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もしかして、俺って魔法使えないのか?

スパルタ2日目と、スキル獲得のお話です。


 王城2日目の朝。メイドさんに、朝食の前の、湯浴ゆあみを勧められた。この汗臭いままでは、王との会食にのぞめないそうだ。という事で、大浴場へと連れてこられた。ここは、時間帯によって、兵士から官僚、客人まで利用するらしい。そのため、プール程の浴槽と、多くの洗い場が設けられていた。トレーネ湖の水と、専用の魔法結晶によって、お湯が作られているそうだ。もちろん、王は専用の風呂場をもっている。そして、風呂は貴重なものだそうだ。


俺は、約2カ月ぶりのお風呂に、テンションが上がっていた。日本人としての習慣からか、やっぱりお湯につかる事は、言葉にできない感動があった。一方ウラガは、この広い浴槽にビビっていた。貴族と言っても、没落なので、風呂に入った事は無いそうだ。せいぜいお湯で身体を拭くくらいである。庶民は水だ。


昨日の夜に、俺の秘密を打ち明けてからも、ウラガは変わらず接してくれた。いや。むしろ積極的に聞いてきた。異世界のことやスキルについては、特に執拗に聞いてきた。やはり強くなりたいらしく、“ライゼの成り上がり”の本に書かれていた事は、やってみるそうだ。スキル獲得のコツとして、ウラガには防御や盾を意識する事を勧めておいた。俺の固有能力同様に、ウラガの“ハイシールド”もスキル獲得の補正がかかる気がしたからだ。


その後は、特に何事もなく、王との会食を終えて、またスパルタ地獄が始まろうとしていた。


「シュヴェルトさん。指導の前にお願いがあるのですが。」

「なんでしょうか、テル様。何なりとお申し付け下さい。」

剣戟けんげきを飛ばしたいと思っているのですが、教えて頂けませんか?」

「かしこまりました。しかし剣戟を飛ばすには、剣の才能が必要と言われております。お教えしても、できる保証は御座いません。」

「わかりました。それで構いません。では指導の程、宜しくお願いします。」


俺はシュヴェルトさんに連れられて、一本のわらの棒の前に立たされた。そこからスパルタが始まった。

「剣戟を飛ばすには、まずイメージだ。自分の剣が伸びて、あの藁を真っ二つにする事だけ考えて、剣を振れ!」

(剣が伸びる。伸びた剣で、あの藁の棒を切る!)

「違う!何度も振ればいいってもんじゃない!しっかりと、一撃一撃を大切にしろ!」

(この一太刀で、あの藁まで届かせる!)

「イメージできてきたら、伸びた剣の先と、本物の剣の間に空間があるのを意識しろ!」

(ちょっと矛盾してない?いや。イメージだ。本物の剣の先に、剣先がある!その剣先が藁に届く!)

「最後に、その剣先が、飛んでいくのをイメージしろ!」

(剣先が飛ぶ!見えない剣先が飛んでいく!)

「せやぁぁぁ!!!!!!!!!」


最後に、渾身の力を振り絞って、俺は剣を振りぬいた。格好としては、居合い切りを真似てみたのだ。すると、2m程前に置かれていた藁の棒が、真っ二つに切れた。そして、スキルを獲得した時のゾクリとした感覚が全身を廻った。【斬戟ざんげき1】を獲得していた。


「よっしゃぁぁぁぁ!!!!!!」

「・・・え?まじかよ。1時間もかかってねぇぞ。」


シュヴェルトさんは、驚きで目を見開いていた。本来は、今言った事を意識して、日々剣を振る必要があるそうだ。剣の才能に定評のあるシュヴェルトさんでさえ、1か月間、剣を振ったそうだ。本当は、今日やり方を教えて、あとは気長に練習させる予定だったそうだ。獲得できたものは、しょうがないよね。


この事件がきっかけで、俺はシュヴェルトさんに、かなり気に入られた。俺に、あれこれ教えようと思ったそうだが、今日のところは予定通り、ウラガと合流して、基礎体力作りや、戦闘の基本を叩きこまれた。ウラガの方も何かあったようで、シルトさんに気に入られたようだ。先生達は、明日以降の予定を変更するべく、コソコソと指導の合間に色々相談していた。


夕食もそこそこに、俺達は馬車に乗って、王都の外、東門を出た先の、船着き場へとやってきた。もちろん、アインスさんとクレーさんが警護してくれている。辺りは真っ暗で、ランタンの淡い光と、空に浮かぶ大きな月の光が印象的だった。ちなみに、王都からの光は、高い城壁で届かなかった。そしてこの星の月は、見た目は前世の月の約3倍ほどある、とっても大きな星だ。満月なので、余計に明るく感じる。


ここに来た目的は、【水魔法】の獲得である。ダンジョンでの経験から、水の怖さと必要性を思い知ったため、早めに取っておくことになったのだ。俺とウラガは、全裸になって、トレーネ湖に飛び込んだ。雪解けの水が湖に入り込んできているのか、めちゃくちゃ冷たかった。俺は短剣を片手に、ウラガは小さな盾をもって、湖に入っている。


「“ライゼの成り上がり”によると、魔力を流して、水を感じるそうだ。」

「魔力を流すって、水にたれ流せばいいのか?」

「たぶんそうだろう。外に出した魔力が、水になるイメージじゃないか?」

「なるほどな。それにプラスして、俺は盾で防ぐ事を意識するんだな。」

「そう言うことだ。じゃあ、始めるぞ。」


俺達は、魔法結晶に魔力流す感覚で、全身から魔力を放出する。全身が水で包まれているので、意識し易かった。魔力が流れた周辺の水は、ほんのりと光を放っている。魔力を放出する事に成功している証拠だ。そして俺は意識を剣にも集中させていく。


(剣に水の属性を付ける。剣戟を水で補強する。剣を魔法でサポートする。そのための魔法が必要だ。)


そう念じながら、プカプカと水に浮き続けた。しかし、なかなか魔法を獲得できない。俺は痺れを切らして、水中で【剣戟1】を発動させる事にした。シュベルトさんも言っていたが、水の剣戟をイメージし易くするためだ。俺は、ウラガと反対方向に剣戟を飛ばした。すると、ゾクリとした感覚が身体を走った。断じて、おしっ○はらしてないよ。


スキルを確認すると、俺は【水魔法1】を覚えていた。予定より時間がかかったが、すんなりと覚えられた。俺は湖から上がって、スキルを覚えた事を皆に伝える。それを聞いた、アインスさんとクレーさんは、驚いて目を丸くしていた。みんな同じような反応するんだなぁ。


俺が水魔法を獲得した事に触発されたのか、ウラガも盾であれこれしていた。しかし、盾のスキルが無いからか、イメージし辛いようで、さらに1時間以上じたばたしていた。それを見かねて、俺はもう一度湖に入り、ウラガに剣で切りかかった。もちろんゆっくりとした動作で、ウラガが盾を意識し易いように動いた。約30分間、水中での模擬戦闘を繰り広げた頃、ウラガはビクリ!と身体を震わせた。


「おぉ!本当に覚えられたぜ!冗談みたいな早さだな!」


ウラガも無事に【水魔法1】を獲得したようで、俺達は喜びあった。俺達のスキル獲得速度は、脅威的らしい。スキルを覚えるのは、才能のある者で1カ月、一般人は半年以上かかるらしく、覚えられない者が大半だそうだ。だって、スキルレベル1でも、“一人前”レベルだもんね。


しかもこんなやり方は、初耳だそうだ。俺達の場合は、個人能力の補助のおかげだと言って、一応納得してもらった。そしてこの夜以降、このやり方は、冒険者や兵士だけでなく、一般人にまで知れ渡り、新米兵士の必須授業にまで用いられるようになった。この功績を称えられて、表彰までされてしまった。俺が見つけた訳じゃないんだけどなぁ。


湖から上がった俺達は、さっそく【水魔法1】を使ってみた。ウラガは、手から水を出したり、こぶし大の水の玉を投げたり、小さな水の壁を作って楽しんでいた。しかし俺は、確かに【水魔法1】を使っているが、何も起こらなかった。手から水さえ出てこない。


「もしかして、俺って魔法使えないのか?」


そんな言葉を呟くと、ウラガやアインスさん、クレーさんまで、俺の方を振り返った。そして、不思議そうで、可哀そうで、あわれむような、複雑な視線を向けてきた。そんな視線は無視して、俺の頭の中は、?で埋め尽くされていた。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル32

体力:360→371  魔力:331→342 筋力:236→245

速度:161→169  耐性:74  魔耐:69

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】【剣戟1】【水魔法1】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 男 人族 19歳 レベル32

体力:460→475 魔力:80→84 筋力:287→299

速度:95→102 耐性:132 魔耐120

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析1】【ステップ1】【水魔法1】



お風呂で習得しなかったのは、他の人も入ってくるし、大量に魔力を流した水は、自然へ悪影響があるからです。

湖だと、すぐに大量の水で薄められるので、心配いらないという、裏設定があったりなかったり。

お風呂だと、逆上のぼせるしね。

テル君は、念願の魔法をゲットしたようです。くっくっく。悩むがいい。

ψ(`∇´)ψ

次回は、スパルタとスキル獲得をまとめる予定。


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