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こっちこそ。ありがとう。

王宮でのお話。

褒美と地獄と告白です。

*最後にお聞きしたことがあります。

 王宮での昼食会が始まった。俺達は国賓扱いなので、もちろん王様と一緒に食事する。ギルドマスターのアインスさんと、クレーさんも一緒だ。クレーさんを慕っている王が、彼女をのけ者にするはず無かった。


「そういえば、君達に褒美を出したいんだけど。何が良いかな?」

「有難うございます。では、移動手段とお金を頂けますか?」

「うん。実に素直で良いね。お金はもちろん渡すけど、なんで移動手段なのかな?」

「天使様の話を聞いて、私は、世界をまわろうと思っております。ですので、この広い星をまわるための、移動手段がほしいのです。」

「ふーん。君じゃなくても、世界を救うためなら、全ての国が動くと思うけど。何かあるんだよね?」

「はい。しかし今は、お答えできません。」

「わかった。じゃあ馬車をあげよう。国から出すんだから、とびっきりきらびやかなやつを。」

「あの。それは困ります。」

「冗談だよ。じょーだん。見た目は普通でも、長旅に適した仕様のもので、頑丈に作るから。一応、国から贈る品だからね、新品を作らせるので、少し時間をくれるかな。」


王は、俺に微笑んだあと、後ろに控えていた、小太りの文官に視線を移した。


「財務長。今言った内容のものを大至急。国庫にある資材の使用を許可する。必要なら、大工を複数雇っても良い。全部揃うのに、何日程かかる。」

「一週間でご用意いたします。それでは、失礼させて頂きます。」


俺に、いちゃもんを付けた小太りのおじさんは、財務長らしい。王に返事した後、優雅に退出していった。クレーさんによると、馬車をつくるのに普通1カ月はかかるそうだ。それを一週間で仕上げるらしい。財務長も優秀なようだ。


「ウラガ君はどうする?欲しいものはあるかい?」

「私は、防具一式と、商売における免税を所望します。それと、技術指導を受けたく思いますので、どなたか紹介して頂けませんか?」

「・・・君は、この後テル君と一緒に行動するのかね?」


王のいきなりの質問に、俺はウラガの顔を見た。ウラガの夢は、商売をすることだ。免税と報奨金があれば、そこそこ大きい店を出せるだろう。そう考えると、もの凄く不安になってきた。


「私は、今後もテルと一緒に、冒険を続けたいと思っております。私の最終目標は、店を持つことですが、その店では世界の珍品、名品を扱いたいと考えています。そのために、世界をまわりたいのです。それに、テル一人では、寂しいと思いますので。」


そう言い終わると、ウラガは俺の方を向き、ニカっと笑って見せた。俺は、胸が熱くなるのを感じて、目にうっすらと汗を浮かべた。


「なるほどね。それは、なかなか面白い夢じゃないか。分かった。君の願いを叶えよう。」


王はそう言うと、後ろに控えている、顔は浅黒く日焼けし、服の上からも筋肉がはっきり分かるおじさんに向かって、声をかけた。


「武官長。盾の使用にけた者を、テル君の指導者に付けてくれ。指導内容は一任するが、冒険に役立つ技術を、一週間を目処に教えるように。」

「かしこまりました。」

「商業長。免税の許可証の準備を。そして武官長と共に、装備の用意も頼む。」

「かしこまりました。」


商業長と呼ばれた女性は、武官長と共に退出していった。この世界はまだ男性優位らしいが、彼女は女性で商業長を任されている。王は性別よりも、実力重視のようだ。当時は大層非難もあったそうだが、商業長の実力でねじ伏せたらしい。どっちもすごい。


「それと、魔法結晶は、国が買い取って良いかな?それとも使い道を決めているかい?」

「いえ。正直、扱いに困っておりました。有り難く、お言葉に甘えさせて頂きます。」

「あんなに大きな物だからね。冒険には邪魔になっちゃうもんね。」

「王様。ウラガの話を聞いて、私も武器の指導をして頂きたいと思ったのですが、可能でしょうか?」

「わかった。じゃあ後で武官長に伝えておくよ。剣術でいいのかな?」

「はい。剣術以外は、全く使用できないので、そのことも配慮して頂きたく。」

「全く?なるほど。まだ秘密があるんだね。必ず伝えるよ。」

「宜しくお願い致します。」


その後は、世間話などをして、昼食を終えた。ちなみち、昼食はかなり美味しかった。さすがは王の昼食と言えるほど、肉や野菜を多用し、香辛料も適量使われていた。そして、最後にデザートまで出てきたのは驚いた。林檎を甘酸っぱく焼いた、シンプルなものだったが、さっぱりしていて、美味しかった。


昼食後は、武官長の元に案内されて、俺達の指導教官が紹介された。

「テル様、ウラガーノ様。この者達が、貴殿らに指導させて頂きます。テル様には、第一部隊隊長・シュヴェルト。ウラガーノ様には、守備隊隊長・シルトが付きます。」

「紹介にあずかりました、シュヴェルトです。」

「同じく、シルトと申します。」


もの凄く丁寧に紹介された。俺達の国賓扱いが、ここでも効いているらしい。ちなみに二人とも、がっしりした体形で、見た目は若かった。30後半か?しかし多くの修羅場と訓練を乗り越えたのか、瞳の奥まで力がみなぎっていた。


「私がテル・キサラギ。こちらがウラガーノ・インヴェルノです。宜しくお願いします。」

「「宜しくお願い致します。」」

「あのぉ。私達は指導して頂く身なので、そんなに畏まられると、こちらが困ってしまします。一平卒と同じ扱いで構いません。時間もありませんし。」

「そう言って頂けると、こちらも助かります。それではお言葉に甘えさせて頂きます。お前等聞いたな!?時間もねぇから、ビシバシ行け。治療班も常駐している。死なない程度でお前等の全てを叩きこめ。」

「「イエス。サー!」」


「おら!!声が出てねぇぞ!冒険じゃぁ、連携が命だ!出せる言葉はどんどん出せ!」

「視線を外すな!仲間が傷つこうが、敵の方を見ろ!仲間は気配で感じ取れ!」

「足が止まってるぞ!体力ねぇなぁ!へばってんじゃねえ。動き続けろ。」

「もっと周りを見ろ。どんな罠があるか、いつ不意打ちされるかわかんねぇぞ!敵を見ながら、意識は広く持て!」

「剣も盾も下がってる!きっちり前に構えろ!それだけで、威嚇になるし、動きやすくなる!」

「腕が疲れただぁ?じゃあ次は走りこみだ。どんどん重りを増やしていく。死ぬ気で走れ!」


「一平卒扱いで」とか言わなければ良かった。初日からスパルタ地獄だ。それぞれが相手をしてくれて、打ち合いをしてくれる。そして時々、通りすがりの兵士が、死角から石を投げてくる。すでに話が通っているようで、不意打ちに慣れさせるようだ。しかも走りこみの間でさえ、石や魔法が飛んでくる始末である。


打ち合いでは、一瞬でも気を抜くと、攻撃が当たって気絶してしまう。すぐに治療班のお姉さんが起こしてくれるが、回復はしてくれない。体力も、筋力も、魔法で回復させると、自然回復する時より、少しだけ成長を阻害するらしい。意識だけを器用に覚まさせるのだ。そうして、スパルタ地獄は、日没の鐘が鳴るまで続いた。その頃になると、武官長さんが会いに来た。


「「・・・・・」」(意識が飛んでいるようだ。)

「ふむ。あの二人のシゴキを受けて、立っていられるとは。ダンジョンを攻略しただけの事はあるな。」

「「・・・・・」」(まだ帰ってこない。)

「今日はここまでだな。集中が切れていては、危ないだろう。では、テル様、ウラガーノ様、今日は失礼させて頂きます。また明日、伺いに参ります。」

「「はっ!有難うございました!」」(無事生還したらしい。)


全身が使い物にならない程疲れていたが、食堂まで這って行く。そして、がんばって夕食を食べた。スプーンすら重く感じるが、食べないと明日も、身体がもたないので、無理やりにでも腹に詰め込んだ。


アインスさんと、クレーさんに担がれながら、俺達はベットに連れて来てもらった。ちなみに、ベットは一部屋に二つずつ。俺とテルのグループ。入口に近い部屋に、アインスさんとクレーさんが寝る。俺はウラガに秘密を打ち明けるために、座ろうとするが無理だった。ベットで仰向あおむけに倒れながら、ポツリポツリと話していく。ウラガも、真剣に聞いてくれた。


俺の異世界の事。死んだこと。この世界に来たこと。神に手紙を貰って、世界を守る使命を与えられたこと。ユキに出会ったこと。ネローに奴隷にされたこと。俺の個人能力“オール・フォー・ソード”のこと。“ライゼの成り上がり”の本のこと。奴隷から解放されたこと。王都に来たこと。ウラガに出会ったこと。ダンジョンで天使に言われたこと。


ウラガは、時々相槌あいづちを打って聞いてくれた。そして最後に言った。

「そうか。わかった。ありがとう。」

「こっちこそ。ありがとう。」


そう言うと、ウラガは眠ってしまった。声から察するに、俺の秘密に驚いていたようだが、受け入れてくれた気がする。ウラガの「ありがとう」の言葉は、凄く優しい感じがした。俺は、枕を顔に埋めて、泣いた。凄く不安だったのだ。最悪、そのまま愛想あいそうをつかされて、捨てられるかと思ったのだ。なのに、その暖かな声が、俺の不安をそそいでくれたのだ。俺は泣きながら、眠りについていた。肩の荷が下りたようで、その日の眠りは心地よかった。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル32

体力:333→360  魔力:331 筋力:207→236

速度:145→161  耐性:74  魔耐:69

召喚獣:氷の精霊【ユキ】:【水神の加護】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 男 人族 19歳 レベル32

体力:420→460 魔力:80 筋力:258→287

速度:82→95 耐性:132 魔耐120

召喚獣:水の聖獣【シズク】:【水神の加護】

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析1】


お気付きでしょうか?私の敬語力の低さを!王様がフランクなのも、敬語を少なくする作戦だったりなかったり。

テル君はウラガ君に、真の意味で受け入れられたようです。良かったね。

(´;ω;`)

次回は、スパルタ地獄にスキル獲得の予定。


*お聞きしたこと*9月8日いっぱいで締め切ります。

次のステージとして、北のドワーフ国に行くか、南の獣人国に行くか迷っています。北に行くと、【付与系】スキルが。南に行くと【索敵系】スキルを獲得します。ちなみにメインヒロインはまだ出ません。ですが、どっちに行っても女の子は出ます。

皆様は、どちらがお好きですか?御意見お待ちしております。

感想もお待ちしております。

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