。


「わぁ!二人とも!見て下さい!凄いですよ!」


魔法結晶を回収に行ったグラスが、驚きの声を上げて俺達を呼んだ。その声に興味を引かれて駆け寄った俺達は、グラスが見せてきた魔法結晶を【鑑定】で見て、驚いた。


「これ、全部“中サイズ”で品質が“良い”じゃないか!」


今までの魔法結晶は、“小サイズ”だったし、品質も“普通”だ。砂漠で出会った砂トンボのユニークモンスターが、“中サイズ”を落とした以来だ。


“中サイズ”は、買い取り価格が高くなるし、品質も“良い”なので、さらに高値がつくだろう。いったい幾らになるのだろう?


俺達三人は、満面の笑みを浮かべながら、お互いの顔を見合った後、急いで残りの魔法結晶を回収するのだった。


新しい魔獣が出ましたね。そして久しぶりの魔法結晶回収。忘れていた訳ではないですよ?本当に回収する機会が無かっただけなんです。

そして、このステージの説明が伝わりましたでしょうか?もっと表現力があれば!と悔みながら書きました。

テル君達は、すでのトレーネ湖で大金持ちのはずなのですが、お金はまだ欲しい様ですね。まぁ、貰えるものは貰いましょう。

次回は、27階以降の話の予定。

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