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そんな爆弾発言、聞きたくなかった。

世界の秘密に少し触れます。

長めですが、宜しくお願いします。

俺達は、ボススライムの魔法結晶から現れた、10cm程の白い球を注視する。俺とウラガは、まだ戦闘が続くのかと身構えるが、ユキだけはリラックスした様子で、フヨフヨしていた。


白い球は、徐々にその姿を変えていく。みるみる内に、白い球から長さ40cm程の翼が生えてきた。明らかにバランスが悪い。次に5cm程の手足が、申し訳程度に伸びて行き、目はクリっとした感じで非常に可愛らしい姿になった。そして最後に、白から水色へと変化した。


「助けて頂いたようで。誠にありがとうございます。」


非常に透き通る声で、話しかけられた。子供の様な、男女の区別のつかない声だった。敵対する素振りは全くなく、どちらかというと、お辞儀している。


「ふふふ。まずは自己紹介ですね。私は、良く言われるところの、天使です。この星ができた当初から、神の涙たる“トレーネ湖”にて、星を守護しております。」

「・・・あ。これはご丁寧に。テル・キサラギと申します。こちらは、友人のウラガーノ・インヴェルノと、氷の精霊のユキです。駆け出しですが冒険者をしております。」


前世で散々web小説を読んでいたおかげか、天使の登場に、比較的早く状況を理解できた。いっぽうウラガは、俺が自己紹介しているうちに、ようやく我に返ったのか、挨拶をする。


「ご紹介にあずかりました、ウラガーノ・インヴェルノと申します。神の使いたる、天使様にお会いできて、恐悦至極に存じます。」

「あぁ。そんなに固くならないで下さい。こちらは助けて頂いたのですから。」

「わかりました。ですが、天使様と呼ぶことだけは、御容赦ください。」

「わかりました。呼びやすいなら、それで構いません。それでは、本題に移らせて頂きますね。まずは、私の本来の役割の一つである、世界の現状の説明からです。」

「世界の現状ですか。何が起こっているのでしょう?」


「この世界は、何者かに襲われています。」

「何者かに。ということは、天使様でもわからないと?」

「その通りです。私の使命は、異常をいち早く察知する事です。私はこの星が産まれた時から、星中の水にアンテナをめぐらしているのです。私は水ですので、他の天使より、変化に敏感なのです。」

「なるほど。他から影響を受けやすい分、侵食されるもの早かったのですね。」

「話が早くて、助かります。動物の悪意ですら感じる私は、数か月前に、微かな異変を感じました。もちろん、すぐに他の天使達に知らせましたが、なにぶん正体を掴めずに、なんとなくといった不確定なものでした。」

「それじゃあ、他の天使も動けないですね。何を正せばいいのか、分からないんですから。」

「その通りです。そしてある日、その微かだった異変が強力になり、世界中のアンテナを通して流れ込んできたのです。」

「まるでウイルスだですね。」

「そして気付いたら、魔法結晶に閉じ込められ、魔獣の核とされてしまいました。私の力を徐々に吸い出していき、抵抗する力は低下するのに、魔獣は強くなったのです。」


「ところで、人族の国内で、魔獣の活動が活発になっていますが、その異変が原因でしょうか?」

「おそらく。魔法結晶の中にいた時に、強い殺意、嫉妬、欲望等の、所謂いわゆる、負の感情と言われるものを、強く感じました。それが、魔獣の理性を失わせているのでしょう。」

「ふむ。筋は通りますね。天使様は本当に心当たりは無いのですか?」

「あいにく。私も産まれて数億年経ちますが、初めての経験です。ですが、影響を受けやすいといえども、天使である私に害を与える存在です。弱いとは思えません。」

「つまり、最低でも天使級という事ですね。」


「他の天使様達は、無事でしょうか?」

「・・・連絡がとれませんね。きっと異変と戦っているのでしょう。」

「他の天使様は、何名いるのですか?」

「あぁ!言い忘れましたね。この星には、“神の○○”とよばれる場所が、各大陸ごとに2つ存在します。今の人族の国ですと、“神の腕”がそうです。我々天使は、そこに神殿をもっていて、星を守っているのです。つまり、私を含めて、10天使ですね。」

「ちょっと多いですね。」

「それぞれの役目が違うからなのですよ。神の意向というやつです。」


「それでは、長話もなんですので、質問が無ければ、助けて頂いた御礼をさせて下さい。」

「私は特にありません。」

「俺も無いです。」

「キュ。」

「では、何か欲しいものはありますか?水に関するものしか、あげられませんが。」

「はい!俺は、魔獣が欲しいです!テルのユキみたいな、親友になれる奴を紹介して下さい!」

「ウラガーノさんは、魔獣ですね。そうですねぇ。では、この子を紹介します。」


天使は、一度大きく翼を動かして、俺達との間で翼を重ねた。一瞬の光のあと、翼をどけるとそこには、スライムがいた。俺達は、思いっきり、顔を歪めてしまう。さんざん苦労させられた、剣を使うものには天敵のスライムだ。


「私には、化身の様な存在のスライムが数匹いるのです。そしてこの子は、それらの子供です。生憎、私の化身ではありませんが、他のスライムよりかなり高い素質を秘めています。知能もありますので、きっと良い友好関係が結べますよ。見た目は普通のスライムですが、一応、聖獣の部類に入ります。」


天使様がそう言うと、スライムは「ピー」と鳴いて、ウラガの胸の中へと消えて行った。ウラガの胸には、水とスライムをモチーフにした様な紋様が刻まれていた。ウラガは非常に悩ましげな表情になっていた。スライムだけど、聖獣なのだ。嬉しくないといえば、嘘になる。


「・・・ありがとうございます。」

「次は、ユキちゃんですね。あなたは力が強すぎて、コントロールに苦しんでいるみたいですね。」

「え!そうなのかユキ?気付いてやれなくて、ごめんな。」

「キューー。」

「この子も潜在能力が高いですね。水の上位精霊なので、私との相性もバッチリです。そうですね。奮発して、私の力を少し分けましょう。力のコントロールも、感じ取れるはずです。」


そう言うと、天使様はユキへと抱きつくように、大きな翼で包みこんだ。水色の光がしばらく続いたあとに、翼が広げられて、ユキが出てきた。特に変わった様子もなく、白いフワフワが浮いていた。


「キュー。キュ。」

「え?疲れたから、俺の中で休む?うん。わかった。ゆっくりしてくれ。」

「心配いりませんよ。私の力を受け入れて、すこし体調が崩れているだけです。数日もすれば、体調は良くなります。あとは、力の使い方の練習をさせてあげて下さいね。」

「わかりました。とりあえず、大事はないようなので、安心です。」

そう言うと、ユキも俺の胸に飛び込んできて、俺の中に消えた。


「最後に、テル君ですけど・・・。ウラガーノさん。少し二人にしてくれませんか?」

「わかりました。」

素直にウラガは俺達から離れて行った。俺の秘密に関する事だと、察してくれたようだ。


「いらぬ気遣いでしたか?」

「いえ。ですが、ここを出た時には全て話す約束をしているんです。ですねで、今驚かせることにならなかったので、配慮に感謝します。」

「そう言って頂けると嬉しいです。ところで、あなたは神様と縁がありますね?そして“オール・フォー・ソード”を貰った。」

「さすが天使様ですね。私は転生者なんです。死んだあと、この世界の神様に拾って頂きました。まだ手紙でしか、やり取りしていませんけどね。」

「なるほど。あの方らしいです。では、私の与えられるスキルや魔法では、意味がありませんね。神の与えたスキルの前では、おもちゃも同然です。それにスキルを得ようと思えば、御自分で取れそうですしね。」

「そうなんですか。私にはいまいち良く分からなくて。」

「まぁ、そんなもんだと思っていて下さい。では、私からはこの剣を授けましょう。」


天使様は先ほどと同様に翼を重ねた後、青い光と共に、真っ青な剣を出現させた。


「これは、“水の一振り”と言います。切れ味は保障しますよ。それに水でできているので、刃こぼれしません。そして魔法が込められているので、魔法剣ですね。」


■水の一振り:攻撃力 最大10,000 耐久∞ 【水神の加護】


俺は【鑑定2】で剣を確認した。攻撃力がおかしなことになっている。俺は、勢いよく天使に視線を向けた。


「あ。わかりますか?水神って言うのは、私の事なんです。といっても、人がそう呼ぶだけで、神ではなく天使なんですけどね。神だなんて、おそれ多くて、困っちゃいますよ。」

めちゃくちゃ恥ずかしそうだ。なんだか、もじもじしている。そして、問題なのは、そこじゃねぇ!


「ちなみに、攻撃力は最大値での値です。普段は攻撃力500くらいですかね。魔力を加えると、攻撃力が上がる仕様になっています。そして、念じれば出し入れ自由です。」


天使様がそう説明すると、“水の一振り”は溶けるようにして、俺の右手の甲へと消えて行った。手の甲には、水滴の様な一枚の花びらの紋様が刻まれた。俺はさっそく、剣をイメージすると、花弁から水が溢れて、一瞬で剣が手の中に収まった。超便利である。


「ちなみに、それは神の秘宝と呼ばれるものです。知識のある人に見せると、厄介な事になるのは確実ですね。最悪、腕を切られるかもです。」

「そんな爆弾発言、聞きたくなかった。」

天使様はニコニコしていたが、俺はまた誰にも言えない秘密が増えたことで、頭を悩ますのだった。いっそ、今聞いといて良かったのかも、と無理やりプラス思考へもっていくのに苦労した。


■ステータス

テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル32

体力:333  魔力:331 筋力:207

速度:145  耐性:74  魔耐:69

召喚獣:氷の精霊【ユキ】

神の秘宝:水の一振り

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ3】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】【甲羅割り1】【兜割り1】【魔力回復1】【魔力上昇1】【投擲2】


■ステータス

ウラガーノ・インヴェルノ 男 人族 19歳 レベル32

体力:420 魔力:76 筋力:258

速度:82 耐性:132 魔耐120

召喚獣:水の聖獣

スキル:【ハイシールド】【交渉1】【鑑定2】【構造把握2】【解析1】


世界の秘密に少し触れる回になりました。一応、作者のなかではラスボスも考えてはいるのですが、どこまで出していいものやら。

テル君達は、なんだか凄いものを貰えて良かったね。

(*´ω`*)

次回は、ダンジョン脱出と王都凱旋の予定。

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