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これで、俺達の勝ちだ!

地下20階。中ボス階です。

「ボス部屋っぽいな?」

「確かにそんな雰囲気ですよね?」

「いや、ちょっと違くね?」


そうなのだ。トレーネ湖の最深部にあった扉には、8花の花弁で一輪の花を形作っていたのに対して、この巨大な扉には、それが無い。タダの巨大な無地の扉だ。


「じゃぁ、中ボスってこと?他のダンジョンにもあるのかな?」

「あるぞ。それぞれのダンジョンで違うけど、20階、30階、って感じで切りの良い数字で出てくるって聞いた事がある。」

「私もそう聞いた事がありますね。ボスは、それまでの階に出てきた魔獣が強くなったのが多いそうですけど、特別な魔獣が出る事もあるそうです。」


と色々話したが、俺達はとりあえず休憩するために階段へと戻るのだった。20階は偵察のつもりだったので、まだ十分に回復していないのだ。


「どうする?夜にはもう少し時間があるけど?」

「俺は休憩してから中ボスに挑んでも良いと思うぞ。今日は調子が良いしな。」

「そうですね。私も少し休めれば、十分に動けますから、行っても良いと思います。」

「俺も同意見だな。さすがに魔力を回復したいから、軽めの食事をとってからボスに行こうか。」


と言う事で、俺は少し早いが食事の準備をした。この後で戦闘が控えているので、そんなに量は食べれないが、体力を回復させるには何か食べたほうが良い。


と言う事で、焼き鳥サンドにした。高タンパクな鳥で回復を図りつつ、腹も膨れるはずだ。味は、これまたダンジョンに来る前に作っておいたソース味だ。冬を迎える獣人の国では、冬用の果物も栽培されていたので、野菜と一緒に煮込んで作っておいたのだ。


そして十分に休息をとった俺達は、ダンジョン20階にある巨大な扉の前にやってきた。俺は、ウラガとグラスに視線を向けると、二人ともが力強く頷いた。準備万端の様だ。俺も“水の一振り”を手に持ちながら、扉へと手をかけた。


「行くぞ!」


そう掛け声をかけてから俺は扉を押しあけた。ゆっくりと開いて行く扉の先には、柱も無いただただ広い、巨大な空間が広がっていた。


およそ1km四方もありそうで、天井も軽く20mはありそうだ。そんな広い空間の真ん中に、ポツンと普通サイズのゴーレムが佇んでいた。そのゴーレムは俺達に気付いたようで、のそのそと歩いて来るのが見えた。


「なぁテル。なんか普通のゴーレムっぽいぞ?」

「そうですね。ここから見ても普通サイズですね。」

「二人とも騙されるな!こ(・)こ(・)か(・)ら(・)て(・)なんだぞ。比較対象が無いから、分からないが、かなり巨大なはずだ。」


俺が二人にそう注意してい間に、スピードを上げたゴーレムがどんどん迫ってきていた。そしてゴーレムの大きさも、どんどんと大きくなってくる。


「とりあえず移動するぞ!壁際に居たら逃げられない!」


俺は二人を引き連れて、こちらからも斜め前方へと走った。壁から距離をとりつつ、ゴーレムが軌道修正できるかを確かめたが、きっちりと俺達の方へと向きを変えて走ってくる。およそ1kmもあった距離が、あっという間に500mまで来ていた。


「ウラガ!受け止めないで、確実に流せ!!腕試しなんてするんじゃないぞ!」

「分かってるよ!今さらだけど、ゴーレムの巨大さに、そんな余裕も消し飛んだぜ。」


今まで出会ったゴーレムはせいぜいが3m程だったのだ。それでも俺達にとっては十分巨大なサイズなのだが、今回の中ボスのゴーレムは10mは優に越えていた。見上げるだけで、首が居たくなるサイズだ。


しかも、【鷹の目】で確認したが、ゴーレムを構成していのは岩だけでなく、鉄や宝石、鉱物に分類されるような物まで身体を覆っている。見た目だけでもより重く、より硬くなっているのが分かる見ためだ。


「ゴオオオォォォォォォ!!!」


そんなゴーレムが、風を切る轟音と共に雄たけびを上げながら俺達へと肉薄した。ウラガは【大盾】と【土魔法】で強化した盾を使って、さらに【受け流し】を併用してゴーレムのスライディングタックルをいなそうとした。


「ダメ!!!」


唐突にグラスがそう叫ぶ声を聞いて、俺はすぐさまウラガを抱えてその場から【ステップ3】を使って緊急避難した。ウラガもグラスの声を聞いた瞬間にスキルを止めて、俺に身体を委ねてくれた。当のグラスも【ステップ】を使って、全速力で横へと逃げだした。


俺達のギリギリ後ろを飛んで行ったゴーレムは、そのまま壁まで突撃して轟音とダンジョン全体が揺れる程の振動を発生させて止まっていた。


ゴーレムが、のそりと起き上がってこちらを振り返ったが、足元の壁は大きく凹んでおり、壁全体に粉々に亀裂が走っていた。衝撃の後を見ただけで、先ほどのタックルの重さが分かる。あのままウラガが受けていたら、受け流せずにウラガはぺしゃんこになって圧死しただろう。


「うへー。助かったぜグラス。テルもありがとうな。」

「いや。俺も受け流せると最初思ったけど、あれは無理だ。判断ミスだ。ゴメン」

「感謝も謝罪も後です!来ますよ!」


グラスの言葉を聞いて、俺達は再びゴーレムへと意識を集中させる。ゴーレムは、今度はパンチを繰り出そうと腕を上げた状態で、のっしのっしとこちらへ歩いて来ていた。距離にして100mもない。


「とりあえず、足元を荒らすぜ!」


そうウラガが言うと、地面へ手を置いて【土魔法】でゴーレムの足場に何か所も大きなくぼみを作って行く。ゴーレムは突然できた窪みに足をとられて、ふらふらと態勢を崩したが、それでも確実に俺達の方へと歩いて来ていた。


「私が意識を逸らします!テルさんは攻撃を!」


ウラガはそう言うと、スピードを活かして縦横無尽に走り回りながら、隙を見てはゴーレムへと攻撃を入れていた。ほとんどダメージを与えられなかったようだが、ゴーレムはグラスへへと標的を変えて、そちらへ意識を集中していく。


「ユキ!頼む!」


俺がそう言うと、ユキは待ってましたと言わんばかりに“水の一振り”へと駆け寄って、氷属性を付与してくれた。そしてなんだか、いつもより強く掛かっているのか刀身だけでなく、周りの空気まで霜が降り始めていた。ユキも相当やる気の様だ。


俺は付与を確認すると、“水の一振り”に魔力を大量に流して切れ味と攻撃力を上げて、ゴーレムへと【ステップ3】で駆け寄った。そして、昨日覚えた、【硬物切断】のスキルと【スラッシュ2】を併用して、ゴーレムの厚い左腕へと切りかかった。


【硬物切断】の効果か、若干の硬さを覚えるが、それでもゴーレムの腕はスパッと切れ落ちた。もちろん切れた断面は凍りついており、氷で表面も覆われていた。


ゴーレムは切られた事に驚きながらも、冷静に切れた左腕を回復させようと、地面に切断面を密着させる。だが氷が邪魔して回復できない事に気付いて、さらに驚いた表情を浮かべた後、何度も地面へと切れた腕を押しつけている。


「おぉりゃあぁぁ!!!」


俺がそんな大きなスキを見逃すはずもなく、右足、左足へと切りつけて、移動能力を奪っていった。タダのパンチだけなら、ウラガが受け流せるかもかもしれないが、最初のスピードに乗ったタックルは、もう一度させるわけにはいかないのだ。


ゴーレムはやっと回復できなことを理解したのか、その間に切られた両足へと視線を向けて怒りを露わにして、俺を睨んできた。だが切られて長さがバラバラになった足では思うように立てず、地面を這うようにして俺へと近づこうともがいていた。


「やったなテル。これで後は切りたい放題だ。」

「いや。ピンチになったら、何をするかわからない。油断するな!」


俺はそうウラガに言いながら、窮鼠猫をかむということわざを思い出していた。そんな事を頭の片隅で考えながら、ゴーレムへと最後の追い打ちをかけるために、隙を狙っていると、ゴーレムは急に動きを止めた。


「「「な!!」」」


俺達は全員が同じタイミングで、同じセルフを呟いて驚いた。なんと、ゴーレムは残った右腕だけで、自分の残った足を引き千切り、凍った部分を完全に除去したのだ。凍った部分の無くなった足は、地面に触れるやいなや、地面を吸収してどんどん足を回復させて行った。そして回復していく間に、もう片方の足も右腕で引きちぎろうとしていた。


「クソ!!ウラガ!グラス!奴に回復させるな!注意をひきつけろ!」

「「了解!」」


二人はそう言うと、ウラガは【土魔法】で作った岩の砲弾を顔に向かって放ったり、グラスはその右腕の関節に蹴りを加えて、どうにか止めさせようとしている。


だがゴーレムはそれに見向きもしないで、足を完全に引き千切っる事に成功する。そうこうしている間に、先に回復していた足は完全に元に戻ってしまっていた。


そしてゴーレムは最後は左腕だとそちらへ右腕を伸ばしている。


「クソ!させるかよ!」


もうスキだ云々を言っている場合では無くなっており、俺は【ステップ3】でゴーレムへと駆け寄った。


俺にだけ警戒していたゴーレムは、俺が動いた事を感知すると、右拳を掲げて俺へとパンチを繰り出してきた。俺は【ステップ3】で避けようとするが、なぜか俺の移動先へと拳を修正して、俺の真正面へと拳が近付いてきた。


俺はヤバいと思い、手をクロスさせて防御のし姿勢をとったが、そんな俺の前にウラガが飛び出してきた。


「こうなると思ったぜ!」


そう言いながらウラガは【土魔法】と【大盾】と【受け流し】を併用して、見事にゴーレムのパンチを逸らしてくれた。


「助かった!」


俺はウラガにそう言いながらも、【ステップ3】でゴーレムへと近寄った。俺達の横を通る腕へと駆けのぼり、その肩口からスッパリと右腕を切断した。


切り飛ばした勢いそのままに、両足へと向かった俺は、再生した足を再び切り飛ばしていた。


「ゴアアアァァァァ!!!」


痛覚の無いはずのゴーレムだが、自分の両腕両足が切り飛ばされたのが悔しいのか、悲痛そうな声を上げていた。


「これで、俺達の勝ちだ!」


俺はゴーレムにそう言い放つと、頭や首、胸から腹へと満遍なく切りきざんでいった。一際頑丈な、心臓の場所に埋もれていた魔法結晶を切り裂くと、スイッチが切れたように、もう動く事は無くなった。


俺はゴーレムが完全に死んだ事を確認すると、雄たけびを上げながら、ガッツポーズをとるのだった。


中ボスです!一瞬だけピンチがありましたが、あんまり深く書くと話が進まないので、あっさりと。

本当は、罠とか、復活したゴーレムの奥の手とか会ったのですが、ボス戦用に残そうと思います。そのかわり、ボス線は華やかにしたいと思ってます。

テル君は最後に雄たけびを上げてますが、本当は熱い子なのかもしれません。

次回は地下21階層以降の話の予定。

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