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この先に階段がある。とりあえずそこまで移動するぞ。

移動回です。

どうぞ。

「ふう。とりあえず皆大丈夫っぽいな。」


ちょっとハラハラする場面もあったが、俺達は被害も無く、時間もかからずゴーレムを倒す事ができた。俺達も確実に強くなっているのを実感できた。


「さすがにゴーレムが、自分の足をもぎ取った時は驚いたけどなw」

「私は一番最初のタックルが怖かったですよ。【危険予知】で、もの凄い不安感と警鐘が頭の中で鳴ったんですからw」


もうゴーレムの話は、笑い話になっていた。戦闘中は死に物狂いの必死な顔をしていたのに、戦闘が終わったらもう笑顔なのだ。俺もなんだか可笑しくなって、笑いだしてしまった。


「ところで、ボスってこのまま部屋に居たら復活するのか?」

「いや。昔、そう思って試した人がいるらしいけど、何時間いても復活はしなかったらしいっていう、ダンジョンでは有名な話があるぞ。」

「私はボスの復活は知りません。けど、世界中で一緒なんじゃないですかね。」

「そっか。ならちゃんと夕食をとって、ここで一晩を過ごそう。一応罠を警戒して、扉附近にしようか。」


実は、ゴーレムを倒した瞬間に、入口とは反対側に巨大な扉が出現していたのだが、その先が安全かは分からない。もし扉をくぐってしまって、この部屋に戻れなくなったら、夜通し見知らぬ階層を移動する事になってしまう。


さらに、元来た扉を潜って19階と20階の間の階段で避難しても、明日になったらゴーレムが復活するかもしれない。もう一度戦う程俺達の気力は持ちそうもなかった。


とういう事情もあって、俺達はゴーレムによってえぐられた壁のにほど近いところで野営の準備を始めた。ここなら罠が無いのは確認済みなのだ。


既にサンドイッチを食べた後だが、戦闘したせいで少しお腹が減っていたので、ニョッキのようにジャガイモを使ったパスタをと野菜、肉の干物を入れた簡単スープパスタを作った。そしてその後は、特にゴーレムに話を咲かせる事も無く、俺達はさっさと眠りについた。


翌日。俺達は中ボスである巨大ゴーレムがいた部屋の奥にある、巨大な扉を開ける事から始めた。巨大な扉を押すと、ギギギという音と共にゆくりと扉が開いて行く。


俺達は扉の先をゆっくりと進むが、特に魔獣も居ないし罠も無い。しばらく歩いて行くと、T字路にぶつかった。俺は【地形把握2】でそれぞれの先を確認するが、東側には何かある事だけしか分からなかった。


そして一番不自然なのが、そのT字路の左右。方角で言うと東から西にかけて、道が馬車道の様に二か所凹んだ溝が延々と続いているのだ。


「あー。絶対嫌な予感がする。」


俺の予想が当たれば、たぶん俺達はこれから大移動するんだろうなぁ。と一人だけ嫌な顔をして、とりあえず何かある東へと歩いて行った。


T字路から東へ1km行ったところには、石でできたトロッコの様な箱が置かれていた。そしてそのトロッコの下には魔法陣が怪しい光を発していた。いかにも準備満タンですと言わんばかりの光景だ。


「なんだろうな、これ。」

「荷車に似ていますけど、その下の魔法陣が気になりますね。」


二人はまだ予想が付いていないのだろう。その箱の存在に、首をかしげている。そこで俺は自分の持論を展開する事にした。


「たぶんなんだけど、ここは“神の手”のどこかの指の頂上付近だ。そして俺達はこれからこの箱に乗って、別の指へと飛ぶ事になるはずだ。」


「「??」」


二人はさらに頭に?マークを浮かべたように、二人ともが首を同じ方向に傾げて俺を見てきた。ちゃんと説明してくれという顔だ。


それから俺は、これまで辿ってきた道を考えながら今の状況を説明した。なんで途中で階段が登りになったのか。“神の指”のダンジョンなのに、なんで入口が一つなのか。それらを考えると、それぞれの指にダンジョンが広まっていると考えるのが普通だろう。そして俺達はこれから別の指へと移動するために、このトロッコに乗らなければいけない事。トロッコに乗ったら、どんな事が起きるのかを二人に説明した。


「「おお!賢い!」」


二人とも俺の予想をようやく理解したのか、俺の事を褒めてきた。イヤ。誰でも少し考えれば分かるから。


と言う事で、俺達はさっそくトロッコに乗り込んだ。俺達が乗り込んだ後、少しの間があってから、トロッコの下の魔法陣が一際大きく輝いた。そして、その光に呼応するように、西へと同様の魔法陣が無数に灯って行く。映画で見た、飛行機が飛び立つための誘導の光みたいだ。


「綺麗ー」


とグラスが感想をこぼす位には幻想な光景が広がっていた。そしてそんな光の道を進むように、トロッコがガコンという音と振動を発しながら出発した。


「二人とも、今からしっかり捕まってるんだぞ!」

「え?早くねぇ?」

「ウラガさん!早く捕まって!」


俺が二人に注意すつと、グラスも【危険感知】で何か感じたようで、直ぐにトロッコに張り付くように身を寄せた。俺とグラスの二人から警告されたウラガが、しぶしぶといった感じでトロッコの壁に身を寄せて、踏ん張る体勢をとった。


程なくして、トロッコは急に速度を上げた。最初のトロトロした感じはすぐに終わり、今では飛行機も顔負けの速度を出している。トロッコから顔を出すと、風圧だけで首が折れてしまうだろう。それほどの風を切る轟音を立てながらトロッコは走って行く。


ちなみにユキとシズクはそれぞれが、身体の中に避難していた。飛んでいるユキなんて、もろに吹き飛ばされるからね。


トロッコの中に避難しているので、外の光景は見えないが、そろそろ壁に着くんじゃないかと思った瞬間に、トロッコが急上昇していく。まるでジェットコースターが最初の坂を登るように、斜め上へと上がって行くのだ。そして超高速のまま、俺達は宙に放り出されたのだった。


俺は天井を見ていたが、それは突然やってきたのだ。見上げていた土の天井は、一瞬で空へと変わってしまったのだ。真っ青な空と白い雲。冬特有の凛とした空気が、いままで狭いダンジョンにいた俺達にとっては、とても清々しいものに感じた。


ウラガが耐えかねてトロッコから顔を出そうとするが、俺はウラガの頭を押さえてそれを全力で阻止した。


「まだダメだ。あの速度で放り出されたんだ。まだかなりの速度が出てる。首が持ってかれるぞ。」

「うーー。」


ウラガは不満な声を出すが、一応納得してそのままトロッコに隠れるように、頭を引っ込めた。


それから数分して、やっと速度が落ちたところで安全だと判断して、俺達はこっそりと外を見てみた。


眼下には獣人国の森や川、遠くにだが集落などが発見できた。俺達が放り出された“神の手”のどこかの指は、遥か後方になっていた。


だが、目的地であるはずの次の指までは、まだかなりの距離がある。おそらく後数秒もすれば自由落下で落ちるだけなので、到底辿りつけるはずもない。そんな事を考えているうちに、トロッコは落ち始めた。


「おいテル!もしかして落ちてないか!?ってかこの高さから落ちたら確実に死ぬぞ!」

「やっぱり落ちてますよね!次の指まではまだまだ距離があるじゃない!どうすんのよ!」


ウラガもグラスも少しパニックを起こしかけている。グラスに至っては、最近では滅多に出なくなった年相応(14歳)の口調に戻っていた。


「きっと大丈夫だよ。あれ以外にダンジョンの仕掛けは無かったんだし、なんとかなるよ。それより、また頭を引っ込めて、しがみついた方がいいと思うよ?」


完全に自由落下へと移行したトロッコは、その速度をどんどん上げながら地面へと急降下していった。そしてあっという間に俺達は地面へと近づいて行く。すると、トロッコ全体が魔法で淡く光り出した。なにか来る!と重た瞬間に、トロッコはまたレールの上へと不時着したようだった。ガタゴトとそのままレールを進む。速度を失ったトロッコから俺達は首だけを出して、周りを観察した。


「本当にどうにかなったな。さすがダンジョン。」

「でもこれで終わるはず無いだろ?」

「へ??」


グラスがそんな変な声を上げた瞬間に、またレールの上に魔法陣が無数に並んで浮かび上がった。そしてレールの先には、ジェットコースターでよく見る大車輪と言われる、グルッと回る構造になったものが、20以上連続で横に連なっていた。その全てのレール上が光っている。


「ヤバイな。」


俺がそう言うと、ウラガもグラスも直ぐにトロッコに隠れた。俺は【鷹の目】を使って、空から自分達を見下ろしている。別に今まで忘れていた訳じゃないよ?自分の目で見たかったんだい!


俺達が隠れて数秒後、またトロッコは速度をどんどん上げていき、また超ハイスピードへと達した。その間俺達は高速で回転する羽目になり、もう上も下もわからない状態になっていた。


そして案の定、大車輪の途中から、超ハイスピードでもって放り出されるのだった。それをその後2回程繰り返して、最後の自由落下になった。すでにヘロヘロになった俺達は、なんとか顔を出した。


その眼下には“神の手”指が見えていた。そして遠くに視線を向けると、そこには王城が見えた。俺達は、“神の手”の西の端にある指へとやってきたようだ。


「あー。このまま帰りたい。」


グラスがそんな事を言うが、途中下車できるはずもない。悲しいかな俺達はそのまま、“神の手”の指へと落ちていくのだった。


【鷹の目】で視線だけは空へと飛ばしていた俺が目撃したのは、不思議な光景だった。俺達のトロッコが“神の手”の指である巨大な岩山へと激突する瞬間に、岩山の一部に穴があいて、その先にレールが現れたのだ。


これまで通り、トロッコの魔法で着陸の衝撃を緩和して、スルリとダンジョンの中へと入る姿は、巨大な芋虫に吸われているかのようだった。気持ち悪い。


そしてそのままトロッコはスピードを落として、ガタゴトとしばらく移動した後、ガタン!という音と共にやっとトロッコは停止した。


時間にして1時間くらいだっただろうか?飛行機並の速度を一時的にだが出していたので、あっという間に指の間を移動できた。


俺達は、トロッコから転げ落ちるようにして地面へと這い出した。


「もう俺、トロッコには乗らない。まだ身体がグルグルしてる。」

「私もー。何もしていないのに、めちゃくちゃ疲れたわ。」


二人ともがこの苛烈な移動方法に満身創痍といった感じで、地面に倒れこんでいた。かくいう俺も、身体がまだフワフワして、思うように身体を動かせなかった。


とりあえず、【地形把握】や【周辺把握】で周りを確認するが、敵はいないようだった。かわりに、ちょっと歩いたところに、地下へと続く階段を発見した。


「この先に階段がある。とりあえずそこまで移動するぞ。」


もう返事する気力も無いのか、二人はのろのろと、壁に手をついて重い身体を懸命に動かして、歩きだした。200m程行った先にある階段に行くだけでも、かなり辛そうだ。そして時間はかかったが、なんとか階段まで到達できた。


これで安全は確保できたので、俺達は本格的に休憩をとる事にした。


なんで移動だけでこんなに!話が進まないじゃないか!

と、本気でなんでこんなに長くなったのか、作者敵にも不思議です。

テル君は、意外とジェットコースターに慣れてますね。前世の影響でしょうか?

次回は、地下21階以降の話の予定。

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