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蜂型魔獣、数20以上。来ます!!

シズクが活躍します。

「テルー。そろそろ馬車から出てこいよ。虫が嫌なのは分かるけど、お前がいないと馬車が進めないだろ。」

「テルさーーん。虫なんて直ぐに慣れますよー。」

「嘘だぁ!慣れるまでは地獄なんだぁ!」

「はぁ。だめだなありゃ。なんとか虫だけでも俺達で対処しないと。」

「ですが、どうしましょう?私も、少しくらいなら剣に慣れてきましたけど実戦はまだ。氷の剣ではどうにもなりませんし。」


 ウラガとグラスが悩んでいると、御者台にいたウラガのスライム“シズク”が鳴いた。


「ピーピ!」

「え?シズクが武器になるって?」

「ピー!」


 シズクがそう鳴くと、突然身体をニョキニョキと伸ばして、剣へと姿を変えた。


「おお!!シズクが変形した!!かっこいい!スゲー!」

「キャー♪すごーい!スライムってこんな事出来るんですね。」

「ピーッピ!」

「え。シズクが特別だって?」

「ピーーッピッピピ。」

「俺専用で、本当は防御専門なのか。だから切るっていうより、叩き潰す感じでしか剣として使えないと。」

「ピ。」

「さらに魔力で、硬くなるのか。なるほど、なるほど。じゃあ、俺の“帯電の剣”はグラスに貸すよ。俺はシズクに手伝ってもらおう。頼むぜシズク!」


「なんか外が楽しそうだなぁ。シズク、かわいいなぁ。すごいなぁ。」

「キュー!!」

「ゴメン!もちろんユキの方が、俺にとっては大切だよ。浮気じゃないよ。」

「キューー。」


 なんとか、機嫌をなおせてもらえた。ユキは意外と嫉妬深いようだ。そんなところも、カワイイなぁ。俺はユキをなでなでする。ふわふわで冷たくて、とても気持ちいい。


「テルー。俺とグラスで虫はやるから、お前はオオカミの相手をしてくれ。」


 俺はそっと、馬車から御者台へと顔を出す。


「わるいな。ウラガ。グラス。」

「しょうがない。苦手なものは、誰にでもある。」

「そうですねー。まぁ私もこの機会に、実戦で剣の経験を積みますよ。」


 それから、馬車はガタゴトと道を進んでいく。何度かオオカミの襲来を退治した時、とうとうカナブン型の魔獣が飛んできた。ラッキーな事に、オオカミはいない。


「左前方、やや上。カナブン3」

「テルは馬車と馬子守ってくれ、あとサポートを頼む。グラス。一匹ずつ確実に行くぞ。俺が守ってやる。」

「はい!」


 まず俺が氷のナイフで敵の接近を遅らせる。そしてウラガが盾を構えて、【ステップ2】で近づき、【大盾2】と【バッシュ2】でカナブン達を弾き飛ばした。カナブンは脳震盪のうしんとうでも起こしたように、地面でピクピクしている。俺は【鷹の目2】と【周辺把握2】で警戒をしていたので、そのピクピクも見た。吐きそうだ。


「右から行きます。」

「できれば、手のカマを切り落とせ。」


 グラスはそう言って、“帯電の剣”でカナブンを切りつける。少し固そうだが、なんとかカナブンのカマを切り落とす事に成功したようだ。ウラガは、他の2匹がまだ気絶しているのを確認し、グラスに加勢した。


 シズクが剣に変形して剣で、カナブンに切りかかる。俺以上に筋力のあるウラガが全力で叩きつけたので、ベコッという音と共にカナブンは縦に真っ二つに凹んだ。


「ピー。」

「ごめん。痛かったか。もうちょっと魔力込めて硬くするから、頑張ってくれ。」


 いまいち力加減がわからないようだ。しかし他に敵がいる今は、全力を出すしかないのだ。そうこうしているうちに、他の二匹が復活して、カマを構えて襲いかかってきた。ダジャレじゃないよ。


 ウラガはまた、【大盾2】と【バッシュ2】で弾き飛ばす。そしてグラスとウラガで一匹を潰す。最後の1匹は、ウラガも力加減がわかったのか、シズクに痛い思いをさせずに済んだようだ。


馬車へと戻ってきた二人に、俺はねぎらいの言葉をかける。そしてグラスの剣に【生活魔法1】の“リフレッシュ”をかけて血糊を落としてやる。俺はまだ剣にしか魔法をかけられないのだ。それに今回は、叩き潰す方法がメインなので、血は身体にはかかっていない。


「ところで、スライムのシズクって、痛みとかあるのか?確か、スライムって打撃に強いんだろ?」

「あ!確かに!どうなんだ?シズク。」

「ピッピーッピ。」

「魔力で硬くなると、ダメージがあるらしい。普段は、モチモチの身体で、衝撃を逃がしてるんだと。」

「なるほど。だから痛がってたんだな。」


 硬くなることで、弊害もあるようだ。スライムは一般的には、打撃にも切る事にも耐性のある、非常に厄介な相手なのだ。


 グラスも苦戦しながらも、なかなか剣の姿が様になっていた。虫に対する攻撃方法が確立したので、これからの役割分担が決まった。虫がいたら、俺は馬車の護衛。虫がいなければ、俺が戦う。うん。最高だ。


 ちなみに、カナブンの討伐証明はカマだ。2本で一体という計算らしい。農作業用のカマに利用できるらしい。


 その後の旅は順調だった。オオカミもカナブンも大量に襲ってきたが、一回一回は多くても合わせて4~5匹なので、焦らなければなんてことは無い。


 途中ちょっと大きな川を渡ったりしたが、特に水中から襲われることも無かった。至って平和な船旅だ。そうして順調に旅は続いて、王都まであと10日の村までやってきた。


 ここは少し大きな村だが、不思議なことに全ての家の窓に、木で格子が組まれていた。なにか、窓から入ってくるんだろうか?


 俺達は村に入る際に、村守むらもりさんに聞いてみた。ちなみに、村守さんは、門番さんのようなもので、村を守るあらゆる仕事をしている人たちの事だ。獣人国では、村守、街守と言うのが普通らしい。


「あの。なんだか窓が厳重に守られているんですが、何か入ってくるんですか?」

「あぁ。時々、蜂の魔獣が飛んでくるんだよ。この街から南西と南東に行くと、それぞれ神の手“ラマン”の谷に行けるんだ。そこから時折、強い風が吹いて、その風に乗って蜂の魔獣がくるんだ。魔獣避けをしてても越えてくるから、念のために窓を守ってるんだよ。」

「なるほど。魔獣が流される程の、よっぽど強い風が吹くんですね。」

「もうそろそろ冬だろ?季節の変わり目に吹くから、そろそろじゃないかな。」

「あー。またフラグだぁ。」

「??まあ、出た時は俺達に任せてくれ。虫系は火が苦手だから、魔法使いがやっつけてくれる。」

「へー。初耳です。虫は火が苦手なんですか。」

「でも、夜は逆に寄ってくるから、休憩所以外で、たき火とかするなよ。」


 ジロリと俺はまたグラスを睨みつける。火が苦手なんてたぶん聞いてないぞ。グラスはまたそっぽを向いている。後できつく叱ってやろう。王都での修行で、情報の大切さは師匠達に嫌という程教えられたからな。俺も鬼になってやる。


 俺は情報の御礼と、お勧めの宿を聞いて村守さんと別れた。そして馬車を宿まで走らせる。


「グラス。後でお説教だ。覚悟しろ。」

「はい。」


 しっぽがめちゃくちゃシュンとしている。ちょっと可哀そうだが、容赦はしないぞ。ウラガもちょっと怒っているしな。


 そうして、高床式の宿へとやってきた。地下の宿もあるのだが、なんとなく、高床式の方が好きなのだ。俺達は4人部屋を貸し切って、3人で使う事にした。食事を先に済ませたが、グラスはずっと怯えている。


「さて、グラス。分かってると思うけど、お説教だ。」

「はい。知ってる事は、全部話ます。」

「それもあるけど、情報の大切さを知ってもらうね。」


 それから延々とお説教が続いた。王都の師匠達に聞いた話や、俺達が経験した事を踏まえて、いかに情報が大切か。戦いでは声を出すのはなぜかを、懇々(こんこん)と説明した。


「情報大事。声出し大事。ジョウホウ ダイジ。 コエダシ ダイジ。ジョウホウ ダイジ・・・」


 最後にはグラスも納得したのか、そんな事をずっと口ずさんでいた。若干目が逝ってしまっているが、きっと大丈夫だろう。ちなみに、ウラガは寝落ちしていた。ちょっと長かったかな?もう深夜になっている。ざっと5時間くらいだろうか?まぁ、わかってくれたのなら問題ない。


 俺はグラスに終わりを告げると、さっさと寝た。グラスはまだブツブツいってるが、布団には入っているので、そのうち寝るだろう。


 そして翌朝、村守さんが言っていた突風が村を駆け抜けた。それも、一度ではなく、時間を置いて何度も吹きすさぶ。俺は窓から【鷹の目2】で村を見渡している。そして、街から遠くにかなりの数の蜂の姿が見えた。まだ2km以上あるので、準備は間に合うだろう。そして、村守さんの場所を探すと、南側、つまり風が吹いて来る方に集まっていた。


 ちなみにこの村は、風の影響を考えてか、南側には巨大な風避けを建てて、それに沿って、綺麗に列になって並んでいる。バラバラに建てると、風の影響で家が壊れかねないのだろう。


「南約2km、蜂多数。村守に合流するか?」

「そうだな。俺達にもできる事があるはずだ。」

「蜂は、毒があります。数回刺されると、死にますので注意して下さい。」

「グラス。顔色悪いが、部屋で休んでてもいいぞ?」

「大丈夫です。蜂は早いので、私も役に立てます。」


 グラスの顔を見ると、目の下にクマができていた。きっと、反省して一晩中考えていたんだろう。ちょっと言葉使いが変だが、意識はしっかりしている。それに、速度の速いグラスは確かに役に立つだろう。きっと大丈夫だ。俺達は準備を手早く整えて、村守さんの場所へと向かった。


 村守さんたちが集まっている、風避けの壁の後に到着すると、そこには魔術師です!と言わんばかりローブ姿の猫族のおばあさんがいた。


「俺達も参加します。」

「いや。例年通りだと、多くても5~6匹だから大丈夫だ。」

「いえ。俺の【鷹の目】によると、数は20以上います。」

「「「なんだって!」」」


 俺の情報によって、周りは騒然とした。そして隊長と思しき男が、下っ端に伝令を走らせて、他の冒険者で腕の立つ者を探しに行かせていた。そうこうしている間に、蜂は接近してくる。


「前方500m。蜂型魔獣、数20以上。来ます!!」


 俺がそう言うと、目視できる草原の先から、蜂の大群が風に流されるように飛んできたのが見えた。俺も戦う覚悟を決めて、“水の一振り”を握り締めるのだった。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル35→36

体力:462→469 魔力:460→465 筋力:339→344

速度:226→231 耐性:109→111 魔耐:106→108

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟2】【水魔法2】【受け流し1】【カウンター1】【構造把握2】【はやぶさ切り1】【回転切り1】【生活魔法1】【解析1】【隠密1】【射撃2】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 人族 男 19歳 レベル34→35

体力:612→621 魔力:359→369 筋力:400→411

速度:129→132 耐性:183→188 魔耐186→191

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析2】【ステップ2】【水魔法2】【大盾2】【バッシュ2】【受け流し2】【カウンター1】【周辺把握2】【生活魔法1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【空間把握1】


■ステータス

グラス・フルール 獣人族 女 14歳 レベル14→15

体力:240→256 魔力:55→56 筋力:164→169

速度:380→391 耐性:46→48 魔耐:46→48

スキル:【竜力】【採取1】【伐採1】【周辺把握2】【地形把握2】【遠目2】【夜目2】【鷹の目2】【周辺把握1】【ステップ1】【地形把握1】



シズクちゃんすごーーい!本来は、ウラガをサポートする盾役なんですよ!

グラスも情報の大切さが分かった見たいです。これでスムーズに戦えるはず。

そして、テル君の陰湿さが垣間見えましたね。きっと大切な事は、きっちり話さないと気が済まないのでしょう。もちろん、グラスが寝不足の原因が自分なのも分かってますよ。気付かない振りをしているのです。

次回は、蜂と冬の話の予定。

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