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明けましておめでとうございます。

ちょっと季節外れ・・・しょうがない。


ブオーーーーン♪


一晩ぐっすり眠った翌朝、俺は船の汽笛の音で目が覚めた。

何事かと思い、すぐさま装備を整えて部屋を出る。

装備と言っても、簡単な胸当てや、靴を履くくらいなのですぐに終わる。


自室から飛び出したところ、ちょうどウラガや皆も出てきたところだった。


皆の顔を見て冷静さを取り戻した俺は、すぐさま【周辺把握】を発動させる。すると、まだ距離はあるが、どうやら『神の島』へと近づいたらしいことがわかった。


「到着するみたいだ。」

「意外と早かったな。」

「ご飯食べれるかなぁ?」


俺の言葉で皆も落ち着いたようだ。すぐさまグラスが朝食へと意識を切り替える。確かに今日は会議だけかもしれないが、飯抜きは辛い。


「とりあえず王のところへ行くか。」


今日の予定は聞いているが、まずは王の元へと向かのが先決だろう。ということで、俺達は王の部屋へと向かった。


コンコン♪コンコン♪


木製のドアを数回ノックすると、中からドワーフの騎士が声をかけてきた。


「テル・キサラギです。」


俺は名前を名乗るとすぐに扉が開かれた。そして中へと通される。今まで部屋にいた騎士は俺達と交代するかのように、部屋から出て行った。


俺たちは王の部屋へと入る。すでに王は身支度を整えており、いつでも出立できるようであった。


「おはようございます。」

「うむ。おはよう。今朝食を持ってくる様に言ってある。そなたらの分もじゃ。」


王がそう言うやいなや、コンコン♪とドアがノックされ、カートに乗せられて、食事が運ばれてきた。


王の部屋には執務で使うのか、会議でもできそうな大きめの机が用意されているので、そこに料理が並べられる。俺たちは王と共に、食事を開始する。


「予定より早く着いたようでの。それでも遅れるわけにいかんから、さっさと食うぞ。」


王がそういうので、俺達も無駄話をせず、ちゃっちゃと食事をとった。ちなみに、今頃騎士たちも朝食をとっているらしい

食事も終わり、最後のデザートとしてぶどうの様なフルーツを食べていると、王が追加の予定を伝えてくる。


「会議の前に、他の王へと面通しをする。確か、エルフの王以外とは知り合いなのじゃな?」

「はい。。人族、獣人族、魔族の王たちには、良くして頂きました。」

「なるほどの。ではエルフ王を最後にしようかの。そのほうが時間の調整がし易いのでの。」


ブオーーーーン♪


「お、着いたようじゃ。いいタイミングじゃの。行くぞ。」


そう言うと王はスッと立ち上がる。俺達も王と一緒に部屋を出て、船の出口へと向かった。


「おぉ・・・お?」


船から降りたそこには、小さな小島が浮かんでいた。直径500mも無い小島で、そこから五本巨大な桟橋が伸びており、各国の船が止まっていた。


時刻はまだ夜明け少し前。太陽は出ていないが、世界がほんのり白んできたくらいの時間帯だ。


そして注目するべきが、島の中央にそびえる巨大な桜だ。満開の桜が、風になびいてピンク色の花びらが舞っている。とても美しく、見とれる光景だった。


「あれ?でも会議って1月1日だよな?季節が?」

「『神の島』には季節などない。というか今年は椅子すらないのか?前代未聞じゃなw」


俺の疑問にドワーフ王が笑って答えてくれた。過去に、机と椅子だけの会議があったと笑い話として語り継がれるのに、今年は椅子すら無いのだ。いい土産話ができたと笑っている。


俺たちはドワーフ王に連れられて、巨大な桜の下へとやってきた。すでに他の王族やその護衛が座っている。


よく見ると、桜の下には巨大なレジャーシートが敷かれている。そして思い思いのお菓子やお茶が並べられていた。


「どう見てもお花見・・・」


俺は年に一度の会議だと意気込んできたのに、ついてみるとなんとも、ほのぼのした雰囲気で、気が抜けてしまった。


「おお!テルじゃねーか。元気そうだな!」


そう話しかけてきたのは人族の王だ。


「その節は、意識がなく大変失礼しました。さらに色々と便宜を図って頂いたそうで、感謝します。」

「相変わらず堅苦しいなwいや、無事ならいいんだ。事情はわかっているからな。」

「人族の王よ。此度こたびの援助、誠に感謝いたす。」

「ドワーフ王。無事で何よりです。最も近い隣国として、今後も助け合っていきましょう。」

「もちろんじゃ。わしらに出来ることは何でも言ってくれ。感謝を返さねばの。」


ドワーフ国は、火のダンジョンによる結界で、ほぼ監禁状態、食糧難に陥っていたのだ。それを他国の援助でなんとか切り抜けられた。その御礼の話をしているようだ。


「ふむ間に合ったようじゃのドワーフの。」

「おぉ、獣人の。そなたの国からの援助も助かった。特に甘いモノは腹だけでなく、心も癒やされたと評判じゃった。さすが美食の国じゃの。」

「それは良かったわい。まだまだ大変じゃろう。しばらくは甘いものを送ってやるわい。」

「それは助かる。少し後になるが、お返しに、腕の良い鍛冶を遣わそう。修繕が必要なものは教えておいてくれ。」


獣人族の王である亀さんと、ドワーフ国の王は付き合いが長いそだ。人族の時より中が良さそうというかフランクに話している。というか、ふたりとも話し方が似ている。


「おねーちゃん!急にいなくなるから、びっくりしたじゃない!」

「・・・ごめん。」

「手紙だけ残して!本当に心配したんだから!」

「・・・ありがと。」

「もう!!」


アンの妹である魔族の国王は、姉達が突然消えた事についてとても心配していたらしい。情報として安否は伝わってくるが、実際に顔を見ないと安心できなかったようだ。薄っすらと涙を浮かべて、姉であるアンに、ポカポカと殴りかかっている。かわいい仕草だ。


「もし。ご無沙汰しておりますじゃ、魔族の王よ。」

「あ!・・・こほん。ご無沙汰していますドワーフ王。大変でしたわね。」

「えぇ。本当に。ですが貴女の姉上たちのおかげで、信じられないほど早期なダンジョン攻略が成し遂げられ、ドワーフ国としては姉上方に感謝しております。また魔族の国からは衣服や布、生活魔法という稀有な魔法結晶を譲って頂き、とても助かりました。」

「姉がお役に立てたようで、私も嬉しく思います。後ほど生活魔法の魔法結晶の使い方や使い心地を教えて頂けますか?今後の研究の参考にさせてくださいませ。」

「もちろんですとも。」


魔族の国は、生活魔法の魔法結晶という、普通のダンジョンでは出なかった魔法結晶について研究を行っているようだ。何ができるのか。どれくらいの威力が出るのか。その情報収集をしたいそうだ。


「エルフ王。此度は、貴国の騎士たちも支援物資を届けてくれてとても助かった。薬草は特に重宝した。感謝しておる。」

「いえいえ。いいのよ。必要な薬があれば言ってね。ところで、うちの騎士たちは帰ったかしら?」

「重ねて感謝を。騎士たちなら、我らの出発と同時期に王都を出たので、今頃ドワーフ国の西の方かと思う。」

「そう。もうちょっと時間がかかるのね・・・。」

「ダンジョンかの?そこで、彼らを紹介させて欲しい。此度の危機を救ってくれ、また他3国でもダンジョンをそれぞれ1つ踏破した強者じゃ。」

「テル・キサラギです。そしてこちらが仲間の~~」


俺たちは順番にエルフの王へと挨拶する。エルフ王は、老婆だった。てっきりエルフだから若い人かと思ったのに、見た目はちょっと長身な、普通の老婆だが、服装が変わっている。というかどう見ても着物だ。


身長170cmくらいで、細身の体に、緑を主体にした色鮮やかな花が散りばめられた、見事な着物を着ている。髪は焦げ茶色。緑のかんざしがとても映える。顔はシワが入っているが、しっかりした喋り方で、背筋も伸びている。


めちゃくちゃ年齢が気になる。


さすがに王に年齢を聞くこともできないので、俺達は無難な挨拶をしていく。


「そう。貴方がたがそうなのね。ちょっとエルフの国で困ったことが起こっているの。お話、聞いてくださる?」

「もちろんです。」


そう返事を返した時、一際大きな風が吹き抜け、桜が大きく揺れた。


そして海の果てから、ちょうど太陽が顔を覗かせる。


初日の出だ。


そして日の出と共に会議が始まる。


とりあえず俺たちはエルフ王と別れて、自分たちの警護する位置へと移動する。


位置は、この国の地図同様、各国の王が五角形の頂点に座り、真ん中に巫女であるアンが座っている。その横に、グラスとアン。俺とウラガはドワーフ国の王の後ろだ。


そしてクルスが司会進行を始める。


「それでは、恒例に従いまずは挨拶より始めさせて頂きます。宜しいですか。」


クルスのいつにないハキハキとした喋り方に驚きつつ、俺は会議に集中する。


「では。明けましておめでとうございます。」

「「「明けましておめでとうございます。」」」


俺達護衛も一緒に新年のあいさつを行う。こうして会議が始まるのだった。


会議まで進めませんできた。各国に挨拶するのを省略しても良かったのですが、なんとなく書かなきゃと思ったのです。

テルくんは、やっとエルフ王に会えました。女性に年齢を聞くなんて、ましてや王様。常識はあるようです。

次回は、会議の予定。

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