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出来ることから【大盾】の改良をしよう。

45階層、46階層の話。

そして45階層は、松明の数が2本に増えていた。一方は普通の赤い火が灯されているが、もう一方は白い炎が灯っていた。


白い炎の方は、熱くはなかった。というか冷たかった。きっと吸熱系の松明だろう。さすが魔法の世界。ファンタジー全開だ。


それに合わせるように、火を付けたり、凍らせる箇所が合計40箇所にのぼった。俺たちは二手に分かれて、効率よく行くことにした。すれ違うときには、情報交換を交わす。


だが結局6時間もかかってしまった。3km四方のダンジョンだが、中身が迷路になっている上に、番号が端から端へと飛んでいたりと、面倒すぎた。


遅めの昼食をとった俺達は、46階層へと挑む。


「お!広い場所に出れたぁ。」


もう狭い場所は懲り懲りだったので、比較的天井が高く、見晴らしの良くなった46階層は、気持ち的にも楽になった。


「あの浮いてる玉は何でしょうか??」


視力の良いグラスが一番最初に気づく。指差す先には、野球ボールサイズの赤い玉が浮かんでいた。まるでシャボン玉のように、ふわふわと、風に揺られて不安定に浮いている。


「どう見てもこのフロアの仕掛けだよなぁ。」

「どうせ爆発系だろ?爆発するとわかってたら、耐えられる。」


ウラガが自信満々に断言する。そしてぶ厚めの【大盾】を展開する。念の為に強い衝撃が来ても耐えられる仕様にしたようだ。


俺たちは、ドーム状の【大盾】に守られながら46階層を進んでいく。


しばらく歩くと、案の定風に流された赤いシャボン玉が【大盾】にぶつかってきた。


バシャ。


「??爆発しない?」


ウラガが一番驚いたようだ。自分の予想に反して、シャボン玉は爆風を発生する事も鳴く、水風船が割れた時の様な、音を立てて割れた。【大盾】に触れただけで割れるなんて、かなり柔らかい素材で覆われていたようだ。


「溶けてるー。」


クルスがそう指摘する。俺達も赤いシャボン玉が割れたところを見ていたのでわかる。シャボン玉は、中身の赤い液体?を【大盾】に撒き散らす。そこから煙が上がり、【大盾】が赤く変色し、ジュウウと音を発てている。明らかに溶かされていた。


「やばいやばい。どうにかしてくれ。」

「はい!今魔法で!」


珍しくウラガがうろたえる。ウラガの助けに応えるようにグラスが【火魔法】の吸熱を発生させて、【大盾】の外に広がる赤い液体の熱を奪った。


グラスの魔法が届いてからものの数秒で発煙は止まり、赤かった液体?も空気へ溶けるように消えていった。


「これはやばいよ。熱の形状まで変えて来やがった。」


今までは、熱という漠然としたものを、土に加えて溶岩にしたり、小さな玉に押し込んで爆発させたりしていた。それを、熱そのものに形を与えている。


前世の物理現象ではありえないが、ここは魔法の世界。イメージで世界を変える世界。なんでもありのようだ。


そしてウラガが焦るのもわかる。これはウラガの【大盾】と相性が悪い。ウラガの【大盾】は基本的に、瞬間的な攻撃を防ぐのに優れている。だが熱の液体の様に、常時攻撃される系統の攻撃には弱いのだ。


一度【大盾】を発生させれば、後は維持だけで良い素晴らしい術だが、その整形や修復にはかなりの神経と魔力を使う。いくらウラガが固有能力【ハイガード】を持っていても、カバーできる範囲は限界がある。


そんな攻撃が、今後何度も【大盾】を攻撃してきたら、いつか致命的な事故につながりかねない。


例えば、【大盾】に熱で穴が空き、運悪くその穴を通って、熱の塊の赤いシャボン玉が入り込み、誰かにぶつかる。やけどでは済まないだろう。最悪、一瞬で触れた箇所が溶けるかもしれない。


そんな絶望的な可能性がウラガの脳裏をかすめる。守る事に誇りと信念を持つウラガにとって、それは耐えられないだろう。だからかなり焦っている。


「なんかアイデア無いか?」


ウラガは溶けた【大盾】の部分に魔力を注いで、厚みを取り戻しながら質問してきた。


「付与でどうにかできないのか?」

「うーん。スキルに付与を与えるのって、練習が必要なのよ。道具みたいにただ魔法を使うのとは違って、自分のスキルに、溶けこませるイメージだから。付与の紋章はその手助けくらいかしら。」


アンの得意とする付与術式も練習が必要らしい。それぐらいならウラガも【水魔法】を付与する練習をしているし、シズクもいるのですぐに出来るだろう。


「後は、多層式とか?」

「多層式?」

「そうだ。パイ生地みたいに、何層にも【大盾】を発生させて、弱った一番外の層を破棄するんだ。脱皮みたいなイメージだ。」

「「ほー」」


これにはウラガだけでなく、魔族で魔法が得意なクルスも食いついてきた。魔法を合わせたりすることは長い歴史の中で研究されてきたが、使い捨てを前提にしたり、何度も同じ魔法を重ねるという発想はなかったようだ。


いや、長い歴史では誰かがチャレンジしたことがあるかもしれないが、成功しなかったのだろう。誰しも、成功しなかったことは発表しないものである。


「ひとまず【水魔法】で付与して、46階層をクリアしよう。出来ることから【大盾】の改良をしよう。」


こんなダンジョンのまっただ中で練習するのは無理である。一先ずはシズクを共に【大盾】の外側に【水魔法】で付与を与えることにして、攻略を優先する。


ただ、【火】の天使のダンジョンでは、【水】がほとんど無いので付与するだけでも、かなり大変そうだ。シズクが一生懸命、スライムの体を光らせて【水魔法】を発動していた。



45階層は、あっさり、ばっさり切りました。つまらな・・・スピードを優先しました。ウラガの【大盾】を次のステージへ!ということで、きっかけを与えました。

テルくんは前世で読んだラノベの知識で、いろいろアイデアを出しています。パクリじゃなくて、リスペクトです。許してください。

次回は46階層以降の話の予定。

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