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この罠も、序盤に出てきても良かったんじゃないのか?

61階層の話。

61階層からは、鍵探しのフロアだった。


最初61階層に足を踏み入れた時、いつもと変わらなり迷路が続いていた。そして目の前には、一匹の真っ赤な鍵が浮いていた。


「あれは・・・敵か?」

「あ、逃げたぞ。」


俺達が判断に迷っていると、一匹の鍵はスーっと空中を飛んで逃げていったしまった。


「今まで逃げる魔獣って少なかった・・・いや、居なかったよな?」

「そうね。たぶんこの部屋のキーアイテムじゃないかしら?」


ダンジョン経験者のアンがそういうのだから、探すしかないだろう。


俺たちは迷路の中を歩き始めた。


もちろん魔獣が出てくる。


今回出てきた魔獣は、輪っか状だ。サイズも太さも、ドーナッツを連想させる。だがそのドーナッツの中心に赤い魔法結晶が浮いている。


その魔法結晶から時計の針のように、2本の赤い管が繋がっているのだ。


「なんか、弱そう。」

「そんなわけ無いだろ。」


ウラガが【大盾】を発動させる。敵の攻撃に備えているのだ。


するとドーナッツは回転し始めた。上下左右、ものすごい速さで回転している。


そしてその回転が高速になりすぎて、もう見た目は球体だ。その球体から熱線が照射された。


「ビームかよ!」


それはアニメや漫画で見た、まさにビームとしか言えないものだった。


ウラガの【大盾】によって弾き飛ばされたビームは、迷宮の壁に直撃する。


ジュウゥ


ウラガの【大盾】も、迷宮の壁も熱線によって急激に熱せられ、赤く変色し、溶け始めたのだ。


「ユキ!」

「シズク!」


俺とウラガはそれぞれの精霊、神獣へと声をかける。


シズクは【水魔法】を発動させてウラガの【大盾】へと水の膜を局所的に貼る。その膜もあっという間に水蒸気になるが、シズクはその水蒸気すら集めて、再び【大盾】を守るための膜へと利用する。


迷宮の中から新たに水を集めるよりは、魔力の麺でも効果的だが、いかんせん魔法を使い続けることになるので、きつい。


一方、俺とユキは【土の一振り】に【氷魔法】を付与する。


俺は【土の一振り】に魔力を込めて、剣の切れ味を増大させる。準備ができた俺はウラガの【大盾】から抜けだして、高速回転するドーナッツへと斬りかかった。


まるで脂肪の塊でも切る時のような、ブヨブヨした感触が帰ってくる。


「チッ。なかなか切りにくいな。」


魔力を込めて切れ味を上げ、更に【氷魔法】を付与しているのに、スパっと切れない。よほどの熱が込められているようだ。


おそらくだが、あの魔法結晶だけでなく、ドーナッツ自体が防御と攻撃に使う熱量を貯めこむ機能があったのだろう。


「つっても切るけどな!!」


俺は一旦剣を引いた後、更に力を込めて【スラッシュ】を発動する。


それで球体になっていたドーナッツを真っ二つに切り裂いた。これは【遠隔操作】だけでは切れなかっただろう。それほど厄介だった。


「大丈夫か?」

「あぁ。シズクが頑張ってくれたからな。」


ウラガはシズクを右肩の上に乗せて、優しく撫でていた。シズクは少し疲れた様子で、ウラガへともたれかかっている。気持ちよさそうだ。


「次はアタシがやるよ!ちょっと切ってみたいわ。」


俺が切り飛ばした姿を見て、アンがやる気を出している。


なに、アンってずっと暇だったから戦えるのが嬉しいの?戦闘狂なの?コワイ。


ということで、次に出てきたドーナツはアンが切り飛ばしていた。火の魔法結晶を得意な付与を用いて、大斧に【火魔法】を付与している。吸熱だろうか。大斧が青白く変色している。


そんな大斧だが、やはり回転するドーナツは切りにくいようだ。両手に持っていた大斧の片方を床に刺して、もう片方を両手で持つ。そして両手で一気に大斧を振り下ろすことで、ドーナツを切り飛ばしたのだ。


俺とアンがドーナツを退治して、ウラガが守る。


「あ、あっちに鍵があります。」


戦闘に専念できるようにと、グラスが【空間把握】や【周辺把握】で周りを索敵してくれていたようだ。


迷宮の中を鍵を追って駆けまわる。


「さて。俺の無駄な努力が実を結ぶな。」


鍵自体が真っ赤になっているので、普通に触れると手が溶けるだろう。


俺はフォーク型の剣を作り出し、それを6本組み合わせて、鍵を閉じ込めた。


「「「あははは」」」


俺のちょっとしたアレンジに、他のメンバーが笑っている。そりゃ実用的じゃないけれども!いいじゃないか。役に立ったんだから!


鍵を確保したまま62階層へと続く階段へと行くと、階段前には火の壁ができていた。真ん中には小さな穴が開いている。


その火の壁に向かって、捕らえていた火の鍵を押し込む。すると鍵が火の壁に吸い込まれる。


一瞬、赤く輝くと、火の壁は空気に溶けるように消えていった。アンが言った通り、キーアイテムだったらしい。


「この罠も、序盤に出てきても良かったんじゃないのか?」


俺はダンジョンの下層にあたるフロアで、こんなに簡単な仕掛けであることに少し胸騒ぎを覚えながらも、突っ込まずにはいられなかった。


そして俺たちは62階層の階段へと歩いて行く。


全開はスパっと切ったのに!またダラダラと。

というか、難易度が優しくなってきている。あとちょっとの我慢。

テルくんは胸騒ぎという名のフラグを立てています。次回、回収しないと。

次回は62階層以降の話の予定。

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