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もしかして、もうボスなのか?

地下19階と、地下20階の触りです。


順調に地下19階へとやってきた俺達。時間もまだ2時くらいなので、今日は頑張って3階目も踏破する事にした。


「はぁ。またか。」


地下19階へと上がってきたが、そこもやはり洞窟の雰囲気をした、ザ・ダンジョンだ。そして、これまた18階と同じで、北と南へと5km以上伸びていた。東西はそれぞれ3km程度だ。


「グラス。どっちが危ない?」

「今度は南ですね。」

「了解。じゃあ南に進もう。」


俺達はグラスの【危険感知】を頼って、南に進む事にした。そしてさっそくゴーレムと遭遇する。俺はユキに頼んで、“水の一振り”に氷属性を付与してもらった。


「2つ先の曲がり角から、ゴーレムが1体が来る。」

「おう!」


ウラガはそう答えると、ここから見える地面に対して、【土魔法1】を使って地面をところどころ凹ませた。ゴーレムが安易に進めないようにするためだ。


ウラガの準備ができたところで、ゴーレムが角から顔をのぞかせて、その目が俺達を捕えた。俺達はまだ距離があるからと、遠距離から攻撃しようとしたのだが、その予想は裏切られた。


「ゴオオオオオォォォォォォ!」


と雄たけびを上げながら、ゴーレムが猛スピードでこちらに駆けてきたのだ。その光景は、まるで自動車が迫ってくるかのような迫力があった。そして、俺はその光景から、俺が死んだ時の事を思い出していた。


(あぁ。この記憶久しぶりだな。子供を助けようとしたんだっけなぁ。あの子元気かな?)


「!テルさん!!」


俺がなぜか、記憶へと浸っていた瞬間にゴーレムが近付いていた。ウラガの作った凸凹の地面のおかげで、トップスピードに乗れないようだが、それでも十分早かった。そんな俺を【危険感知】で違和感として察知したグラスが、俺へと声をかけながらタックルをして俺共々脇道へと転がって行った。


「!!ゴメン!ありがとうグラス!!」

「しっかりして下さい!倒せるのはテルさんだけなんですよ!」


俺はグラスのタックルのおかげで、しっかりと現実に戻ってこられた。俺は脇道に入ったので見えなくなったゴーレムを【周辺把握3】で確認するが、ゴーレムは急には止まれずに結構な距離を走って行って、ちょうど方向転換するようだった。


「ウラガ!俺はゴーレムが通り過ぎる瞬間に、胴体を真っ二つにする。おとりと、その後を頼むぞ!」

「任せろ!!」


未だにゴーレムの怪力を防ぐ方法の無いウラガだったが、容易く俺の提案を了承してくれた。その男気に応えるように、俺は“水の一振り”に魔力を込めて、攻撃力を上げていく。明らかに強くなっているゴーレムをも、一刀両断にするためだ。万が一、ウラガへと攻撃させる訳にはいかない。


ゴーレムは視界内にいるウラガを標的に定めて、アメフトのタックルをするような姿勢で突進してきた。俺は脇道のギリギリに位置取って、ゴーレムが来るのを待ち構えた。


(そう言えば、これもこの世界に来た最初に似ているなぁ。たしか、イノシシと戦って、腕が折れちゃったんだよなw)


と、今度はゴーレムに集中しながら、古い記憶を呼び起こしていた。


(今度は、守る奴が居るんだ。絶対に切り飛ばしてやる。ゴーレムの岩の強度が上がってても、お構いなしで切り飛ばす。)


俺はそう決意を新たに敵から見えない位置で、剣を横に構えた。


【空間把握2】で性格にゴーレムの動きを観察しながら、ゴーレムが俺の横を通り過ぎるのを待ち構えた。


「ゴオオオォォォォ!!」


と叫びながら俺の横へと迫るゴーレムに、俺はベストなタイミングで剣を突き出した。


突然現れた俺の構える剣に対して、速度の乗った巨体が反応できるはずもなく、俺の剣へと吸い込まれるように、その胴体を切られに来た。


「うおおぉぉ!!」


魔力を加えて剣の切れ味を上げているとしても、やはりその質量は巨大であり、俺の腕へと衝撃が走った。そのまま一瞬の時が流れて、ゴーレムが過ぎ去った。幸い俺の腕が折れる事は無く、過ぎ去ったゴーレムへと振り返ると、上半身と下半身を、見事に切り離されたゴーレムが、崩れるようにしてウラガへと転がって行った。


その瞬間に俺は、全身をゾクリとした感触に襲われた。おそらくスキルを覚えたのだろうが、今は確認する暇が無い。俺はゴーレムのその後を、よく観察した。


だが、運が悪い事に、魔法結晶は上半身に在ったらしく、最後の悪あがきだとウラガ目掛けて、転げながらも腕を振り上げていたのだ。


「ウラガ!!逃げろ!!」

「任せろって言っただろ!」


そう言いながら、ウラガは久しぶりに盾を構えていた。【土魔法1】と【大盾1】で強化した盾を構えている。その顔は自信にあふれているようだった。


そして、ゴーレムがウラガへと拳を振り降ろそうした瞬間、ウラガの盾が拳に沿うように当てられて、そのまま拳を受け流していた。


強化した盾にさらに【受け流し】を加えた、スキル3つを合わせた技だ。こっそり練習しているのは知っていたが、実戦は初めてのはずだ。だがウラガの固有能力【ハイガード】の補正が効いているのだろう。綺麗にゴーレムの力を反らしていた。


渾身のパンチが反らされたゴーレムは、勢いはそのままに、数m転がって行った。俺はそのチャンスを逃すまいと、【ステップ3】でゴーレムへと駆け寄って細切れにすることで、魔法結晶を砕く事に成功した。


「よっしゃーーー!!」


振り返ると、ウラガがガッツポーズをしながら吠えていた。確かに3つ以上のスキルを使っての実戦は初めてだろうが、喜びすぎじゃないか?


「ありがとうなウラガ。でも、ちょっと喜びすぎじゃないか?」

「おう!スキル3つ使うのは、結構集中力がいったけど、なんとかなったな。確かにそれも嬉しいんだけどよ、【大盾】のレベルが上がったんだよ!」

「本当か!おめでとうウラガ!」

「おめでとう!ウラガさん!」


俺達の戦闘を見守っていたグラスも、ウラガへと駆け寄って祝福を述べていた。ウラガの召喚獣のスライムのシズクも、頭の上に乗ってプルプル震えながら「ピー♪」と鳴いている。


「試しに見してくれよ。」

「もちろんだ。俺もわくわくするぜ。」


そい言ってウラガが出した【大盾】は、以前のものより厚みが出て、面積も広がっていた。厚みは5cm程だったものが、10cmに。横幅は1mくらいだったものが、2mくらいになっていた。高さも天井に届く程になっている。


「おお!!明らかに性能上がってそうだな。」

「あぁ。俺もそう感じる。これでゴーレムのパンチも余裕を持って防げるぞ!」

「頼りにしてるぞ。ウラガ」

「おう!しっかり守ってやるよw」


そう言えば、俺もスキルを覚えたんだと思いだして、ステータスを確認すると、【硬物切断】というスキルを覚えていた。なぜ今まで覚えなかったのか分からない程に、ゴーレム退治に最適なスキルだろう。たぶんだが、意識した事が大きかったのかもしれない。


俺も【硬物切断】を覚えた事をウラガとグラスへつた減ると、先ほどと同じように、二人は祝福をしてくれた。やっぱり仲間が強くなるのは嬉しい事なのだ。


そして先ほどのウラガの言葉通り、ウラガはいままで通り、いやそれ以上の防御力を発揮して、ゴーレムや罠の攻撃を防いでくれた。


速度の上がったゴーレムが繰り出すパンチは、正に強力だ。物理学によると、力は速度の二乗に比例するのだ。単純に速度が2倍になればパワーは4倍になる。それでも、ウラガは【土魔法】【大盾】【受け流し】を併用して、なんなく対処してくれた。完全に盾職として復活している。


そして速度が乗るという事は、急には止まらないという事だ。ウラガによって攻撃をいなされたゴーレムは、みなバランスを崩してしまう。そこを俺が切るのだ。そして、グラスはずっと罠へと警戒していられる。


ゴーレムが移動する事で、一緒に多くの罠が発動するので、グラスの役目も非常に重要になっていた。どちら方面から罠が来るかわかるだけでも、格段に回避し易くなる。もう拳銃レベルの速度で発射される土の砲弾にも、ウラガに指示する事で、難なく防げるのだ。


ゴーレムが強くなったのと同じように、罠のレベルもさらに上がっている。地震や、天井の崩落。あり得ない量の土石流に、定番の巨大な岩の球。ギロチンも速度と枚数が増えて、さらには平面的な縦か横だった軌跡が、3次元的に変化するようになっていた。


そんな厄介な罠とゴーレムだったが、俺達は苦戦する事さえも楽しむように、どんどんと地下19階を進むのだった。そして、地下20階への階段をようやく見つけるのだ。


俺達は階段で休憩をとりながら、今後の話をする。


「意外と時間食ったよな19階。ちょっと早いけど、夕食にしないか?」

「その前に、ちょっと20階見に行こうぜ。どうせ同じ構造なんだろうけどよw」


ウラガのそんな意見を聞いて、俺達は夕食前に明日の予習も兼ねて、地下20階へと階段を上った。そして、俺達はおかしなものを発見するのだった。


「あれ??もしかして、もうボスなのか?」


そう。階段を上がった先には、以前トレーネ湖で見たような、巨大な扉が待ち構えていたのだった。



19階は、さっさと終わる予定だったのに!階層のレベルが上がるから、書かなきゃ盛り上がりに欠けちゃう。でも話が進まない。正にジレンマ。

テル君は、仲間に完全に頼る事を学びましたね。依存する事とは違って、信頼しているのでしょう。それに応えるウラガとグラス。眩しい。

次回は、地下20階のお話の予定。

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