でも、グラスは攻撃力に難があるよな。
お買いものと、新魔獣、グラスの戦闘の話です。
高床式の獣人宿へとやってきました。丸太を組み合わせた、がっしりした作りになっています。俺達は宿の一番端にある扉を開けて、中に入る。正面に受付があり、壁沿いに通路があって、部屋が並んでいる。ホテルみたいな感じだ。
「宿に泊まりたいんですが。男2人と女1人。馬車が一台と馬一頭です。」
「はーい。人族さんと獣人さんですね。一緒の部屋でいいですか?ちょっと高めですが、四人部屋で貸し切りがありますよ。」
「どうする?グラスが決めていいよ。お金は少し余裕あるから、好きな方にして。」
「うーん。別々でもいいですか?やっぱりお金は節約したいので。」
「わかりました。お二人部屋と、相部屋の御利用ですね。」
「それでお願いします。」
「あ。そうそう。まずはここで、靴を脱いで下さいね。獣人さんは、足を洗って下さいね」
「靴を脱ぐのか??」
「あー。人族さんにとっては珍しい習慣ですよね。獣人は、基本素足が多いので、部屋が汚れやすいんですよ。外では靴を履く獣人もいますが、部屋では脱ぎたいのです。ですので、受付で靴や足の汚れを落として貰うのが、普及したんです。」
「なるほど!合理的ですね。」
俺達は靴箱に靴を入れて、札を貰う。札は部屋の鍵にもなっているらしい。木材の利用が盛んな獣人国では、これが普通だそうだ。技術力が結構高い。ちなみに人族の国では、ドアの内側に閂で施錠していた。俺達は通路を通って、部屋に入って行く。
「なんか、靴を脱いで部屋を歩き回るのって、不思議な感じだな。」
「俺は、慣れ親しんだ感じで、楽だな。前世では、家の中では靴を脱ぐのが普通な国だったから。」
「へー。獣人の国と習慣が似てるんだな。」
「そうだな。建物もちょっと違うけど、木造を基本にした家が基本だったし、色々似てるのかもな。」
「一度、テルの世界を見に行ってみたいな。」
「色々驚くと思うぞ?」
そうして、俺の前世の生活に花を咲かせて、宿で休憩をする。ちなみに、虫の被害は無い。宿の人によると、虫よけの煙を焚いているらしい。なにそれ。絶対買うよ!
まだ夜には時間があるので、買い出しへと向かった。まず、虫よけ用の薬草を買いに行く。お店は、地面に穴のいたモグラ系のおっちゃんが営む、生活用品店だ。
地面を四角に掘削してあり、地下1階が店舗。地下2階が住居なのだそうだ。通気用の穴が通っており、入り口の階段横に繋がっている。煙突のようだ。壁は土のままだったが、何か塗っているのか、硬く岩の様な雰囲気をもっている。しっかりした建物だ。
「あの!虫よけの薬草が欲しいんです!出来るだけ下さい!」
「兄ちゃん、めちゃくちゃ必死だなwよっぽど虫が嫌いなんだなw」
「それで、売って頂けますか?使い方も一緒にお願いします。」
「もちろん売るさ。使い方は、ただ薬草を燃やすだけでいい。丸めて筒状にして、乾燥させるんだ。それに火を付けると、だいたい一枚で2時間くらいで燃え続ける。」
「なるほど。乾燥した葉っぱは、一枚お幾らですか?」
「一枚、銅貨2枚と屑銅貨50枚だ。生だと銅貨2枚だ。乾燥させすぎると、どんどん煙が少なくなるから、旅に出るなら、生も何枚か買って行けよ。」
「分かりました!では、乾燥したものを30枚。生も30枚下さい。あと、葉っぱを焚くための、香炉も下さい。」
「一日中焚くつもりかよwまぁ、在庫はあるから売ってやる!毎度。」
「テル。あんなにいるか?結構な量だぞ。」
「いる!何があるか、わかんないじゃないか。次の村まで時間がかかったら、またユキに頑張ってもらわなきゃならないんだぞ。」
「テルが必死なのは、わかったから。もう何も言わないよ。」
「あはははwwなんか子供みたいwww」
グラスにめっちゃ笑われた。獣人は子供の頃に虫嫌いを克服するそうだ。つまり、虫嫌いな俺は、子供以下らしい。だって、苦手なものは、しょうがないじゃないか!
次は、食料を買いに行く。獣人は食に対して熱心なようで、様々な森の恵みが売られている。野菜だけでなく、肉も豊富だ。そして、砂糖が売られていた。獣人の国ちょっと貴重なので少々高めだが、一般人でも手が出せない値段ではない。1kgで銅貨10枚だ。つまり1000円程である。
「グラス、砂糖はどこで作ってるんだ?」
「砂糖は、王都周辺が有名だったかな。神の手の間にも、栽培場所があるらしいよ。」
「ふーん。大々的に栽培している感じなのか。」
「そうだね。獣人は、甘いものが好きな人が多いのかもね。」
とりあえず、肉と野菜と調味料を買いこんでいく。三人いるので、量がちょっと多いけど、なんとか持てた。それを馬車へと詰め込んだ。ついでにユキとシズクに魔力を渡す。二匹(?)は、馬車で寝泊まりするのが常なのだ。ユキは冷蔵庫に自室があるからね。
そんなこんなで、日が落ちたので、宿で夕食を取った。夕食はお肉とキノコや野菜と共に炒めた、野菜炒めだ。塩コショウや木の実を使ってあり、普通に美味しかった。獣人国の料理はレベルが高い。これからも期待できるな。
そして翌日、俺達は早朝に村を発った。グラスが言っていた通りに、村を抜けると草原だった。草原と言っても、腰位まで草が伸びている。そして、魔獣の種類も変化している。
「オオカミ系の魔獣、左前方2」
「俺は馬車を守りながら、援護する。グラス、戦闘だ。」
「わかりました!」
「俺が分断するから、一匹はグラスに任せる。前方の敵を倒せ。無理するなよ。」
「はい!」
オオカミっぽい魔獣は、草原の草をかき分けて、俺達に向かってきた。俺は【水魔法2】で作った水のナイフをユキに凍らせて貰い、二匹いるオオカミのうち、後方のオオカミに向かって打ち出した。後方のオオカミは俺の攻撃に足を止めて、俺達を警戒して止まったが、前を走っていたオオカミは気付かずに、馬子の近くに移動したウラガに向かっていく。
前方を走るオオカミは、ウラガの【大盾2】にぶつかって、ひるんだ。その隙にグラスがステップで近づいて、グラスの爪でオオカミに切りかかった。意外と大きなオオカミの横っ腹を切り裂いていく。それに驚いたオオカミがグラスに噛みつこうとするが、グラスはその前に距離をとって、オオカミの後ろに移動し、お尻に攻撃をしている。そうやって、死角を探る様に次々に攻撃を繰り出して、オオカミはだんだん出血が増えて行き、弱ったところをグラスが止めを刺した。
俺は、後方のオオカミに【ステップ3】で一瞬で近づいて、“水の一振り”で一刀両断にする。俺はグラスの戦いを見守りながら、周囲に敵がいないかを探るが、どうやら大丈夫なようだ。倒したオオカミは、全長2mほどの、黒と灰色がまだらに入った姿だった。牙と角が鋭く生えている以外は、普通のオオカミっぽい。俺は、グラスに聞いていたいて角を切り取って、保管する。
俺が一通り作業を終えた頃になって、ようやくグラスも敵を倒せたようだったので、馬車へと戻った。
「グラス。【ステップ】を使った戦闘、結構さまになってたな。怪我も無さそうだし、良くやったな。」
「ああ!初めての魔獣との戦闘で、なかなかの腕前だぞ!」
「有難うございます。お二人の協力のおかげです。」
「でも、攻撃力に難があるよな。」
そうなのだ。ヒットアンドアウェイのグラスは、攻撃力が低い。そのせいで、戦闘に時間がかかる。時間が延びると、敵が複数いる時、危険が増えるのだ。これからの課題が見つかった戦闘だ。
グラスの攻撃力を上げる為に、“ライゼの成り上がり”をメモした紙を再度読み直して、グラスが使えそうなものを探していく。新しいスキルを取ってもらって、攻撃力不足を解消する作戦で行くつもりだ。だが、スキルに悩んでいる間も、新しいオオカミの襲撃を受けるのだった。
■ステータス
テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル34
体力:456 魔力:451 筋力:334
速度:221 耐性:107 魔耐:104
召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】
神の秘宝:水の一振り
スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟2】【水魔法2】【受け流し1】【カウンター1】【構造把握2】【はやぶさ切り1】【回転切り1】【生活魔法1】【解析1】【隠密1】【射撃2】
■ステータス
ウラガーノ・インヴェルノ 人族 男 19歳 レベル33
体力:592 魔力: 353 筋力:388
速度:127 耐性:178 魔耐181
召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】
スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析2】【ステップ2】【水魔法2】【大盾2】【バッシュ2】【受け流し2】【カウンター1】【周辺把握2】【生活魔法1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【空間把握1】
■ステータス
グラス・フルール 獣人族 女 14歳 レベル12
体力:216 魔力:51 筋力:154
速度:356 耐性:42 魔耐:42
スキル:【竜力】【採取1】【伐採1】【周辺把握2】【地形把握2】【遠目2】【夜目2】【鷹の目2】【周辺把握1】【ステップ1】【地形把握1】
新しい魔獣が出てきましたね。オオカミさん。好きです。もふもふしたい。
他にも新しい魔獣を出していきますが、次回に御期待ください。
テル君は、強くなりましたね。いつまでもつ事やら。
ʅ(´・ω・`)ʃヤレヤレ
次回は、グラスの攻撃と旅のお話の予定。