じゃぁ、今からウラガを刺すぞ。
スキル獲得の話です。
短いです。
砂トンボと砂蟻を一度に相手にして、俺は自分達のさらなる課題に気が付いた。今までは攻撃力を上げないと、と思っていたが、防御も足りていない。ウラガの盾に依存していて、俺もグラスも攻撃を防ぐという方法が全くなかったのだ。
「このまま進むのは、少し拙いと思うんだ。俺達、防御をウラガに頼り過ぎているし、ウラガの盾も敵に破壊されるようになった。1日か2日、ちょっとスキルアップに費やさないか?」
「確かになぁ。【大盾】が溶かされて、俺もちょっと凹んだしよぉ。」
「でも、一刻も早く進まないと、ボスも迷宮も強くなるんじゃないの?」
「ちょっとくらい大丈夫だろう。なにより、死なない事が一番大事なんだから。」
「確かにそうね。ところで、何か取りたいスキルでもあるの?」
「俺は【土魔法】を取ろうと思ってる。あと、【空間把握】を上げて、上位魔法を取りたい。」
「お!俺もそれがいい!身体を固くしたりできるんだろ?応用すれば、盾技として利用できそうだ。」
「私も【土魔法】を取ります。あと、体術でスキルを取りたいんですが・・・」
「うーん。俺もウラガも、体術スキルは無いからなぁ。“ライゼの成り上がり”でも、体術は正しいフォームを見る事がコツだって書いてあるし。」
グラスは不貞腐れながらも、なんとかして取ろうと思案しているようで、うーんうーんと唸っている。
「とりあえず、安全な階段近くまで行こう。まだ11階も序盤だから、安全に帰れるだろう。」
と言う事で、俺達は極力魔獣と会わないように、砂蟻を見つけたら大きく迂回して、一度も戦うことなく、階段まで戻ってきた。
昼にはまだまだ早い時間だったので、俺達はさっそく修行に移る事にした。
「まずは、【土魔法】だな。“ライゼの成り上がり”によると、地面に埋まって、魔力を流して、その魔力が土に変わるっていうイメージを掴むことが、習得の近道らしい。と言う事でグラスには悪いが、俺は全裸になるぞ。」
「えぇ!!なんで全裸!?」
「そりゃ、大地を感じるには素肌だろ?」
「そうですけども!そうなんですけども!!もーーーー!!!」
グラスは顔を真っ赤にして、顔を隠して座り込んでしまった。さすがに14歳には恥ずかしいようだ。
ということで、俺はユキと協力して、氷の分厚いつい立てを作り出した。やはり砂漠で、大量の水を作るのは大変だ。すでに俺の魔力は半分にまで減ってしまっている。
完全に見えない事に安心したのか、グラスも鳴きやんでくれた。
俺達はさっそく穴を掘った。周りは砂なので、簡単に掘る事ができた。そして、全裸になって、穴の中に飛び込んだ。
「水の中と違って、動けない・・・」
「そりゃそうだろう。【水魔法】を獲得した時みたいに、戦闘しながら習得は難しいなぁ。」
【水魔法】を習得したは、水の中で剣を振るったり、ウラガと戦って簡単に習得した事を思い出していた。しかし、さすがに土の中ではどうにもならない。
「そういえば、ここは安全なんだよな?」
「もちろんだ。【周辺把握】で周りを調べておいた。砂トンボは、砂漠を進まないと出てこないから、安全だよ。」
「そっか。なら魔力を垂れ流しても安全だな。」
俺達は、土の中で魔力を全身から放出して、周りの砂を感じていく。ウラガも集中しているのか、無口になっている。ちなみにグラスからは、なんの声も聞こえてこない。大丈夫なのか?
それから、30分間近く経ったが一向に覚える気配が無かった。普段、スキルを取ろうと思えば直ぐに取れる俺にとって、こんなに時間がかかるのは、イラつくことだった。俺は実は気が短いんだよ?
「ダーー!!くそ!覚えらんねぇ!」
「そんな直ぐ覚えられるかよ。もうちょっと我慢しろ。」
俺はとうとう我慢ができなくなって、大声をあげてしまった。ウラガが窘めるが、俺はどうにかならないかを考える。
やっぱり俺の固有スキルである【オール・フォー・ソード】は、剣が関わらないと全然効果が出ない。ということで、俺は砂の中から一度でて、魔法の袋からナイフを取り出して、また砂の中へと戻った。
(このナイフに、【土魔法】で属性を付ける。【土魔法】でナイフを強化したい。そして砂でも岩でも切れるようになる!)
俺はそう念じながら、魔力を垂れ流しつつ全身で砂を感じ、ナイフを小刻みに動かしていく。それを繰り返して10分ほど過ぎた時、全身をゾクリとした感覚が駆け抜けた。
俺は直ぐにステータスを確認すると、やっと【土魔法】を覚える事だできていた。
「いよっしゃーーーーーーー!!!!!!」
「うるせーー!!そして、早えーーーー!!」
俺は砂から出ると、そんな不平を言うウラガと喜びを分かち合った。ウラガも砂から出てきてくれて、俺と硬い握手を交わしたり、ハイタッチしたりして一緒に喜んでくれた。
「ほんじゃぁ、ウラガの習得の手伝いだな。砂に横に埋もれて、胸の前で盾を持っててくれ、俺がナイフで突き刺すから。」
「俺は魔力を流しながら、【土魔法】と盾に意識を集中していれば良いんだな。」
「そういうこと。」
ウラガも自分の【ハイガード】の効果を分かっているので、やるべき事がすでに分かっていた。
そういうと、ウラガは砂に横に浅く埋もれて、盾を胸の前に構えている。
「そろそろいいか?」
「ああ。ちゃんと盾も持ってる。頼むぞテル。」
「じゃぁ、今からウラガを刺すぞ。」
俺はそう言ってから、砂に埋もれているウラガの胸目掛けて、ナイフを突き立てた。
なぜか、スキル獲得をする事になりました。
書き始めたら、なぜかそんな流れに。ドウシテ、コウナッタ?
テル君は我慢ができないようです。短気は私に似たのでしょう。
次回は、スキル獲得の続きの予定
※ステータスは、土日に加筆致します。