表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/214

何階層まであるんだろう。

49,50階層の話。


「はい。それではここでバターを挟みます。」

「ふんふん。」

「次にこの棒で生地を伸ばします。」

「結構硬いな。」

「そだね。がんばってー。」

「次は?」

「これを重ねて、伸ばしてー重ねてー。」

「地味だな。」

「はい。後は三角形に切って、丸めまーす。」

「後はオーブンだな。」

「そだね。後は【火魔法】で終わりかな。」


俺とウラガはクロワッサンを作っていた。生地づくりから始めたので、結構時間がかかってしまった。


【土魔法】で作った調理台の上で、マッチョの男が並んでクッキング。そういう恋愛もありだろう。ふたりともそっちの気は全く無いが。


そして、これまた【土魔法】で作ったオーブンで、クロワッサンを焼き上げる。ダンジョンの中だというのに、香ばしい匂いが立ち込める。


焼きあがるタイミングを見計らったように、グラスがお茶を入れてくれている。食べる気満々のようだ。


俺たちはテーブルで優雅にお茶の時間を取りながら、ウラガへと質問を投げかける。


「で、多層式ってのは、このクロワッサンみたいなもんだ。イメージできたか?」

「あぁ。この一枚一枚は弱っちいけど、剥がしてしまえば、次の一枚は無傷って訳だな。」

「とっても美味しいわね。」


アンが空気を読まない発言を入れてくる。長く幽閉してもらっていたので、焼き立てパンなど久しぶりなのだ。


「私もこんなパン初めて食べました!美味しいです!」

「美味―。」


どうやらこの世界にクロワッサンは無かったようだ。パンはあるのだが、それを層にするパイの知識は広まっていないのだろう。というか、大量のバターを使っているので、カロリーとしては恐ろしいほど高い。カロリーの概念もなく、冒険という運動をしている人には良いかもしれないが、理解されたら大問題になりかねない。特に女性陣からは怒られるだろう。


そして新しいレシピを発表したことで、アンに俺が転生者であることがバレる可能性がある。もうバレても良いような気もするが、まだ信頼関係が万全とは言えないだろう。もう少し様子が見たい。


「テルって、本当に料理が上手いわね。というか、こういう発想ってどうやって思いつくのかしら?」

「あはは。ありがとう。ところで、ウラガ、本題の【大盾】に応用できそうか?」


アンからの質問を強引にスルーしてウラガへと話を振る。アンは不満そうだが、俺が言いたくないのだと感じたようで、それ以上は追求されなかった。


「イメージはできたんだけどよ。これ、バターって溶けたんだよな?」

「?そうだけど?」

「【風魔法】とか使えれば、すぐに再現できるんだけどなぁ。ちょっとシズクと練習してくるわ。」


どうやら、【大盾】の層と層の間になにかを挟んで、後で抜き取る作戦のようだ。一番楽な【風魔法】はまだ習得していないので、シズクが得意な【水魔法】で代用するのだそうだ。


ウラガは【大盾】を小さく発動させて、シズクと共に修行に集中する。


俺たちは俺達で、各自の修行をしながらその日は終わった。


翌日。


「テル。ちょっと見ててくれよ。」


ウラガはそう言うと、シズクと共に三層の【大盾】を披露して見せた。まだまだ層が厚いが、完全に多層式になっている。


「で、水は抜けるのか?」

「まだそこまでは無理だな。というか、結構しんどい。」


ウラガによると、多層式は【大盾】というスキルを三回繰り返して、同時に発動しているらしい。完全に三層が独立しているので、一つの【大盾】では再現が難しいらしい。


俺の前世である、ビルのように、一つ一つの階を柱でつなげた様な形を取れれば、一回の【大盾】で済むのだが、それでは一層だけ剥がすのが難しいらしい。


まぁやりやすいようにして、このダンジョンをクリアした後に、修行すれば良い話だ。


ということで、一日をウラガの修行に当てた翌日。俺たちは49階層へと足を踏み入れた。


まるで青い雪が舞うように、大量の青白いシャボン玉がウラガの【大盾】にぶつかる。だがウラガは以前のように、いちいち修復したりはしない。


ある程度のシャボン玉を受けて、一番外側の【大盾】が壊れそうにあったら、そのまま【大盾】を解除してしまう。空気へと溶けるようにして消えた【大盾】に付いていた冷気の塊は、そのまま地面へと落ちていく。


水の層も同時に消すので、次の【大盾】が攻撃を防ぐのだ。


そして消えた文の【大盾】を補うように、残っている水層を2つに分割するように、新たな【大盾】を作り上げていく。


もちろん、モグラの魔獣による、内側の【大盾】についても同様である。修復はせず、薄くてもいいので、新しい【大盾】へと張り替えていく。


そうして49階層は、ウラガの新しい【大盾】によって、スムーズに攻略出来た。魔力の消費は激しいが、いちいち修復するために神経をすり減らす必要が無いので、ウラガもリラックスして行動できるようだった。


そした50階層。今度は、赤いシャボン玉と青白いシャボン玉、この両方が大量に浮かんでいた。


だが俺達は止まること無く、進んでいく。


赤と青。温度がかなり違うシャボン玉が【大盾】の同じ所にぶつかることで、急激な温度変化が生じる。これによって、【大盾】はさらに割れやすくなったが、割れるのを前提に作っているので、慌てる必要がない。


ただ、モグラの数が増えて、灼熱の弾丸と、冷気のマシンガンを撃ってくるのが、かなり面倒だった。


ウラガ以外のメンバーは、モグラに専念して、攻撃される前。つまり初めて地面から顔を出した瞬間に、一撃で仕留めるよう心がけた。


俺も【土魔法】で作った振動する砂ナイフで、確実にモグラを切り捨てていく。


何発か被弾したが、【火魔法】によりすぐに熱を中和することで、ダメージの低下を図ることができた。


やはり魔力の消耗が激しいようで、50階層をクリアしたウラガとシズクは、若干魔力切れになりかけていた。


まだ時間的には昼すぎなのだが、ここは無理せず、休憩することにした。俺は【光魔法】により魔力をウラガに譲渡して、多少の回復を促した。そうしないと、女性陣の怪我を治すためにウラガが【光魔法】を使えないのだ。


こうしてウラガとシズクの活躍によりなんとか50階層までクリア出来た。


「やっと50階層クリアか。何階層まであるんだろう。」


ダンジョンの成長はすでに緩やかなものに変化しているはずだが、先が計算出来ないと、精神的に疲れるんだがなぁ。とテルはこれから先のことに頭を悩ますのだった。




やっと50階層まで来ました。

男の料理回。イメージの確保のためとはいえ・・・。ふぅ。

50階層は、スパっと切っちゃいました。話が進まないので。

テル君はいつも考えすぎですね。何階層まであるのか。作者ですら適当に計算しているというのに。

ということで、次回は51階層以降の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ