表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/214

もう嫌だぁ!!こんな国今すぐ出ていく!

獣人の国を旅してます。

お買いものとか、新しい魔獣とかです。

「右前方オオカミ3」

「さっきと同じで、俺は防御、テルが分断!」

「私は最初のオオカミだね。」

「3匹いるから、気を抜くなよ。俺も抑えられるか判んないからな。」


 俺は前回同様、氷のナイフで前を走る1匹と後続の2匹を分断した。俺達の前方を守るウラガに飛びかかってくるが、ウラガの【大盾2】でガツンと弾かれ、よろめいた。その隙に、グラスが攻撃を開始する。


 俺はそれを確認すると、【ステップ3】で最初のオオカミを避けつつ、草むらを駆け抜けた。1頭のオオカミを“水の一振り”と【スマッシュ2】で、一撃で切り裂く。


 前回と同様の作戦で、上手くいっている。俺は、もう一匹に向かって【ステップ3】で駆け寄ろうとするが、先ほど切ったオオカミの血が草にかかって滑りやすくなっていて、俺はツルッとずっこけてしまった。


 ヤバイ!攻撃される!と思って急いで顔を上げるが、俺には攻撃せずにグラスの方へ駆けて行った。グラスは最初のオオカミに集中しているのか、後ろから迫るオオカミに気付いていない!


「グラス!ウラガ!オオカミ1匹が行った!!」


 俺が声をかけると、ウラガが即座に反応した。ウラガは全体を把握して、あらかじめ対処し易い場所に移動してたようだ。俺から逃れたオオカミの前に立ちふさがる。


「おぉぉ!!」


 という掛け声と共に、【大盾2】と【バッシュ2】でオオカミを吹き飛ばした。その間に起きあがった俺は、【ステップ3】で駆けつけて、オオカミを切り裂いた。


 それと同時くらいに、グラスもオオカミを倒せたたようだ。周囲を警戒するが、感知できる範囲には魔獣はいないようだ。一安心だ。


「グラス!ウラガ!怪我はないか!?」

「あぁ!俺は何ともない。」

「私も、怪我はありません。」

「そうか。よかった。」

「テルの方こそ大丈夫なのか?盛大に転んでたけど。」

「大丈夫だ。くじいた感じも無い。っていうか見てたんだな。」

「そりゃぁ俺は防御専門だぜ?全体を把握するのは、基本だ。」

「ウラガさん、有難うございました。私、敵に夢中になってて、テルさんが注意を叫ぶまで、気付きませんでした。」

「もうちょっと戦いに余裕が出ると、周りを見れるんだけどなぁ。やっぱり攻撃力がなぁ」


 ウラガも思っていたようだ。俺とウラガは強くなったし、天使さまや国王の装備のおかげで、攻防共に足りている。しかし、グラスはまだレベルも低い。攻撃が自分の爪なのも、攻撃力が低い原因だろう。


「いっそ、爪型の武器にするか?」

「それだと、常に爪が出てますよね?私としては、出来るだけ自分の爪が良いのですが。」

「そうは言ってもなぁ。」

「テル。“ライゼの成り上がり”のメモに何か無かったのか?」

生憎あいにく、ライゼのパーティーは全員武器を使ってたからね。“身体強化”みたいな、自分の身体を固くするのが、“土魔法”に含まれてるのは、わかったけど。」

「魔法かぁ。魔力がいるよな?」

「グラス。魔力って今どんなもん?」

「51ですね。獣人族としては、これでも高い方です。」

「なるほど。獣人族は一般的に魔力が低いんだな。」

「グラスに、今あの修行するのは、拙いよな?」

「そうだね。何日かかるかわかんないし、ちょっと魔獣も強いしね。王都に着いてからだな。」

「それまで、気が抜けないってことだな。」


 その後も、街道沿いの休憩所に着くまでに、何度もオオカミ型魔獣の襲撃を受けた。ゴブリンもいるのだが、数は圧倒的に少ない。ウラガによると、魔獣達は他の魔獣を食べるそうだ。例外的に、仲が良かったり、共生しているものは襲わないらしい。魔獣の世界も、弱肉強食なのだ。


 街道沿いの休憩所に到着すると、まず虫よけの草で完全に虫を追っ払ってから、簡単に夕食を作っる。今回は、なんちゃってハンバーグだ。原料はイノシシの肉なので、ちょっと臭い。血抜きはできているようなので、香草やソースを濃い目に使って、紛らわせた。ウラガとグラスには、大好評だった。ちょっと歯応えが無いのが悲しいと言っていたが、そういう料理だから仕方ないね。それからは、修行だ。


「グラスには、【スラッシュ】を覚えてもらう。剣のスキルだと、一般的なやつだ。」

「知ってます!人族の冒険者が使っているのを、見たことがあります。」

「そっか。ならイメージは付いてるな。【スラッシュ】は正しいフォームを繰り返すと、すぐに習得できる。爪が武器のグラスが、使えるようになるかわかんないけど、一応やってみよう。」

「俺もいいか?一つくらい剣のスキル欲しいんだ。」

「わかった。じゃぁ俺の手本をよく見ててくれ。」


 そして、その夜から【スラッシュ】の修行が始まった。俺は1日で覚えられたはずだけど、二人はなかなか難しいみたいだ。俺は二人を指導しながら、【はやぶさ切り1】の練習をする。一瞬で2度以上攻撃できるのだ。手数が必要な相手には、有効だろう。


 修行は、虫よけの葉っぱが1枚燃え尽きるまでの、2時間以内と決める。あんまり夜遅くなっても、他の旅人の迷惑だし、修行は短時間で集中的にするのが良い気がするのだ。どうにかして、【竜力】の秘密がわかれば、はかどるんだけどなぁ。


 その後、4日かかって次の街にたどり着いた。途中で雨が降ったので、草がめちゃくちゃ滑るのだ。【ステップ】は瞬発的に力を入れるので、俺は何度もこけてしまった。その都度、ウラガにサポートを頼む事になった。


 次の村の主な住人は、犬やオオカミ、馬などの走る事が得意そうな獣人達だった。まわりが草原ばかりなので、そういう種族が自然と集まったのだろう。


「俺、新しい靴が欲しいな。ウラガとグラスはどうする?」

「俺も買うよ。やっぱり、植物が多いと歩きにくい。これから、森とかに入るかもしれないしな。」

「私も買う。ちょっと今の靴が悪くなってきたの。」


 ということで、高床式のお店へとやってきた。旅に必要な雑貨を扱っている。犬のお兄さんが営んでいた。


「おう。兄ちゃん達いらっしゃい。」

「草道とかに強い靴が欲しいんです。3人分、お願いします。」

「はいよ。ここから、ここまでの靴がそうだな。」

「他の靴は、どこ用なんですか?」

「それは、砂漠とか岩場用だな。この街から南西に進むと、神の手“ラマン”の1つ目に行けるんだ。」

「王都に行くには?」

「北西だな。あと、20日くらいだ。」

「まだまだなんですね。とりあえず、靴を見せて下さい。」


 俺達は、靴を選んでいく。自分のサイズにあった靴は2、3足しかないので、色なんて気にしてられない。草用という事で、靴の裏は乾山けんざんの様に、小さなとげが生えている。本当に小さいので、地面が歩き難いとかはない。


「この3足、下さい。」

「毎度あり。ところで、お兄さん達は、冬支度してるのかい?」

「そう言えば、徐々に寒くなってきましたね。もう準備するんですか?」

「獣人族の冬は、5日位で急劇に寒くなるんだ。そろそろ準備しないと、手遅れになるぞ。」

「え!そんな急に気温が下がるんですか!教えて頂いて有難うございます。」


 俺は犬の店主に御礼を言った後、グラスをキッ!と睨む。グラスはヤバイといった顔をしながら、俺の視線から顔をそむけた。そういう大切な事は、もっと早く言ってくれ!


「このお店でも、売ってますか?」

「もちろん。でも他の旅人も買って行くから、今在庫が少ないんだ。厚手のマントくらいしか、お勧めできないね。」


 マントは、首と胸の2か所を留めるだけのシンプルな1枚布だった。これでは、手が使いづらい。買おうか迷うところだ。


「この村に、針と糸って売ってます?」

「もちろん。なんだ?お兄さんこのマントに手を加えるつもりかい?やめときな、このマント、結構硬いんだ。太い針は通るかもしれないけど、切るのはけっこう重労働だぞ?」

「針は通るんですね。なら大丈夫です。このマントを4枚と針と糸を下さい。」

「本当にいいんだね?じゃあ、全部で銀貨21枚と銅貨13枚だ。屑銅貨分は、まけといてやる。」

「有難うございます。」


 雑貨屋の後は、食料品店に行く。冬が近いので、買えるだけ買っておいた。一気に野菜の収穫量とかが、減るかもしれないからね。そして、宿へとやってきた。俺とウラガの二人部屋。グラスは他の人との相部屋だ。


 俺はさっそく、マントに手を加えていく。一応の理想は、着る毛布みたいなやつだ。手を出すための穴と、マントを1枚、腕のパーツ用に切り刻む。“水の一振り”のおかげで、難なくマントの裁断は終わったが、針通しが難関だった。めちゃくちゃ硬い。通らない事もないが、結構力が必要だった。どうやって職人さんは、ボタンを付けたんだろう?よほどの怪力か?針の方が、折れそうだ。


「テルってほんとなんでも出来るよな。裁縫なんて、男は普通覚えないぞ?」

「そうなのか?俺は家庭科の授業で習ったからな。あ。前世でな。家庭で使う技術を学ぶ授業があったんだよ。」

「ふーーん。変なの。」


 変なのか?こっちの世界の人にとっては、金を払ってまで、生活の技術を学ぶのは、不思議なのだそうだ。そんなのは、親に教えてもらえばタダなのだからという考えらしい。


 それでもなんとか、3つのマントに腕を付ける事ができた。途中でウラガが寝てしまったので寂しかったが、やり終えた後は、達成感で満たされた。俺は、集中の糸がとぎれるのと同時に、後始末もせずマントを床に放り投げて、眠るのだった。


 早朝に俺達は村を出て、北西へと馬車を走らせる。草原ばかりだったのが、ポツポツと木が生えるようになっていた。変化に富んだ国だなぁ。


 そして、また魔獣の種類が変わった。というより増えた。俺が苦手な虫系だ。カナブンの様に全身玉虫色で、全長50cmくらいある虫が飛んでくるのだ。手はカマキリの様に切れ味が良さそうだ。そして地面は、オオカミ系魔獣が襲いかかってくる。


 俺にとって虫の魔獣は、ホラーだ。めちゃくちゃ気持ち悪い。ブーーンという音と共に、数匹単位で飛んでくる。俺は最初、氷のナイフで狙撃してみたが、相手の装甲が硬いのか、ぜんぜん効いていなかった。グラスが爪でひっかくが、浅く傷が付く程度で、ダメージにならない。ということで、当然俺が接近して、カナブンを退治することになる。


 新しい靴のおかげで滑らなくなったので、遠慮なく【ステップ3】で近づいて切り捨てる。すると昆虫の血液なのか、緑色の液体が辺りに大量に飛び散った。少しだが、俺の服にも付いてしまう。そしてカナブンはカサカサと切った後も、ちょっと動いているのだ。その光景に、俺は叫んでしまう。


「もう嫌だぁ!!こんな国今すぐ出ていく!」


 といっても、敵はまだまだいるので、我慢して、さっさとカナブンを処分する。そして馬車へと猛ダッシュで帰り、ウラガに【生活魔法】の“リフレッシュ”を何度もかけてもらうのだった。マジ無理。もうヤダ。次なんて会いたくない!!


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル34→35

体力:456→462 魔力:451→460 筋力:334→339

速度:221→226 耐性:107→109 魔耐:104→106

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟2】【水魔法2】【受け流し1】【カウンター1】【構造把握2】【はやぶさ切り1】【回転切り1】【生活魔法1】【解析1】【隠密1】【射撃2】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 人族 男 19歳 レベル33→34

体力:592→612 魔力:353→359 筋力:388→400

速度:127→129 耐性:178→183 魔耐181→186

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析2】【ステップ2】【水魔法2】【大盾2】【バッシュ2】【受け流し2】【カウンター1】【周辺把握2】【生活魔法1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【空間把握1】


■ステータス

グラス・フルール 獣人族 女 14歳 レベル12→14

体力:216→240 魔力:51→55 筋力:154→164

速度:356→380 耐性:42→46 魔耐:42→46

スキル:【竜力】【採取1】【伐採1】【周辺把握2】【地形把握2】【遠目2】【夜目2】【鷹の目2】【周辺把握1】【ステップ1】【地形把握1】


体調50cmの昆虫とか、本当に無理です。作者なら泣いて逃げます。

テル君も、半分パニックになってますね。可哀そうに。

:;(∩´﹏`∩);:

次回は、旅を端折って王都に行くか、旅を描くかのどっちかの予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ