魔法がダメなら剣でってな。
54、55,56階層の話。
ちょっと短め。
54階層は、俺とウラガが頑張ってなんとか攻略出来た。
ウラガの【大盾】はドーム状に形成しても、数カ所に穴を開けることができていた。おかげで内部で爆発が起こっても、威力の逃げ場を確保できた。
だが穴を開けながら強度を保つ。なかなか形成が難しいようで、作るのに時間が掛かるし、すごい集中が必要で、ちょっと疲れるようだ。
空気すら液体に帰るほどの冷気を発する花は、俺が切り飛ばした。【空間把握】を使えば赤い花を避けて、青白い花のみを切るのは楽勝だ。
しかも剣のサイズを買えられるので、今はナイフサイズにしている。【空間把握】と【土魔法】と【遠隔操作】。この3つを同時に使っている。ちょっとしんどい。
そして55階層も、俺とウラガによって事なきを得た。ちょっと花の量が多くて、モグラの魔獣が大量に湧いたくらいだ。
そして56階層。また洞窟タイプだ。
そこには、いわゆるモルボルが徘徊していた。しかもただのモルボルではなく、真っ赤な熱で形成されていた。
せまい迷路状の洞窟の中で、体長3m、足元には無数の触手がうごめいているのだ。気持ち悪いし、近づいただけで熱気がすごい。
というか、モルボルが触れた地面や壁は、茶色から赤色へと変化し、しばらくすると溶岩のように溶け出してしまう。生半可な熱では無いだろう。
「とりあえず、アンが作ってくれた紋章入の袋、携帯しろよ。」
アンが自動で吸熱の魔法を発動するよう調整した紋章が刻まれた袋に、魔法結晶を入れて、モルボルの熱を軽減する。
「とりあえず【水魔法】が良さそうだけど・・・いけるか?」
「キュー。」
ユキはあまり乗り気ではない返事を返してくる。今回だけでは終わらないんでしょう?と思っているらしい。
確かにユキが思うように、【水魔法】もしくは【氷魔法】を発動させて、赤いモルボルを倒せても、この後もどんどん出てくるだろう。しかも相性の悪い【火魔法】の神殿だ。水分を集めるだけで一苦労だ。流石に魔力が保たない。
「私がー」
クルスがそう言って【風魔法】でモルボルを切り裂く。だが切れた触手はすぐに体へと吸収され、切れたところから再生していく。
体を傷つけても、まるでスライムのように、周りがウネウネと動いて塞いでしまうのだ。
「それなら私が!」
グラスは【火魔法】の吸熱を発動させて、モルボルの熱を奪おうとする。だがその巨体に蓄えられた熱をすべて奪うなんて、到底出来るものではない。
「ガ!!」
やんちゃなモノリスのダイチが、【土魔法】で大量の土砂をモルボルに被せる。だがモルボルの体に触れた土は溶岩となって、体の中を移動して、まるで排泄物のように、後ろの地面へと押し出すのだ。
モルボルが反撃してくる。その大量の熱で作られた腕を、一斉に俺達へと振るうのだ。まるで鞭のような軌道で、俺達へと迫ってくる。
だがここはウラガとシズクのチームが、【水魔法】を付与した【大盾】で防いだ。モルボルのいる方向だけ守ればいいし、面倒な穴も開けなくていい。いつになくウラガは嬉しそうだ。
「さて。どうすればいいのかなぁ。」
「ここはアタシの出番のようね。」
アンはそう言って巨大な斧を2本取り出した。よく見るとその大斧の根本には、魔法結晶が埋め込まれている。しかも、薄っすらと紋章が刻まれていた。
「こんなこともあろうかと、作っておいたのよ。」
そいうと、クルスは大斧に取り付けた【火魔法】の魔法結晶に魔力を注ぐ。魔法結晶から発生した吸熱の【火魔法】は、紋章によって大斧へとスムーズに付与を与える。
その大斧をアンが軽々と振り回しながら、ウラガの【大盾】の外へと飛び出していく。
モルボルの触手がアンへと襲いかかるが、アンはそれを次から次へと切り飛ばしていく。
普通の斧なら、モルボルに触れた瞬間から、大量の熱が伝わって、持てなくなるだおる。しかも生半可な斧だと、溶けてしまう。そうならないように、【火魔法】の吸熱で保護しているようだ。
アンの一振り一振りが、空気をも切り裂き、ゴウゴウと唸りを上げる。
そしてついにモルボルの胴体まで近づいたアン。
「どっせーい。」
というどこか前世で聞いた様な掛け声とともに、2本の斧で持って、モルボルを縦一線に割ってみせた。
どうやら魔法結晶は魔獣の中心にあったようで、アンの攻撃によって砕け散っている。
魔法結晶を失ったモルボルあ再生すること無く崩れ落ちた。
「なるほどなぁ。魔法がダメなら剣でってな。」
アンの様に、モルボルに一切触れずに敵を倒せるかは分からないが、俺もユキの協力を得て、【土魔法】で作った大剣に【氷魔法】を付与するのだった。
もう火のダンジョン、スパっと終わらせます。アイデアがもうない!
テルくんは、アンの姿を見て、物理攻撃に移行するようです。
せっかくの固有能力ですもの。近接先頭もしてほしい。
次回は61階層以降の話の予定。