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でっけー。

本編に戻ります。

新しい旅の始まりですね。

 馬車の中は、それは快適でした。座面の下は収納で、ベッド代わりにもなる長椅子が、向かい合わせで配置されている。御者台に近いところにミニ冷蔵庫が置いてある。それくらいのシンプルな内装だ。荷物は全部、椅子の下に収納してある。


 新技術として、サスペンション?のようなものが開発されて、衝撃吸収力が向上したらしい。素材は、ゴムの木の様な、やわらかい木材だ。


 俺はさっそく雪を召喚して、冷蔵庫の上の扉をあけてやる。


「ユキ。今日からここは、ユキ専用だぞ。ついでに食材を保存するのに、協力してくれ。」

「キュッキューーー♪」


 うん。気に入ってもらえたようだ。ちょっと罪悪感があるけど、専用の居場所が嬉しいみたいだ。


「そろそろ、ギルドを通るぞ。行先は決まったのか?」

「あぁ。南に行こうかと思ってる。」

「獣人の国かぁ。なにか理由があるのか?」

「いや?朝にコインで決めた。」


だって、俺が意思を持って決定すると、悪い事が起こりそうなんだもん。神様にイレギュラーだって言われる程だしね。それなら、偶然の要素に頼りたいじゃないか。俺の責任じゃないのが良いね。


「いいのかそれで?まぁわかった。それじゃぁ東門から出るか。」

「それで頼む。王都から出たら、馬車のやり方教えてくれよ。」

「今からじゃないのか?」

「事故りたくないだろ?」


 宿屋の前を通る時に、宿のおじちゃんと、おばあちゃんが出てきてくれていた。俺達に頭を下げてくれる。俺達も慌てて頭を下げた。なんだか、胸が熱くなるのを感じた。行ってきますね。


 東門を出て、南へと馬車は走った。この旅の最初の目的地は、“境界の森”と呼ばれる、人族と獣人族の国の間にある森である。この星では、各国の間には“境界の○○”という観光名所?があるそうだ。クレーさんの話だと、馬車で20日の距離らしい。


 そして、俺達はさっそく訓練を始めた。俺は馬車の操縦と、【鷹の目3】を獲得するのが目標だ。ウラガは、【魔力回復】と【魔力上昇】だ。という事で、ウラガはさっそく、スライムのシズクを呼び出した。ウラガの膝の上で、プルプル震えている。めっちゃかわいい。


 ウラガは魔力不足で、ぐったりしながらも、俺に馬車の操縦を教えてくれている。馬が素直だから、初心者の俺でも言う事を聞いてくれた。これから長い旅になるので、名前を付けよう。


「馬かー。ブルンブルン言うから、ブルかなぁ?」

「テル・・・才能無いなぁ。」

「しってた。でもなぁ。呼び易くて、イメージし易いのがいいなぁ。」

「そうだな。じゃあ、馬太とか?。」

「・・・それでいいか?馬太。」


ブルンブフフン


「嫌みたいだな。」

「いいと思ったのになぁ。」

「もしかして、メスなのか?それなら、馬子だ!」


ブフーーン


「よしよし。良い子だな馬子は。」


 分かり易くて良い名前だ。安直なネイミングだけど、馬子が良ければ、なんだって良いのだ。


 一日目は、午後から魔獣が現れた。しかし、以前の調査の時より、だいぶ数は落ち着いている。たぶんトレーネ湖で、天使様を解放した成果だろう。推測だが、人の国の西半分を管理している気がする。


 出てきた魔獣は、俺達にとっては雑魚になっていた。【水魔法1】で作った水のナイフを、一度ユキに凍らしてもらって、それを【投擲2】を投げて殺していく。俺の【水魔法1】を上げる為なで、ちょっと面倒くさい。


 食事は、俺が担当だ。今日は、仕入れていた魚を使った料理だ。昼は塩焼き、夜はムニエルだ。あと、スープとパンが付いている。ウラガには大好評だ。この世界では、衛生面が不安なので、獲れたて以外で刺身は無理だろう。醤油はあったよ。王都で食べればよかった。


 3日目からは、岩場が増えてきた。石切り場として重宝された山が、遠くに見えてきた。そして、ゴブリンの戦い方も変わってきた。石を使ってきたのだ。単純に石を投げてきたり、弓のを使ってきたのだ。矢の先に岩を使っている。岩陰に隠れて、こそこそ狙ってくるのだ。うっとおしい。


 俺は“水の一振り”を初めて使ってみる事にした。ゴブリンは、水を切るより容易かった。紙を切るのって、俺にはちょっと抵抗がある気がしていたのだ。ザクザク言うしね。そして紙よりも抵抗がなく、ゴブリンは真っ二つだ。俺としては、スキルとか魔力を加えて、切れ味上げたかったのになぁ。


 そして、とうとう俺の宿敵が現れた。イノシシだ!相変わらず、森から突進してきたのだ。俺は最初会った時のように、剣を横に構えて、イノシシの突進を待った。最初会った時は、もの凄く早かった気がするのだが、今では少し遅く感じる程だ。“水の一振り”は、イノシシを切り裂いた。これこそ、紙を切るような抵抗を感じたが、イノシシは横半分に切れていた。


 もちろん腕にも、衝撃は来なかった。こんなに弱かったか?俺達は時間もちょうど良いので、昼休憩にする事にした。イノシシは七輪で焼き、香ばしい臭いを放っていた。そして美味しく、俺達の腹に消えたのだ。残りはユキに冷凍にしてもらう。けっこう美味かった。俺は自分が強くなっているのを、初めて実感した。


 ちなみに、“水の一振り”は血糊も何も付かなかった。水でできているから、汚れても直ぐに無かった事にできるのだ。刃こぼれも無いなんて、便利だなぁ。


 そんなこんなで魔獣以外には、特に何もなく、5日目には途中の村に着いた。ここは、かつて石切り場で栄えた山のふもとにできた村だ。今ではすっかりさびれている。この村の宿で一つ、重要な情報を得た。


「あんた達、これから南に進むのかい?」

「はい。明日の朝にこの村を発って、南に向かいます。」

「この先にある大河なんだけどね、今年は氾濫の範囲が広がってるんだよ。おかげで、この山を越えてちょっと行った先から、もう川になってるんだ。おかげで、1日で渡れる船が、2日かかっちまってる。」

「それはかなりの川幅ですね。ところで、何かまずいんですか?」

「実は今、船は一艘しかないんだよ。もう一つは、川底の石で船底が裂けて、修理中さね。」

「つまり、往復で4日かかると?」

「そうさ。そして明日の朝、こっち側から出航するんだよ。乗りたければ、この村を深夜に出れば間に合うはずだよ。」


「ウラガ、どうする?」

「そうだな。こんなところで足止めされるのもなぁ。」

「そうだよな。馬子は大丈夫か?」

「ちょっと疲れてる様だが、あと半日くらいだろ?それなら余裕だ。」

「じゃあ買い出しして、馬子を少し休ませたら出発しようか。」

「俺はそれでいいぞ。船に乗れば、馬子も休めるしな。」


俺達は、急遽買い出しに走った。馬子用の干し草や、俺達の食料だけなので、直ぐに終わった。そして宿で仮眠した後、深夜に山を越えるために、村を出た。


「俺がランタンを持って先導するから、操縦は任した。」

「俺、まだ【夜目】持ってないんだけど、テルは持ってるのか?」

「大丈夫だ。【夜目2】を持ってる。【鷹の目2】も合わせて使うから、警戒には問題ないよ。」

「それなら安心だな。」


 俺達は、ゆっくりと山道を登った。さすがに馬車が重いのか、馬子が辛そうだった。昼間の疲れも抜けきっていないのだろう。さらに足元も良くなかった。小石が多いのだ。馬には歩きづらい場所である。


 俺はユキにランタンをくくりつけて、馬車の数歩前を先行してもらった。ユキは、嫌がる素振りも見せず、フヨフヨと浮いて、足元を照らしてくれた。そして俺は、馬車を後ろから押す。修行のおかげで力の付いた俺が押しているからか、馬子も少し足取りが軽くなった。


 本格的な岩場となったからか、新しい魔獣が現れた。岩ヘビである。岩石地帯にすみついて、岩を食っているらしい。おかげで、身体も石で覆われており、比較的、硬い魔獣として有名だ。


「ウラガ!岩ヘビ3。前方500m先。」

「なんで岩ヘビは、俺達の場所がわかるんだろうな。俺にはなんにも見えねぇぞ。」

「ヘビはピット器官っていって、温度を視覚的にとらえられるんだ。」

「さすがテルだな。で、対処法は?」

「火魔法とかなら、目くらましできるけどなぁ。魔法結晶はもったいないし。」

「テルは見えてるんだろう?切れそうか?」

「見えてる。たぶん切れるよ。切れなくても、スキル取って、なんとかする。」

「へへ。すっかり頼もしくなったな。馬子の守りは任せろ。」


 俺は岩ヘビへと駈け出した。俺はかにを退治した時のように、【甲羅割り】のような、硬い魔物を切れるスキルが欲しかったのだ。今後役に立つかもしれない。


(硬い奴を切りたい。剣に刃こぼれさせずに、硬い奴を切る。)


 そう意識しながら“水の一振り”で、岩ヘビに切りかかった。すると岩ヘビは、抵抗も少なくスパッと切れてしまった。“水の一振り”にとって、岩ヘビの硬さは、無いにも等しかったのだ。もちろんスキルは獲得できず、残り2匹を【ステップ2】で追いかけて、切り裂いた。


 その後も、何体か岩ヘビと出会ったが、俺が難なく切り裂いた。討伐証明の尻尾の先だけは回収しておく。お金はたっぷり貰ったはずだが、ギルド証を更新していないので、まだ手元に入っていなかった。目録にも、ヒ・ミ・ツ♡とだけ書いてあっていくらか知らない。王様、気持ち悪いよ。


 山頂を越えてからは、逆に馬車が滑りだすので、俺は後ろで馬車を引っ張って、速度を調整した。かなり面倒だった。魔獣が出たら、ウラガが馬車を支えたので、ウラガは動けなくなり、より一層、馬車への攻撃を警戒した。危ない場面もあったが、なんとか岩山を越えられた。


 それからは、また平地が続いており、俺とユキは馬車の中に引っ込んだ。さすがに精神的に疲れた。ユキは自分の場所に飛んでいき、休んでいるようだ。ちなみにゴブリン達は出てこなかった。夜だとゴブリンも目が見えないようだ。


 夜が明けるのか、空が白み始めた頃、御者のウラガが声をかけてきた。


「テル!前を見てみろよ、でっけー川と、船が見えるぜ。」

「ウラガ、日が昇ったら出航するかもしれない、ちょっと急いでくれ。」

「わかった。馬子!最後のひと踏ん張りだ!」


 馬子に頑張ってもらって、俺達は船が出る、ギリギリ前に船着き場に到着した。船が一便減ったからか、大勢の人でごった返していた。なんと、馬車が乗るスペースもギリギリセーフだったのだ。


 俺達は乗船料として、銀貨5枚を支払った。人一人が銅貨50枚。馬が銀貨1枚。馬車は乗員可能数で決まるので、俺達だと6人乗りなので銀貨3枚だ。


そして俺達は、船へと乗り込むために馬車を走らせた。


「「でっけー。」」


そこには、前世で見た、フェリー並に大きな船が浮かんでいた。全て木材で作られているが、その大きさは、感嘆するほど大きかった。この世界の造船技術は、かなり発達していることがわかる。そして俺達が乗り込んで直ぐに、桟橋が外されて、船は出航した。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル32

体力:421  魔力:351 筋力:297

速度:206  耐性:102  魔耐:99

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟1】【水魔法1】【受け流し1】【カウンター1】【構造把握1】【はやぶさ切り1】【回転切り1】【生活魔法1】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 男 人族 19歳 レベル32

体力:560 魔力:98→105 筋力:357

速度:121 耐性:172 魔耐175

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析1】【ステップ1】【水魔法1】【大盾1】【バッシュ1】【受け流し1】【カウンター1】【周辺把握1】【生活魔法1】

途中の旅は端折はしょって、船まで来れました。

“水の一振り”の凄さ、便利さが少しでも伝わると良いのですが。

テル君は、スキルが上がらず、獲得もできずでしたね。ステータスも上がっていません。今は余裕なんですね。

(´・ω・`)チッ

次回は、川と移動の予定。

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