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褒め言葉として受け取るよ。

40階層の話。


翌日。


溶岩と化した地面を、ユキが凍らせていく。その上を足早に歩く俺たち。10分以内に動かなければ、地面から溶岩が溢れ出てくるからだ。


ユキには昨晩のうちに俺の魔力を渡してある。多分めいいっぱい魔力はあるはずだから、このフロアくらいは余裕で渡れるだろう。


そして40階層も中盤に差し掛かった頃、昨日の俺の予想が見事に的中した。


8匹のアメンボに囲まれたのだ。


最初の出会いは、二匹のアメンボ型魔獣だった。俺とクルスはウラガの【大盾】に開けた穴から魔法を発動させて、いつもの様に遠距離で攻める。


だがこの二匹のうちの一匹が、ものすごく素早かった。というか、逃げるのがめちゃくちゃ上手い。俺の【土魔法】で作った6本の剣を見事に避けきった末に、クルスに【風魔法】の不可視の刃でさえ、どうやってか見切ってくる。


そしてあっという間に接近を許してしまった。


アメンボは【火魔法】で俺たちを守る【大盾】を焼き払おうとしてくる。ドーム状に展開されているので、視覚はないのだが、おかげで敵の姿も見えない。


「見えねえな。」

「!!敵の増援です、数2」


ウラガが愚痴っていると、グラスがそう伝えてくる。【周辺把握】を使って探知を担当していたので、いち早く教えてくれる。


俺も【周辺把握】を使って確認する。確かに2匹の魔獣がこちらへと向かっているのがわかる。


「まだ距離がある。先にこっちを殺るぞ!」


俺の指示を受けて、まずは近い方から確実に始末する。クルスが【風魔法】で敵を竜巻の中に閉じ込める。その竜巻の外から俺が【土魔法】で作った大剣6本で、足を切り飛ばしていく。


一本の足を切った後は、敵の機動力も落ちて、どんどん切り飛ばしていけた。


だが敵の【火魔法】の炎の渦が収まった頃には、アメンボが3匹に増えていた。


このアメンボは止めを刺すと、大爆発を起こす。こんな接近した状態ではウラガの【大盾】も保たない。


「ちょっとピッチ上げるぞ!」

「ん!」


【大盾】から出ればそこは灼熱地獄。攻撃は俺とクルスの魔法が頼りだ。


「!また敵が来ます!数5」

「この糞忙しい時に!」


結局、2匹の足を切り飛ばしている間に、残り5匹が俺たちを取り囲む。


足のみを切り飛ばしたアメンボが3匹。無傷が5匹。それが【大盾】を囲んでいる。


「ちょっとまずくね?」

「チッ!」

「どうしますか?私も【火魔法】で応戦しましょうか」

「いや、多分【火魔法】は効かないよ。こんな環境で生きてるんだから。」


グラスが応戦しようとするが、グラスの使える【火魔法】は効果がない。どうしようかと少し考えるが、ちょっと無謀なアイデアしか出てこない。


「ウラガ。【大盾】を分厚く出来るか?」

「ちょっと時間くれれば!」


そう言うやいなや、ウラガはスライムのシズクから魔力を借りて、一気に【大盾】を分厚くしていく。ウラガの額には血管が浮き上がり、大量の汗を流している。


「テルー。地面―。」


クルスが指を指している方を見ると、ユキの冷やした溶岩を割って、赤く輝く溶岩が溢れてきていた。もう10分過ぎたようだ。


「ユキ!念入りに頼む!」

「キュ!」


ユキは再び地面に向かって【火魔法】を使い、熱を奪っていく。


「テル!できたぞ!」

「よし!みんなちょっと衝撃に備えろ!ウラガは、俺が合図したら、【大盾】の穴も塞げ!」


俺は【土魔法】で作った大剣の3本を【遠隔操作】で敵の頭上で待機させる。残りの3本を、足を切り飛ばして地面に転がるアメンボへ狙いを定める。


「カウントダウン!3…2…1…閉じろ!」


俺はタイミングを見計らって、アメンボへと大剣を突き刺す。そしてすぐさま【空間魔法】の転移で、爆発寸前のアメンボを敵の頭上へと移動させる。


【大盾】の穴が塞がれるのと同時に、俺達の周り、【大盾】の外で、大爆発が3つ連続で起こる。


周りの地面もろとも吹き飛ばしていく。もちろん無傷だった5匹のアメンボも無事では済まない。頑丈な体は傷つかなかったようだが、足は吹き飛んでしまったようが。【空間把握】で外の情報を正確に探る。


もちろん【大盾】にも衝撃が来た。まるで建物自体が揺さぶられるかのように、【大盾】が揺れる。ウラガが必死に踏ん張っている。だが事前に分厚くしたおかげで、割れる気配はない。さすがウラガが頑張ったことはある。


地面も、ユキが念入りに冷やしたために、深いところまで溶岩が固まっており、【大盾】に熱い溶岩が付着することも無かった。ナイスだユキ!


ほんの一瞬の爆発だったが、えらく長かった気がした。静寂が広がったが、【大盾】の外は大量の土が舞い上がっており、見えなくなっている。


「ウラガ。穴を開けれるか。」

「人使いが荒いな。」


もうへとへとなウラガが、先ほどと同様に天井付近に穴を開ける。


「ん」


クルスが【風魔法】で周りの土を吹き飛ばす。当たりはちょっとしたクレーターとなっていた。


敵はというは、足が吹き飛んで、胴体だけとなったアメンボが5匹、離れたところに転がっていた。


「とりあえず逃げるぞ。」


胴体だけだと、簡単には近づけないが、【魔法】を放たれると厄介だ。俺たちは足早に戦闘から離脱した。


その後は、特に危険も無く順調に40階層を攻略出来た。


41階層への階段へとたどり着いた瞬間、ウラガがぶっ倒れた。


「はぁはぁ。ちょっと休憩させてくれ。魔力と体力が少ない。」

「ウラガのおかげで助かったよ。ありがとうな。」

「へへ。それより、テルの考えることは過激だよな。いや、考えついてもやろうとは思わねえよ。」

「悪かった。相談している時間が無かったんだよ。」

「別に批難してるわけじゃねえぞ。」

「ありがとう。褒め言葉として受け取るよ。」


そう言うと、俺はウラガへと【光魔法】を使って、魔力を渡すのだった。他の皆は休憩用にお茶の準備をしてくれていた。


ちゃんとフラグを回収できた。

というか、そのせいで40階層で一話が埋まってしまった。

次から新たなステージ。どんな仕掛けにするか、まだ考えてないです。きっと書き始めたら出てくるはず!

テルくんは、結構イケイケな性格です。無茶をするのでは無く、きちんと勝算があるはずです。たぶん。

次回は41階層以降の話の予定。

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