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なにせ犯人は、この集団に紛れているんだから。

船のお話です。

ちょっと世間の事情と相まって、この話題は不謹慎かもしれませんね。

それでも書きました。

 船はかなり快適だ。大きいおかげで、揺れも少なくなっている。俺達は、格納庫に馬車を置いて、馬子を馬房ばぼうに連れていった。馬車は鍵をかけて置くので、安全のはずだ。馬子はちょっと窮屈そうだが、衝撃吸収用に、多めのわらが敷いてあった。


 それから俺達は、寝床になる大部屋に向かった。そこは、多くの人でごった返していた。商人の集団が話し合っていたり、冒険者同士で意見交換したり、村々の女性達は噂話に花を咲かしていた。


 すでにグループが形成されていて、俺達が輪に入る余地は無かった。それに、夜通し馬車を走らせていたから眠りたかったのだが、それも無理そうだ。俺達は船を一回りした後、馬車に戻ってきた。眠れそうな場所はやはり無かったので、馬車で寝る事にしたのだ。


 昼頃まで眠った俺は、ウラガの叫び声で目が覚めた。


「うおぉぉぉっしゃああぁぁぁ!!!!!!!」


 ウラガは、【魔法回復】と【魔力上昇】を覚えたようだ。ちょうど5日かかったな。これで楽にシズクが呼び出せるようになるはずだ。俺達はハイタッチをしたりして、喜びを分けあった。


 俺達は腹が減ってきたので、船にある食堂にやってきた。暖かい物が食べたくなったし、食料はできるだけ保存しておきたかったのだ。ちなみに、ユキとシズクには、魔力を与えている。二人とも、馬車でお留守番だ。


「俺達以外が、馬車に入ろうとしたら、容赦しなくていいからな。でも、外をうろつくぐらいなら、何もするなよ?」

「キュー♪」

「ピー♪」


 食事の内容は、魚と野菜のスープで、一人銅貨20枚だった。味はなんだか生臭いし、薄い。ウラガに至っては、「不味い」と素直に言っていた。俺のせいで、舌が肥えてきたのかもしれないね。他の乗客からは、白い目で見られてしまったよ。


 そんな視線も意に介せず、俺達は食事を最後までとった。そして船の後方デッキにやってきた。すっかり船乗り場は見えなくなっていた。川は船で2日の距離なので、めちゃくちゃ広い。そして氾濫したからか、かなり水が濁っていたので、景色はよくなかった。一面が茶色なのだ。


 それでも俺達は風に吹かれながら、トレーニングを開始した。腕立てやスクワット。剣の素振りに、【水魔法1】と【剣戟1】を組み合わせた練習だ。ウラガも似たような感じのトレーニングだ。


 俺達が汗水たらして訓練に励んでいると、船の前方が騒がしくなった。俺は【鷹の目2】で船を見渡すと、1階の前方デッキに、魔獣が飛び込んできたようだった。ピラニアとサハギンの魔獣だ。おそらくこの増水で、トレーネ湖から流れ出したのだろう。


「一階前方デッキ。ピラニア5、サハギン3。」

「倒しに行こう。」


俺達は言葉少なく、戦う事を決めると、そこまで走った。普通に川の魚とかを狙えば良いものを、なんでわざわざ大きな船に攻めてくるのかね?バカなのかね?


 俺達が、魔獣が現れた前方デッキに駆け付けた時には、船の衛兵や、腕自慢の冒険者達が対応していて、ほぼ俺達の仕事は無かった。戦場からこぼれたピラニアの魔獣を、一匹切って終わりだ。


「皆様、有難うございました。私は船の船長をしている者です。皆様には御礼に、デザートを用意いたしますので、1時間ほどしたら食堂へお越しください。」


 男はそう言うと、招待状の様な紙を手渡してきた。川の氾濫期には、時々あることらしいので、手際が良かった。俺達も、招待状を受け取った。一匹しか倒してないので、なんだか申し訳ない。


「これから向かう岸の先にある、特産品になります。どうぞご賞味ください。」


 そう言って出されたのは、林檎をオーブンで焼いたものだった。申し訳程度に、砂糖がかかっていたが、見た目はあんまり宜しくなかった。それでも一口食べてみることにした。


「うーーん。林檎の味が濃くなっている気がするけど、王城で食べた奴の方が美味かったな。」

「王城と比べてどうするんだよ。たぶん水分が抜けたから、味が濃く感じるんだよ。あとは、熱が入ってるおかげだね。」


 俺達は酷評しているが、他の冒険者達は口ぐちに「「「美味い!」」」と褒めていた。砂糖が貴重らしく、タダで食べれるのがうれしいらしい。


「なぁウラガ。砂糖って、どこが有名なんだ?」

「砂糖は確か、獣人の国が有名だな。獣人の北部が温暖で、よく育つらしいぞ。」

「じゃぁほとんどが輸入なんだな。通りであんまり見かけないわけだ。」

「しかも関税がかけられてるらしいぞ。獣人は砂糖が好きらしいから、あんまり外に出したくないらしい。」

「獣人って砂糖大丈夫なのか?」

「動物とは違うらしいし、種族によっても、全然生態が違うらしい。」

「そんなに違うのかぁ。楽しみだなぁ」


 デザートを食べた後は、トレーニングを再開して、俺達は時間を潰した。夕食の後はさっさと寝ようと思い馬車に戻ると、馬車には二人組の青年が凍りついていた。かなり面倒な臭いがする。


「キュッキュ!!キューーーッキュ!」

「ピーーー!ピーーピッピッピ!」


 ユキとシズクは事情を話そうと、俺達に飛びついて来た。何となくだが、この男達が鍵を開けて、馬車に乗り込んできたから、返り討にしたらしい。だいたい4時間前だそうだ。ちょうど魔獣騒ぎがあった時間だ。おそらく、騒動の合間に、盗みを働こうとしたんだろう。


「やっぱり面倒事に巻き込まれそうだな、テル。」

「そうだなぁ。できるだけ簡単な面倒だと良いんだけど。」


 俺達は、氷漬けにされた男達になわをかけて、担いで船長室まで連れて行った。船長は一瞬もの凄い怒りの顔を見せた後、すぐに元の顔に戻して、俺達に御礼を言ってきた。


 どうせ面倒事に巻き込まれるなら、情報が得られる時に聞いておいた方がいいと思ったので、船長に説明を求める事にする。盗人ぬすっとの青年二人は、それ用の個室に閉じ込められた。


「実は、この付近は盗人が多いのです。船を待つ商人の方達の隙をついて、商品を奪っていくそうです。」

「今回の魔獣も彼らが?」

「それは無いと思います。確かに、商人たちの気を引くために、派手な喧嘩を演じる事はあるそうですが、魔獣を用意するなんて、普通の人間には不可能です。」

「盗人はある程度、数が存在するという事ですね。」

「なあ、川のどっちが盗人の本拠地なんだ?」

「今から行く、南側ですね。北は王都の衛兵が、飛んできやすいですから。」


 ウラガは、俺を見てくる。


「もちろん関わるんだろ?」

「どうにか、回避したいんだけどなぁ。無理っぽいよなぁ。」


 とりあえず迷惑料として、乗船料の銀貨5枚を返してくれた。なんだか、得しちゃったなぁ。


 その後は、馬車で寝た。大広間はなんだか居心地が悪いし、いびきがうるさかったのだ。俺達が馬車へもどる、ユキもシズクも嬉しそうだった。寂しかったんだね。


 二日目の船旅は優雅だった。天気も良く、遠くには鳥も飛んでいる。俺達は一日目同様に鍛錬をしたり、ユキやシズクを交えて鍛錬したり、【構造把握1】を鍛えるために、防具や馬車をくまなく調べる鍛錬をした。


 そして、すっかり忘れていた、王から貰った防具を【鑑定2】を使って調べてみた。ウラガの【解析1】も使ってもらう。


・魔鉄の防具一式 ・防御力 最大250 【魔力硬化】


「魔鉄と、魔力硬化って何だ??」

「さぁ?俺も知らないなぁ。」

「名前的には、魔力を加えると、硬くなりそうだけどな。」


 俺達は、王から貰った目録を引っ張り出した。目録には、御丁寧に説明が添えられていた。この防具は、普段は防御力50くらいだが、魔力を込めると【魔力硬化】によって、防御力が上がるらしい。魔力を込めると硬くなる、特殊な鉄を使っているのだそうだ。俺の“水の一振り”を参考に用意しらしかった。魔力の多い俺にはもってこいだね。


 色は茶色がベースだが、金属特有の光沢もある。胸と腕、肘と膝の四点セットだ。装備してみると、少しごつい気もするが、剣を振る動作の邪魔にはならなかった。フル装備より軽いので、【ステップ】を使った強襲にも支障は無いだろう。


 そんな感じで船の二日目は過ぎて行って、馬車で寝た。そして翌日の朝に、目的地の南の船着き場に到着した。


 南の船着き場は、臨時の受付用テントしかない、殺風景な場所だった。本来の受付場は、今回の大氾濫で流されてしまったので、今はテントだけなんだそうだ。そしてこの船着き場からは、道が二本に分かれていた。東に行く道と、南に行く道だ。船に大勢乗っていた人たちの半分は東に、もう半分は南へ行くらしい。


「おう兄ちゃん達も南に行くのか?なら、皆と一緒に行かないか?ここいらは、盗賊が多いらしいからな。皆で固まっていた方が、敵も襲い難いってもんよ。悪くないだろ?」

「俺は、その方が安全に思いますね。ウラガはどう思う?」

「そうだな。同行させてもらおうぜ。」

「決まりだな。見たところ冒険者だが、何かスキルあるのか?」

「俺は【鷹の目】が使えます。ですので索敵には貢献できますよ。」

「そりゃ凄いな。でも商人が雇った冒険者も、【遠目】が使える奴が、すでにいるんだ。悪いが、最後尾でもいいか?」

「分かりました。【鷹の目】でしたら、最後尾でも前方を見れますので、その方が良いでしょう。」

「ありがとうよ。」


 おじさんの話だと、ここから3日程で次の街に着くそうだ。果物が名産品の少し大きい街らしい。そこまで、同行する事になった。


 俺達は集団の最後尾で、馬車を走らせた。久しぶりに動けるからか、馬子は嬉しそうだった。そんな中、俺達は違和感を感じていた。


「なあテル。なんだか見られてる気がするんだけど、俺の気のせいか?」

「そうだな。それはたぶん【周辺把握】のおかげで、敏感になってるんだろう。けど、確かに監視されてるな。」

「【鷹の目】で見つけられないのか?」

「うーーん。それは難しいな。なにせ犯人は、この集団に紛れているんだから。」


俺達は、見つけられない犯人に注意しながらも、のんびりと馬車の旅を楽しんでいた。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル32

体力:421→425  魔力:351→361 筋力:297→301

速度:206→209  耐性:102  魔耐:99

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟1】【水魔法1】【受け流し1】【カウンター1】【構造把握1】【はやぶさ切り1】【回転切り1】【生活魔法1】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 男 人族 19歳 レベル32

体力:560→568 魔力:105→305 筋力:357→360

速度:121→123 耐性:172 魔耐175

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析1】【ステップ1】【水魔法1】【大盾1】【バッシュ1】【受け流し1】【カウンター1】【周辺把握1】【生活魔法1】【魔力回復1】【魔力上昇1】


この巨大な船は、エルフとドワーフの合作です。

作中で出せない不甲斐なさ。ちょっと悔しい。

テル君達は、また問題に巻き込まれそうですね。がんばれ―。

(* 'ω')ノシ

次は、事件に巻き込まれ、解決する話の予定。

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