初めてのエルフさんか。ちょっと緊張するな。
王様との話。
食事も終わり、俺達はお茶を飲みながら王様の質問に応える。
どんな敵が出てきたのか。罠はどんなだったのか。どうやってクリアしたのか。王様はかなり好奇心旺盛なようで、質問が止まらない。
王様の好奇心のおかげか、食事中に感じた悔しい思いや、胸の思いも少しは薄れてくる。
そして話がラスボスとの話になって、女神様の話へえと移る。
「あ。女神様からこれを貰いました。」
俺は女神から別れ際にもらった、火の魔法結晶を渡した。王様だけでなく、側に控えていた官僚の人たちも驚きを隠し切れないようで、目を丸くしている。
「触ってもいいかね?」
と言いながらすでに火の魔法結晶を持ち上げて、色々な角度から見ている。机の上に置かれていたロウソクの火に翳したりしている。
「これなのだが、譲ってくれないだろうか。その・・・財務大臣。」
「申し訳ありません。此度の件で、かなりの資材を投じてしまいました。復興を考えると・・・国宝数点ならなんとか。」
「もし貨幣が良いなら、少し時間をくれぬか。必ず用意するゆえ。」
王と財務大臣は申し訳ない顔を向けてくる。どうやら王はこの魔法結晶をどうしても欲しいらしい。
「私は無償で渡しても良いと考えています。」
「無償だと!?」
俺の言葉を聞いて、アンと王らは今日一番の驚きの顔をしている。
「テル!ちょっと何言ってるの?これほどの魔法結晶よ!幾らすると思っているの!」
アンは、これまでおとなしくしていたのに、堰きを切ったかのように、俺に詰め寄ってくる。
元冒険者であるアンは、成功報酬や獲得したものについて、お金の管理はしているらしい。それなのに、俺がタダで渡すことに納得できないようだった。
「俺は金には困ってないからなぁ。ちょっと王様失礼しますね」
俺はアンを連れて、部屋の端っこに移動する。そして人族の王からもらった金について、説明した。アンは驚きで声も出ないようで、しきりに金について俺に確認してくる。
俺も金は冒険で使うのなら、皆に分配してもいいと思っている。その話を聞いて、アンは無償で魔法結晶を譲る事に同意してくれた。
「失礼しました。こちらの話はつきましたので、無償でお渡しします。その変わりといいますか、いくつか聞きたいことがあるのです。」
「おお!すまぬの。ワシに応えられる事なら何でも応えぞ。」
「まず1つめ。どうしてこの魔法結晶が必要なのですか?」
「それはの、~~」
王が言うには、今ドワーフ国は冬真っ盛りなのだそうだ。普段ならダンジョンに行き、魔法結晶を蓄えて、冬用の暖房に使うのだそうだ。しかし今回の騒動で備蓄が心もとないそうだ。せっかくダンジョンが消えたのに、凍死してしまう。この魔法結晶があれば、王都まるごと、温めても余裕があるそうだ。
「では2つ目。この国にもう一箇所、神の名のつく場所があると思うのですが、心当たりはありますか?」
「あるぞ。ドワーフ国の北の果て。【神の御心】と呼ばれる場所がある。」
【神の御心】か。次の行き先が決まったな。
「だが今の季節は行けないぞ。雪が積もっていて道が塞がっておる。代わりにエルフの国を勧める。あそこには、【神の吐息】があるそうだ。」
王はそう言いながら、近くにいた官僚に視線を向ける。どうやら他国との情報交換を一手に担っている、いわゆる外交官のようだ。彼が王の言葉を肯定する。
「ちょうど今、エルフ国の支援隊が帰国の準備をしております。話の場を持ちましょう。」
「うむ。向こうの都合もあるであろう。すぐに動け。」
「は!」
外交官は頭を下げると、すぐに部屋を出て行った。
「最後の質問なんですが。ダンジョンクリア後、呼びに来るのが早かったのですが、どうしてですか?」
「そんなことか。先に出てきた隊長が早馬を出したのだ。そして王城も、というか王都自体が揺れていたからの。何かあると思って用意はしておいたのだ。」
ダンジョンが再生するために、一度消滅するのだが、その振動がかなりあったらしい。王は直感的に、ダンジョンに異変があったと思い、色々と用意したそうだ。
言葉には出していなかったが、おそらく俺たちが失敗して、ダンジョンに影響があったと考えて、追加の兵士も駆けつけていたのだろう。王が一瞬見せた苦笑いがそう言っていた。
俺は最後に当たり障りのない質問をすることで、話の区切りを良くしようと思ったのだが、ちょっとミスったかもしれない。
俺がちょっと次の言葉に困っていると、クルスが隠れて欠伸をしていた。それを王が目ざとく見つけたようだ。
「おぉ。すまんな。疲れていたのに。そろそろ部屋の用意ができたかの?」
執事のドワーフが肯定する。
「お部屋にご案内します。」
俺たちは部屋に案内される。
身長が小さいドワーフの客人用ではなく、他国の貴族を招く用の部屋に案内された。急ピッチで用意されたとは思えないような、綺麗な部屋だった。
俺たちはベッドへ腰掛けると、そのまま倒れこむようにして眠りについた。王に呼ばれて気を張っていたので我慢出来ていただが、どうやらかなり疲れていたようだ。
翌朝、というか昼まで俺たちは眠った。俺達が起きるまで、寝かせてやれと王に言われたようで、執事の人が対応してくれた。
「昼食の後、エルフ国の使者との会議を予定しております。急ですがよろしいですか?」
もちろん俺たちは問題がないので了承した。
「初めてのエルフさんか。ちょっと緊張するな。」
エルフがどんな姿なのか、俺はワクワクしながら昼食を取るのだった。
本当は移動まで行きたかったのに。執筆が遅い・・・
テルくんは、エルフさんに 夢を持っているようです。どういうエルフさんにしようかなぁ。
次回はエルフさんと移動の話の予定。