やっぱり、自由の身で吸う空気は最高だ。
盗賊さんとのバトル?一方的な退治?です。
「こっちのガキも威勢が良いじゃねえか。せいぜい抵抗してみせろ。こっちは5人。おまえらは2人か?俺たちの勝ちは確実だけどな。」
俺は、長々と御託を並べる盗賊を睨みながら、【鑑定2】を発動した。
■ステーレン:盗賊 男 年齢25 レベル26
他の盗賊も似たようなものだ。まだ何か言ってる。きっとお喋りなのだろう。サクッと戦えばいいのに。
盗賊達は俺に2人、エバさんに3人にと別れた。俺はじりじりと、敵の姿が馬車の中からも、良く見える位置に移動した。馬車の中の人には、自分の盾や木の板で入口を守るようエバさんが言っていたので、大丈夫だろう。
ネーロからも良く見える位置取りをした俺は、まだ喋り続けている男に向かって、【ステップ2】て急速に近づき、【二段突き2】で喉と胸を潰した後、【スラッシュ2】で止めをさした。もう一人の盗賊は呆気にとられている。俺はそれを見逃さず、同様にして始末した。
「なんだよ。口ばっかりじゃないか。ちょっとは強いところを見せてほしかったのに。」
馬車の前方では、まだエバさんが戦っている。俺は静かに馬車に乗り込むと、ネーロに向かって、封筒を差し出した。下の方だけ四角く切り取ってあり、なかの紙が見えている。
「おいネーロ。ここにサインしろ。サインすれば助けてやる。」
「な!?何を馬鹿な事言ってる、さっさとエバに加勢して来い!命令だ!」
ネーロが何か騒いでいる。俺は戦う前に、水に濡らした小さな布を耳に詰め込んでいた。なんちゃって耳栓である。
奴隷契約にある、“主人の命令は遵守する”という文言への対抗策だった。聞こえなければ意味は無い。
「耳栓してるから、おまえらの声は聞こえないんだよ、アホが。早くしないと、エバが死んでお前らも盗賊に殺されるぞ?わかったらさっさとサインしろ。」
「くそ!何の書類か知らんがサインしてやる!だから俺を助けろ!」
もちろん俺は聞こえていないが、ネーロは紙にサインした。すると一瞬輝いた後、一気に紙が燃え上がった。俺の首に巻かれた、黒いチョーカーは音もなく外れて、砂のように空気に溶けて行った。俺は馬車の中で、高らかに笑った。
「まさか!魔法契約書だったのか!?お前みたいな奴隷が、こんな短期間で買える代物じゃないぞ!?どうやって手に入れた!?」
「おまえはやっぱりアホだね。今は手に入れた方法より、契約の内容の方が大事だろうに。」
「!!そんな事は分かってる!何を書いた!命令だ説明しろ!」
「はぁ。奴隷の首輪が消えた時点で理解できるだろうに。俺はもうお前の奴隷じゃない事だけ教えてやる。ついでにエバさんを助けてやるよ。一応教育係としての恩があるからな。」
俺はそれだけ告げると、エバさんを助けに向かった。盗賊を後ろから【スラッシュ2】で切りつけ、【二段突き2】で腕と手首を攻撃して、武器を落とす。不意をつかれた盗賊は、あっという間に俺とエバさんに殺された。
殺した事を確認すると、俺はひとり先に王都へと歩き出した。エバさんが何か叫んでいるが、追っては来なかった。きっとネーロから離れるわけにはいかなかったんだろう。ちなみに、馬はさっさと村の方へ走り去っていた。飼い主の方へ戻ったようだ。
俺は晴れやかな気分だった。人を殺したというのに、後悔や恐れよりもまず、奴隷から解放された事が嬉しかった。
契約書の内容は以下の通りである。
・ “テル・キサラギ”(以下 契約主)を奴隷から解放する。
・サイン時より過去、契約主が負った全ての負債や責任を放棄し、現在の所有物を契約主に無償で提供する。
・以上はサインと同時に即時有効とする。
「やっぱり、自由の身で吸う空気は最高だ。」
俺は意気揚々と王都へと歩みを進めるのだった。
■ステータス
テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル15→16
体力:153→160 魔力:80→84 筋力:102→105
速度:73→75 耐性:40→72 魔耐:35→37
召喚獣:氷の精霊【ユキ】
スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定2】【スラッシュ2】【二段突き2】【地形把握2】【周辺把握2】【ステップ2】【遠見2】【夜目2】【交渉2】【鷹の目2】
やっと奴隷から解放されました!おめでとうテル君。
やっと次へと話が進むね。
次章は王都編です。上手く書ければ良いのですが。
次回は王都観光。の予定
(^ω^;)