表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/214

長居は無理ってことだな。

39階層、ちょっと40階層の話。


39階層です。目の前の地面は、ほんのり赤く色づいていて、見るからに高温です。


「どうしよう。」


魔獣の革や、金属を使っている靴では、もろに熱を伝える。最悪、足の裏を火傷するか、冷たい場所で凍傷になるかだ。


俺はみんなの顔を見ていくが、みんなも悩んでいるようだ。


「とりあえず、アイデアが一つあるんだけど。聞く?」

「「聞く!」」


どうしよう。と先に言ったが、本当は解決策を閃いていた。だがこういうタイミングでアイデアを出すのは、俺の仕事みたいになってきている。俺としては、みんなからもアイデアを出し合って、議論したいんだけどなぁ。俺がいない時に解決策を出せなくなるかもしれない。


そんな杞憂はさておき、とりあえずの解決策を提示する。


「魔法瓶を渡しただろ?あれと同じだ。靴の裏に予め土を付けておくんだ。」

「「おぉ!!」」

「でもー耐えられるー?」


みんなが感嘆の声を上げる中、クルスだけが疑問を投げかけてきた。さすが魔法を専門にする魔族の事はある。ちょっと言葉足らずなのが、惜しいが。


「そうだな。人の体重で支えられるような、中が空洞の魔法瓶型はきついかもしれない。」

「じゃぁ、中を土で埋めるの?」

「それをこれから実験するんだ。クルス、ウラガ、グラスちょっと付き合ってくれ。」


俺はそう言うと、グラス。というより土の神獣であるモノリスのダイチに、【土魔法】を発動してもらう。ウラガの足の裏に、厚さ3cm程の中が空洞になった土の箱を取り付けた。そこに穴を開ける。


「ん。」


クルスは慣れた様子で【風魔法】で箱のなかの空気を抜き取る。そこをすぐさまダイチが穴をふさぐ。


俺達の中で、装備を含めて最も重いのはウラガか、アンだ。だが実験なので、とりあえず防御力の高いウラガでチャレンジだ。


「ウラガ、立てるか?」


準備が出来るまで座っていたウラガは、慎重に立ち上がる。そして歩き出す。


「おぉ。目線が高くなった!ちょっと歩きにくいな。」


とりあえずは、靴の裏の土の箱は、割れなかったようだ。そのまま赤い地面へと、さらに歩みを進める。赤い地面の上に立って、そのまましばらく待ってみる。


「うーん。すぐに熱くはならないけど、ちょっと暖かくなってきたかも。」


およそ5分は持ちそうだ。ウラガはそのまま、隣の白く凍っている地面へと一歩踏み込んだ。


「パキ!」


ウラガが足を踏み入れた瞬間、靴から嫌な音が聞こえる。ウラガはそのまま動かず、顔だけを俺へと向けてくる。どうしようか迷っているようだ。


「動くなよ。ウラガ。この短剣を持ってくれ。」


俺は【土魔法】で作った短剣をウラガへと【遠隔操作】で渡す。そして俺の手元の短剣とウラガの位置を【空間魔法】の【転移】で入れ替える。


安全地帯へと戻ったウラガを座らせて、足の裏を見てみると、見事に土の箱に亀裂が入っていた。


「熱による急激な変化か。土を固めすぎるのも問題だな。」


この実験を経て、俺達は土の箱ではなく、中も土で満たしたものを靴裏へと装着した。


ある程度、硬さを犠牲にして、その代わり、表面的に徐々に削れることで、熱さや冷たさから守る作戦をとったのだ。


ちょっと厚底みたいになって、歩きづらい。だが基本的に魔法で戦う階層なので助かった。もし近接戦闘をするようなフロアなら、踏ん張りが効かず、威力がかなり落ちたことだろう。


途中で、減った靴裏の土をダイチに補充してもらいながら、39階層をなんとか攻略することができた。途中、ちょっとアメンボ型魔獣が接近することもあったが、ウラガが【大盾】で守ってくれたから、大事には至らなかった。


時間も良い頃なので、今日はもうここまでにしよう。俺たちは夕食を取るためと、ついでに40階層の様子を見るために、一度40階層へと顔を出すことにした。


そして40階層。ここはもう、地面は溶岩になっていた。真っ赤に輝き、ドロドロと流れる溶岩。方や、今までと変わらず真っ白に凍っている地面。赤と白のコントラストが美しい。


そんな幻想的な景色から意識を戻して、横で呆けているグラスとダイチへと言葉をかける。


「ダイチって、溶岩は扱えないんだよな?」

「ガ!」

「無理だって。溶岩として動かせても、期待している様な人が乗れる温度にするとかは無理。っていう意味だと思うよ。」


うん。俺の言葉も悪かった。だがそれを正しく理解して返答するダイチも凄いな。さすが神獣。そしてその短い返答で、正しく意思疎通できているグラスも、さすが心で繋がっていることだけはある。


俺の淡い期待はあっさり砕けた。やっぱりここは、ユキの出番かな。


「ユキ。やってくれるか?」

「キュ♪」


ずっと俺の頭の上にいて暇だったのだろう。ユキは意気揚々と、真っ赤に輝く溶岩へと近づいていく。そしてユキの体から白い魔法光が放たれる。冷やす事に特化したユキの魔法は、見る間に溶岩を黒く変色させていく。


ちなみに、「出来るか?」と聞かなかったのは、ユキなら出来ると思ったからだ。なんせ【火】と【水】の上位精霊なのだから。


そしてある程度のスペースの溶岩を冷やし終わったユキは、俺の元へと帰ってくる。


「キュ!」


ドヤぁ。みたいな感じでユキが完了したことを伝えてくる。俺はユキを撫でて、「お疲れ様」とねぎらう。


とりあえず、攻略方法が確立したので、俺達は夕食の準備をする。


安全地帯は気温も平穏なので、問題なく休憩できる。


俺とユキが実験している間に、他のメンバーがセッティングと、下準備を済ませてくれていた。俺は用意された食材で料理するだけだ。ちなみに今日の夕食は、冷凍にしていたロールキャベツ。


俺が温めて味付けしたロールキャベツを皿に盛っていると、ウラガが声をかけてきた。


「おい、テル!大変だぞ!」


ウラガが真剣な顔でそう報告してくるので、俺達は料理を置いて、ウラガが指し示す方向へ視線を向ける。


そこは、10分ほど前にユキが凍らせた溶岩の場所だった。


なんと、黒くなった溶岩に亀裂が入り、そこから真っ赤な溶岩が溢れだしてきていたのだ。


「長居は無理ってことだな。」


しばらく眺めていたが、ものの1分で再び表面が溶岩で覆われてしまった。ユキが凍らせてから、タイムリミットは10分。その間に、再び冷やすか、冷たい地面に辿り付かないと、溶岩に飲み込まれる。魔獣に囲まれでもしたら、ピンチだな。


もっとペースを上げたい!けど、深くなるにつれて難易度が上がるから、対処方法をとるしかない。むー。ジレンマ。

テル君は、ユキの力を信じているようです。過信ではなく、心で通じているので、ある程度の出来る事がわかるのかもしれません。他の神獣たちも、書いてませんが、ちゃんと主人と一緒に居ます。

次回は40階層以降の話の予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ