クレー・ガスタウス様による情報全文
クレーさん目線の話のまとめ的なものです。
ギルドの仕事は安定していて好きなんだけど、もうちょっと刺激的な事は無いものかしらね。冒険者のイザコザみたいなのは、飽きていました。
私はクレー・ガスタウス。父親の勧めで、ギルド職員になって、早数年の中堅職員です。冒険者の相手をするので、ギルド職員もそれなりに腕がたつ必要があるんです。もちろん私も、昔は冒険者をしていて、ランクは金までいった、そこそこの冒険者でした。
そろそろ身を固めたいと思って、安定しているギルド職員になったけど、なかなか良い男に出会わないんですよ。そう思っていたけれど、ある日面白い男性に遭ったんです。
私が湖の街、ゼーのギルドに居る時、面白い服装で出会ったのが最初でした。彼は、へそが出た布の服と、長ズボンといった服装で、はっきり言って、みすぼらしかったんです。そして、服を切ってくくりつけたのか、折れた右腕を剣で固定していました。
「身分証を作って頂きたいのですが。」
そんな事を言っていた気がします。私は、笑いを堪えながら身分証を作りました。だって、へそ出しですよ?マッチョで高身長の若い男性が、腕を折ってて、へそ出し。彼がギルドから出て行ったあとは、一人で爆笑していました。今思うと、私の行為は、ちょっと失礼でしたね。
そんな強烈な印象の彼が、次に来たときは奴隷になっていました。なんでも、ネーロさんの所にいたそうです。裏の社会では、奴隷商の手腕でも有名になり始めていた、やり手の商人でした。おそらく罠にでも嵌められたのでしょう。その時、私は、深くは聞きませんでした。
それから彼は時々、薬草を持って来てくれました。【採取1】のスキルを獲得して、あっという間に【採取2】になって、大量の品質の良い薬草を納品してくれたんです。塩の街ザルツへの緊急の依頼も、快く引き受けてくれましたしね。私のポイントも、うなぎ登りでした。笑いが止まりません。
そんな彼が、ネーロさんの用事で王都に行く事になりました。ポーションと、防具と武器を、希望されましたので、私はとっておきの【スピード1】が付与されている剣を売りました。本当は、あれだけで銀貨50枚は軽く超えていたのですが、投資だと思って売っちゃいました。ギルド的には、利益にならなかったので、後で怒られちゃいましたけどね。
そして、彼が王都に出発した数日後、私も王都のギルドへの移動が決まりました。父が引退したので、その後釜として、偶然、娘の私が選ばれたのです。テルさんのポイントが効いたんでしょうかね。
王都への途中の街で、ネーロさんに会いました。盗賊に襲われて、戻ってきたそうです。テルさんの事を聞くと、魔法契約書を使って、奴隷から解放されたと仰っていました。そして、盗賊を一蹴して、さっさと王都に向かったそうです。私は内心、ほくそ笑んでました。さすがはテルさんだと。たった数日で、自力で奴隷から解放されるなんて、前代未聞ですからね。
私は、テルさんと王都で再会しました。さっそく仕事で、王都の周辺調査に出ていたそうです。ウラガーノさんという、背の高い男性と一緒でした。以前のような、すさんだ瞳ではなく、ウラガーノさんの事を少し信頼しているような印象を受けました。良い人と巡り合えたようでした。
そして、あのトレーネ湖の事件が起きました。テルさん達が大渦に呑みこまれたのです。数日たっても、浮いてこないので、私はギルド規定に従って、死亡扱いの準備をしていました。とても悲しかったのを覚えています。
そんなある日、ボロボロの服装と、巨大な魔法結晶をもって、テルさん達がギルドに現れました。私は一瞬、幽霊かと思いましたが、直ぐに現実だと実感して、テルさん達の無事を喜びました。
テルさん達から聞いた話は、壮絶なものでした。私一人では処理できないので、ギルドマスターのアインスさんを呼んできて、また説明してもらいました。アインスさんは大急ぎで、王城へ知らせに行きました。彼のあんなに慌てた姿は、とても珍しかったですね。私は、テルさん達を宿へと送りました。偶然にも、私の実家である宿に泊まっていたらしく、ちょっと運命を感じちゃいましたね。
後日、テルさん達は王城に呼ばれる事になりました。実は私は、王であるケーニッヒと縁があるので、私も同行する事になりました。顔渡しの役割もあったのでしょう。私も久しぶりに王の顔が近くで見れると思い、懐かしかった気がします。
王と謁見すると、王は私に向かって手を振っていました。私は、もちろん無視しましが、それを見ていたテルさんは、不思議そうにしていました。空気を読んで、あえてそうしていたのでしょうが、無視されて、ちょっと拗ねてましたね。
そしてテルさんは、王や官僚達にも物怖じせずに、王への説明と、質疑に応えていました。
そして案の定、官僚の方が、嫌疑をかけてきました。ですが、私達にとっては予想通りの展開でした。しかしテルさん達に伝え忘れていたので、微妙な空気になっていましたね。そんな時、テルさんは果敢にも王へと進言して、自分の行いを証明して見せました。
凄いものを見せてもらいましたが、内容が内容なので、お伝えする事はできません。
その後は国賓として、王城に滞在し、修行してらっしゃいました。私は、彼らの護衛として、見守っていたのですが、それはもう地獄かと思う程の訓練でしたね。そして、メイドさんや、王城に来た商人さんたちが、わざわざ彼らを見に来てました。皆さん、訓練の内容に、ドン引きしてましたね。
それでもメイドさんは、「かっこいい」とか、「お近づきになりたい」とか言ってました。商人も、なんとか縁を掴みたがってましたが、テルさんは、商人があまり好きでは無いようなので、難しいでしょう。完全にネーロのせいですね。私は彼らが、テルさんたちに近付かないように止めていました。
実は、王も見に来ていたのですよ。「頑張ってるね―」とか、「指導教官に気に入られたらしい」とか、聞いてもいない事をペラペラ喋ってました。本当に昔から変わらないんですよ。
ある夜、トレーネ湖に行きたいと言ってきたので、連れて行きました。真っ暗な中、湖に裸で飛び込んで、魔力を垂れ流していましたね。その時、【水魔法】を覚えられたんです。私とアインスさんは、本当に驚きました。あんな短時間で、魔法を覚えるなんて、普通じゃありません。
ウラガーノさんも【水魔法】覚えた様で、二人ではしゃいでいましたね。ちなみに、この【水魔法】の習得方法は、ギルドでも、正式に訓練プログラムに組み込むそうです。発表するまでは、秘密にしてくださいね。
最後の日は、冒険の準備やら、挨拶まわりやらで、街中を廻っていました。これも秘密ですけど、テルさんたちを狙った賊の襲撃とかもあったんです。アインスさんが、秘密裏に片づけましたけどね。テルさん達のお金が目当てだったそうです。ダンジョン攻略者に勝てると思ったんですかね?
私の実家の宿にも寄ってくれました。その時に、今話題の、“グラタン”と“クスクスのパエリア”と“玉ねぎスープ”の作り方を教えてくれたんです。テルさんの腕は絶品でしたね。再現するだけでも、何度失敗した事か。おかげで、実家の宿は大繁盛ですよ。是非、あなたも食べに来て下さいね。季節によって、食材を変えていけるので、飽きさせませんよ。
私が、テル君とウラガーノ君に出会ったのは、それくらいですね。テルくんは、意外と博識というかアイデアマンで、性格も温厚って感じですね。でもスイッチが入ると、突撃するみたいです。ウラガーノ君は、まっすぐですね。周りもよく見ていますし、なにより話すと元気になれます。お二人とも、素晴らしい方でしたね。
私が知っているのは以上になります。彼らの記録、しっかり取って下さいね。今後も、大きなことをしてくれる気がするんです。
テル・キサラギ様、ウラガーノ・インヴェルノ様の情報収集担当。
王城就き、歴史保管官の資料より。
クレー・ガスタウス様による情報全文。
実は、テル君達は狙われていました。
本編にも全然描けなかった、裏設定的なものです。
テル君たちは、のほほんと行動できて、感謝しないとね。
_(´ω`_)⌒)_
次回は、本編の予定。