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それじゃぁ、午前中はスキルの確認って事でいいか?

スキル獲得の話です。


グラスの修行に取り掛かろうと思ったが、やっぱりグラスの固有能力の【竜力】が、不可解すぎて、なかなかアイデアが出ない。


「とりあえず、魔力もそろそろ回復したはずだから、【土魔法】を習得しようか。」

「え。また裸になるんですか?」

「俺達はとりあえず、階段登って見えない所に行くから、準備できたら呼んでくれ。ユキを見張りに置いとくから、ユキに伝言頼んでもいいぞ?」

「うーー。分かりました。修行の為です!」


そして俺とグラスで穴を掘ってから、ウラガに声をかけて、階段を登って姿を消した。ちなみにウラガは【土魔法】を使って、色々遊んでいた。拳大の土の砲弾や、土の壁を作っていたが、いかんせん周りが砂なので、集中が切れるとすぐサラサラと崩れて行っていた。


階段に隠れて10分位してから、ユキが俺の前へとフワフワと飛んできた。


「キュー。」

「準備できたんだな。ありがとうユキ。」


俺はユキをポンポン撫でてから、階段を下りていった。そしてグラスのところまで行くと、地面から顔だけ出したグラスが待っていた。


初めて見た時は、生首でも落ちているのかと思ったし、髪も乱れていて、かなり恐怖を覚えた事は黙っておこう。


「とりあえず、魔力を流してみてくれるか?」


俺はグラスから流れる魔力を集中して観察する。土の中だが、【空間把握2】を使えば、魔力の流れも感じ取れる。もちろん、魔力だけを見ている。知ろうと思えば、グラスの色々を知れるが、今は修行に集中だ。我慢しよう。


観察してみると、グラスの全身から、淡い光がにじみ出るかのように、うっすらと広がっていた。獣人族はもともと魔力の適性が低いようで、出力的な観点から見ると、かなり低いだろう。


「とりあえず、全身から出す事には成功しているな。」

「そうですか。次は、このまま大地を感じるんですよね。」

「うん。でも感覚の鋭い獣人族だから、それを活かしてみよう。」


と言う事で、俺はグラスに目隠しをして、濡らした布で耳栓と鼻栓をした。呼吸は口でしてもらう。触覚だけをフルに活用するための処置だ。


「どうだグラス?ちょっとは、マシになったか?」

「・・・え?」

「どうだグラス?ちょっとは、マシになったか?」

「あ。はい。前より、肌に触れる大地を感じれます。」


最初の声ではあまり聞こえなかったのか、グラスの耳元で、再び大きな声でグラスに問いかけると、効果があったとの返答が返ってきた。


だが、まだ甘い気がする。何となくだが、もっと広範囲を感じ取った方がいいのではないか?俺はめんどうなので、グラスの耳栓を取り外して実験内容を伝える。


「一度魔力を切ってくれ。それで、魔力を使った時との差は感じるか?」

「うーん。魔力を使った方が、何となく砂の粒を感じる気がします。」

「やっぱりそうだよな。魔力が【空間把握】みたいに、センサー的役割を持っているんだな。」

「“せんさー”ですか?」

「より詳しく分かるみたいな意味だよ。まるで、○ンター×○ンターの“円”みたいだ。」


グラスの頭の中は、たぶん?で一杯だろう。目隠ししてるから表情はよくわかんないんだけどもね。


「じゃぁ、もう一回魔力を使って感じてみようか。ちゃんと魔力が土に変化するって念じるんだよ?」

「分かりました。」

「それと、俺の魔力を渡すから。身体から出せる範囲でめい一杯出してみて。」

「え?魔力を渡せるんですか?」

「【光魔法1】を使えば出来るみたいだ。ただ、どれくらい渡せるか分かんないけどね。」


【光魔法】は、【空間把握】と【水魔法】の複合スキルだ。治癒系の魔法が有名だが、文字通り光を使った魔法や、魔力譲渡も使えると、“ライゼの成り上がり”に記載されていた。


もう一度グラスに耳栓をしてから、グラスの頭に俺の手のひらを乗せて、【光魔法1】を使って、魔力を渡していく。


「うわー!凄いです!なんだか、身体の中に力が流れ込んできます!」


そんなグラスからの報告で、きちんと魔力が提供されているのが確認できた。だが、周りの空気へと漏れ出していて、渡せているのは50%程度だろう。効率が悪すぎる。


「うわ。なんだか気持ち悪くなってきた。吐きそう。」

「さっさと身体から出さないからだ!」

「それでは、出します!!」


グラスは過剰の魔力に酔ったようだったので、早く消費するように指示を出した。魔力を出すと宣言したグラスの身体からは、先ほどとは比べようもない程の魔力が放出された。


と言っても、体表面上だったのが、20cm程になっただけだ。それでも獣人族の出力では限界なのだろう。


俺も渡す量をどんどん増やして、グラスの魔力が切れるのを防ぐのに必死だ。渡した半分が無駄になるので、俺の魔力もどんどん無くなって行く。


「グラス!どうだ?魔力が土に変わるのを意識するんだぞ!」

「はい!先ほどよりとは、全然違います。より大地を感じられています。」


グラスが効果を実感している事を確認すると、その後また静かにして、触覚だけに集中させた。それから10分ほどたったころ、グラスが全身を振るわせるのを感じた。


「!やりました!【土魔法】覚えましたよ!やったーー!!!」

「そう・・・か。よかった・・・。」


地面に埋もれたグラスは、そのままの状態で喜びを爆発させていたが、一方の俺は、ちょうど魔力が底をついてしまい、そのまま眠る様に倒れてしまった。何度も経験した魔力不足による気絶である。


遠のく意識の中で、グラスがウラガを大声で呼んでいるのが聞こえたので、たぶん大丈夫だろうと俺はそのまま意識が途切れるのに身を任せた。


俺が目を覚ましたのは、翌朝になってからだった。ちょうど夜が明ける頃なのか、ダンジョン特有の夜の発行が収まり、ダンジョン全体が光に包まれていく。


周りにではウラガやグラスが、まだ眠っていた。俺は身体の中に、久しぶりにユキの存在を感じたので、胸を見てみると、ユキの紋章が淡く光っていた。たぶん魔力が少なくなって、俺の中に戻ったのだろう。もしかしたらユキの魔力を、俺に返そうとしてくれたのかもしれない。


「出てこいユキ!」


俺がそう言うと、胸の紋章が一際強く輝き、ポンっという音と共にユキが俺の身体から抜き出て来た。


「キューー!!キューー!!」

「そっか。心配してくれたんだな。ありがとう。もうへっちゃらだぞ。」


俺を心配して、俺の顔へとダイブしてきたユキを引き剥がしてから、なだめるようにユキを撫でていると、急にゾクリとした感覚が俺の身体を駆け巡った。


俺は急いでステータスを確認すると、【魔力回復2】と【魔力上昇2】へとレベルアップしていた。おかげで最大魔力が一気に膨れ上がっていた。


「やったぞユキ!!!レベルアップだ!!」

「キューー!!」


俺と繋がっているユキも、俺の魔力が上昇したことに気付いたようで、一緒に喜んでくれた。俺とユキが抱き合いながら喜んでいると、その騒ぎに目を覚ましたのか、ウラガとグラスが、モゾモゾと起き上がった。


「お。テルも起きたんだな。なんか良い事でもあったのか?」

「ウラガおはよう!実は【魔力回復】と【魔力上昇】がレベルアップしたんだ!」

「おお!!!そりゃ凄いな。おめでとう!!あと、おはよう!」

「えーー。テルさんばっかり、ずるいよ。不公平だー!でも、おめでとうございます。あと、おはようございます。」

「ありがとうグラス。はい。おはよう。」


グラスはそんな事を言いながらも、きちんと祝福してくれた。まだ寝起きなので、そこまでテンションの高くない二人だが、我が事の様に喜んでくれた。


「腹が減ったよな。料理するから、待っててくれ。」


俺は急いで朝食を用意した。調理しながら、俺が倒れた後の昨日の事を聞いていく。


「私はちゃんと【土魔法】を覚えられましたよ。倒れたテルさんは、ウラガさんに運んでもらいました。」

「そうだぜ。重たいテルを運んでやったんだぞw。そんで、そのあと直ぐにダンジョンが夜になっちまってな。グラスが料理を作ってくれたんだ。もちろんテルの魔法の鞄から食料を出してだぞ。」

「テルさんには敵いませんが、私も獣人族の端くれなので、一応の料理はできるんですよ。簡単なものしか無理ですが。」

「確かにテルには及ばないが、なかなかの味だったな。素朴だったけど、優しい味付けだ。」

「へぇ。今度俺にも食べさせてくれよ。どんな味か興味がある。」

「もちろんいいですよ。でもダンジョン出てからでもいいですか?故郷の料理を振る舞いたいんです。」

「グラスの故郷かぁ。そりゃ期待が膨らむな!」

「そんで、料理の後は直ぐに寝ちまったな。さすがに俺達も疲れてたみたいだ。」


そんな話をしている間に朝食の準備が終了した。今日の朝食は、数種類のキノコと肉、玉ねぎを甘辛く炒めた物をパンで挟んだ総菜パンと、干し肉とキノコと玉ねぎの残りを使ったスープだ。昨日の夕食を食い逃して腹ペコな俺は、パンを2つ用意した。


ウラガもグラスも「美味い美味い」と言って食べてくれた。やっぱり美味しい食事は、活力になるな。お腹を空かせるのは良くないって、サマーウォー○のおばあちゃんが言ってた!


「今日の予定はどうする?俺的には、スキルも獲得したから進んでも良いと思うんだけど。」

「私はちょっと待ってほしいです。まだ【土魔法】の使い方がよくわかんなくて。」

「俺も、【光魔法】の使い方がいまいち分かんないから、時間が欲しいな。」

「それじゃぁ、午前中はスキルの確認って事でいいか?午後からは、ダンジョンを進もう。」


ウラガ達もそれに賛成してくれて、俺達は自分達のスキルを確認していく。俺は【土魔法】も【光魔法】基本的には、剣に関わらないと使えないから直ぐに終わってしまった。


ちなみに昨日グラスに魔力を渡す時も、“一端グラスに渡した魔力を再度貰って水のナイフを作る”というイメージで渡したのだ。本当に面倒だった。


ウラガたグラスはまだまだ確認する事があるのか、色々試していた。時間が余った俺は、ユキと協力して土と氷。もしくは土と氷で何か出来ないかと考えを巡らしていくのだった。


グラスの固有能力はいまいち分からないですね。もうしばらくしたら、判明します。変な能力ではありませんが、お楽しみに。

テル君は、また一人だけポンポンスキル覚えましたね。主人公補正ってやつですね。

次回はスキルの話ラストと、地下11階以降の話の予定。


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