次はグラスの修行に付き合うぞ!
ダンジョンで修行中です。
俺はただ突き刺すだけではなく、【空間把握1】を使って、ウラガの色々を調べていく。筋肉とか、身長とか色々。ちょっと際どいところは、スルーしたよ。なんにも見なかった。
他にも、バッグから色々出して横に置いておき、ウラガを刺しながら修行する。
砂に埋もれたウラガに剣を刺す事、30分。正確には、胸元で構える盾だけど、はたから見ると殺人っぽい。いや。安全だよ?突然ウラガが、ビクッと身体を震わせた。
「イヨッシャー!俺も覚えたぜ。」
俺の協力もあって、ウラガの【ハイガード】の効果で、短時間で終わったようだ。
砂からウラガを引き上げて、また【土魔法】習得を喜び合った。ウラガは【生活魔法】で全身を綺麗にした後、服を着た。ついでに俺も綺麗にしてもらった。それかた氷の壁の向こうにいるグラスに向けて声をかける。
「おーいグラス。俺達、もう【土魔法】覚えたから。今から飯作るから、食える準備しとけよ。」
「チッ。はーい。」
めっちゃ舌打ちしなかった?氷の壁を越えて聞こえたよ!怖いんですけど。
それから俺とウラガで昼食の準備をした。といっても料理は俺がするので、ウラガは皿とか階段を掃くくらいだ。
「今日の昼食は、スタミナ付けるために、肉にした!これは、ハンバーグっていって、俺の故郷では皆大好きな料理だ!」
魔法の鞄は時間が経過するので、馬車に積んであった冷蔵庫に氷をたくさん入れて、冷凍庫にしておいたのだ。そこに入れてあった肉を、ひたすら刻んでミンチにした、渾身の料理だ。
ハンバーグが出来上がったタイミングを見計らったかのように、しょんぼりしたグラスが俺達の元へと歩いてきた。どうやら【土魔法】は獲得できなかったようだ。
「まぁ、元気出せよ。ハンバーグ食って、昼からは違う修行に励もうな。」
「テルさん達はずるいよ。あり得ない速さだわ。チッ。」
「ほら、いつまでもいじけてないで、さっさと食え。冷めるだろ。」
グラスの不満は尤もだろう。スキルは普通、数カ月の修練によって獲得するものなのだから。それを俺達は数時間で終わってしまった。嫉妬もするだろう。
そんな、かなりしょげていたグラスであったが、ハンバーグを口に入れた瞬間に、顔が一変した。目が大きく見開かれて、ハンバーグと俺を交互に見ている。口の中の物が無くなったのか、またハンバーグを口に運んでいく。何か喋ってくれよ。
そういえば、ウラガが静かだと思ってウラガに振りかえると、もの凄い速さで、ハンバーグを食っていた。結構大きなサイズで1人2つも焼いたのに、あと数口で終わりそうだ。
そんな二人を見ながら、俺も久しぶりにハンバーグに下鼓を打った。中から大量の肉汁が零れおちて、ソースと混ざり合い、それを添えてあるポテトや野菜で掬って食べる。
我ながら、なかなかいい出来だと感じた。今度は、和風やトマトソース。チーズを乗せるのも良いかもしれない。
そんな風に俺が思っていると、食べ終えたウラガが大声で話しかけて来た。
「めっちゃ美味え!!!!肉の味が中にギューッと詰まってるし、このソースがまた良い!食ったのに、どんどん腹が減る感じだ!!もっとないのか!?」
食ったのに腹が減るって、どんなだよ。しかもめちゃくちゃツバが飛んでくる。ホントにやめてほしい。
「悪いけど、もう作ってない。ダンジョンでは、食糧は貴重だからな。今回は、大奮発なんだぞ。でも、ダンジョンで肉が手に入ったら、また作ってやるよ。」
「本当だな!絶対作れよ!ってかダンジョン出ても、またいっぱい作ってくれ!」
「私も!!私の分も是非!!!」
グラスが、口にハンバーグを詰めた状態で、主張してきた。頬が膨れていて、ちょっとリスっぽい。マナー的には最悪だろうけど、二人とも喜んでくれたので、作りった甲斐があったな。
大満足の昼食を済ませた後、俺とウラガは【空間把握】の修行を再開した。グラスは、魔力が少なくなって来たようで、【土魔法】の習得はとりあえず止めて、体術の形のような修行に入っていた。
俺とウラガは、【空間把握1】のレベルを上げるために、ちょっと変わった修行を試していた。俺とウラガが背中合わせに座って、互いに砂に文字を書くのだ。それを【空間把握】で認識しようというのだ。
しかしこれがなかなか難しい。【空間把握1】で半径10mくらいなら、ある程度正確に感じ取れるようになっていたが、砂に書かれた文字の様に、微妙な起伏を読むには、かなりの集中力が必要だ。ちなみに、指ではなく細い棒を使ったので、より分かりにくい。
「うーー。テル、これちょっと難しいぞ。なんとなくは、直ぐに分かるんだけど、正確にとらえるのがな。」
「そうだよな。ってかウラガ。おまえ文字じゃなくて、絵を描いただろ?判断が付きにくいわ!」
ウラガが書いたのは、ネコだか犬だか、オオカミだか、最初はよくわからなかった。だが時間をかけて調べていくと、描かれているのが馬だと分かった。たぶん馬子をモデルにしたのだろう。馬子はダンジョンの外の兵隊さんが、世話をしてくれているはずである。ウラガは少し心配しているのだろう。
ウラガも、俺の書いた内容が分かったみたいだ。ちなみに、、ハンバーグで使う食材や調味料を書いておいた。ウラガの集中力を上げようという、ちょっとした気遣いだ。
「うーん。分かるようにはなったけどよ、レベルは上がらないな。やっぱり固有スキルに繋げないと、成長は遅いな。」
「そうだよな。良い方法だと思ったんだけどなぁ。」
そらから、ちょっと休憩している間に、また新しいアイデアをひねり出した。といっても、これを応用するんだけどな。思いついたら、即実験だ!
「グラス!ちょっと来てくれ。」
俺は少し離れたところで、空手の型のような動きをしていたグラスが駆け寄ってきた。
「なんでしょう?」
「ちょっと手伝ってほしいんだ。ウラガも良く聞いてくれ。」
「またなんか思いついたんだな。いいぜ。話してくれよ。」
「これから俺達は目隠しをする。目隠しが終わったら、グラスはそれぞれバラバラの場所に、1つ数字を書いて欲しいんだ。最終的に順番通りになるなら、615423とか数字の書く順番は自由にして欲しい。」
「私は数字を書くだけで良いんですね。」
「あぁ。書いたら離れてくれ。それから俺とウラガは順番に、数字を探していく。俺はここから動かずに、順番通りに氷のナイフを打ち上げる。」
「俺は、そこに先回りして、頭の上で防御すればいいんだな。」
「そうだ。でも数字を見つける時に使うのは【空間把握】だけだぞ。他を併用して使うと、気が逸れそうだからな。」
と言う事で、さっそく俺達は目隠しをして準備に入った。グラスが適当に30までの数を書いてくたのを確認した後、グラスには離れてもらった。
「ウラガ。準備はいいな。先に【空間把握】で調べてから動くんだぞ。」
「分かってるよ。でも早い者勝ちだぞ。」
ウラガの言う早い者勝ちとは、数字を発見する速さだろう。俺が狙いを定めるか、ウラガが動くだけで、次の数字の方向が分かってしまうからだ。修行の工程に差はないが、競争する程、やる気も上がるものだ。
(素早く数字を見つけて、ナイフを飛ばす!ナイフを飛ばすために、正確に周りを知る!)
俺はそう念じながら、修行に励んだ。さすがにレベルアップには時間がかかるようで、何度かグラスの数字を書き直してもらって、2時間程ナイフを投げつづけた。
すると、やっとのことで、全身をゾクリとした感覚が駆け抜けた。ステータスを確認すると、【空間把握2】へとレベルアップしていた。
そして【水魔法2】もあるので、【空間把握2】と合わせて、複合スキルである【光魔法】も覚えていた。
「ヨッシャ!!!レベルがあがった!!!!」
俺がそう言うと、ウラガもグラスも駆け寄ってきて、一緒に祝ってくれた。グラスはなんだか微妙な表情だったが。
それから俺は、【空間把握2】の調子を見ながら、ウラガの修行に付き合った。【周辺把握2】は20mまで正確に認識できて、10m以内だと、細かな事まで手に取る様に感じる事ができるようになっていた。
【周辺把握】の様に範囲は広くないが、ぼんやりではなく、はっきり分かるので、敵の弱点や、ワームの心臓の位置を調べるのには、役立つはずだ。
ウラガはと言うと、さらに2時間ほどかかって、【空間把握2】へとレベルアップした。一方のグラスはと言うと、結局スキルを覚えるには至っていなかった。
「よし。次はグラスの修行に付き合うぞ!」
俺達の修行の手伝いをしてくれたグラスに、すこしでも恩を返そうと、次はグラスのスキル獲得に協力する事にした。
ということで、スキルを覚えてレベルアップしました。
最近、新しく覚えてなかったので、なんだか新鮮ですね。
テル君は、とにかくやってみる性格なのでしょうか?実験が好きなだけかも。
次回は、グラスの修行と、地下11階を進む予定。