追伸が一番大事って・・・
とりあえず、ここが何処かは置いておこう。
だってわからないんだもん。
ふと自分の服装を見てみると、綿で出来たシンプルな服と、同様にシンプルな長ズボンだった。色はどちらも、くすんだ茶色。はっきり言ってみすぼらしい。よくゲームにある、“布の服”だった。
トラックに撥ねられた時の、ちょっと小奇麗な服装とは、まるで違っていた。少し混乱するが、臭くは無いから、まぁいっか。
そんな不思議な現象が続く、あまりに突拍子もない状況に、思考がかなり投げ遣りになっている。いや、投げ遣りというか、問題を先送りしているだけなのだが。
それからもぼんやり色々考えていると、背後からボスンッと何かが落ちる音がした。
振り向いた足元には、先程まで無かった布の袋が落ちていた。どこにでもありそうな、薄い茶色のランドセル大の口を縛るタイプの袋だ。
「テッテレー♪如月輝は、布の袋を手に入れた!」
とりあえず、ゲームチックに言ってみたけどちょっと恥ずかしい。無理やりにテンションを上げる作戦は、やってみると虚しいだけだった。
そんなことより、絶対怪しい。だってさっきでこんな袋落ちてなかったはずだ。だが拾ったものは確認したくなるよねってことで、特に躊躇わずに中身を一通り出すことにした。
・手紙
・短剣
・堅いパン5個
・水の入った皮の水筒
・葉っぱ数枚
・金貨1枚
・銀貨10枚
「おぉ!!金だ!こっちは銀か!?本物じゃん!初めて金とか触ったよ。結構重いのな。貨幣サイズでも結構あるなぁ。」
思わず声に出して興奮してしまった。普段はもっと物静かな方なんだけど、さすがにテンションが上がっていくのがわかる。一通り金を堪能した後、一緒に入っていた手紙を読むことにした。それを読んだ後、その中身に絶句することになろうとは。
「拝啓。如月輝様。時下、益々の・・・。はじめまして、輝君。ちゃんと転生出来たかな?私は皆に“神様”とか言われてる者でーす。」
書き始めから、めんどくさくなって書き方変えてる。よっぽどの面倒くさがりか、短気なのだろう。そして本性はかなりサバサバしている気がする。
しかも自分で神様とか言ってるし。いちいち突っ込むのもしんどいからとりあえず全部読もう。
「君って事故で死んじゃったじゃん?でもあっちの神様的には、予定外だったらしいのね。それで、私のところにヘルプが来たの。あなたの魂を自然な形で転生させて欲しいってね。あっちの世界は転生システムとってないから、やるなら赤ちゃんからなんだけど、順番があるから数十年後になるんだって。神様にも過去を変えるのはすっごく難しいから、事故を無かった事に出来ないの。だから、こっちの世界に招待したってわけ。私も慈善事業じゃないから、とりあえずこの星を救うことを条件にOKしたの。いきなりで悪いけど、この世界をちょこっと救ってくれるなら、あとはブラブラ旅でもしてて良いからね。初期に必要そうなのは袋に入れといたから、上手に使ってね。
追伸・こっちからお願いするんだから、君に固有能力をあげるね。“オール・フォー・ソード”って言って、剣に関わる事なら何でも習得できる力だよ。かなりの大盤振る舞いなんだから。がんばってねー。」
こんなに短い手紙なのに、一気に疲れてしまうなんて初めてだった。
「追伸が一番大事って・・・」
これからの生活で一番重要そうな事が、一番最後に書かれていた。
神様ってやっぱり色んな意味で、人智を越えてるんだなぁ。