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このままじゃあ歩けないよなぁ。

37、38階層、そしてちょっと39階層の話。

若干くどくなってしまいました。

37階層は、温度差が激しくなった位で、別に変わったことはなかった。


38階からは、その温度差が更に広がり、安易に進めなくなってきた。暑い場所と寒い場所が広い空間に点在しているこのフロアでは、非常に面倒なことだ。


最初の犠牲者は先頭を歩くウラガだった。


「あっっちーー!!」


38階へと移動して、階段前の安全地帯から一歩出た瞬間に、ウラガが叫びながら後ろへと飛び退いた。もちろん俺たちはウラガに押し戻され、態勢を崩す事になる。運動神経がいまいちなクルスだけが、尻もちをついていた。


「悪い、みんな。でもちょっと暑すぎるぞここ。」


俺はクルスへと手を差し伸べながら起こし、ウラガの話を聞いてみる。


37階までは、暑いところは真夏くらいの暑さ、寒いところは真冬くらいだった。だが38階からは熱湯に手を突っ込んだ時のような猛烈な暑さを感じたそうだ。


俺は左手に【火の魔法結晶】を持ちながら、いつでも熱を吸収できるようにスタンバイする。そして右手を安全地帯の外へと恐る恐る出してみる。


「あっつーー!」


そこは本当に熱湯かと思うほどの気温だった。ほんの少ししか手を入れていなかったが、その暑さは十分に理解できた。


「こりゃ無理だ。感じてから【火魔法】で温度調整してる暇なんてない。」

「そんなにですか?私もちょっとやってみようかな。」

「やめたほうが「あつーーい!!」」


俺の止める声を聞くのを待たず、グラスは怖いもの見たさで手を突っ込んでみたようだが、俺達と同じ結果となっていた。アホなのだろうか??


「もし暑いところ用に、予め【火魔法】で熱を吸収してても、寒い空間に移るときには、弱に凍傷になるかもしれないな。」

「あ、あそこ見てください。空間がモヤみたいに揺れてますよ。」


視力の良いグラスが、少し離れたところの空間を指差している。


俺たちは目を凝らしてよーく観察してみると、確かに空間を隔てる壁のように、空気が揺らいでいる。


「気温の差が大きすぎて、空気が歪んでるんだろうな。」


真夏の日に、コンクリート上の空気が揺らめいているような印象を受けた。そりゃ、100度以上は温度の差があるのだ。空気ぐらい歪むだろう。


「むー。困ったー。」


クルスがそう呟くが、まさにその通りだ。温度を一定に保つのは、付与の術を持ってしても、自動化できるものじゃない。常に一定の温度を保てないので、吸熱か発熱かを自分たちでその都度切り替えるしかない。その度に大やけどか、凍傷になる。しかも魔獣も出てくるのだ。やってられない。


「ここは俺の出番だな。」


やはりと言うか、お約束というか、ウラガが解決策を提案してくる。魔族の国で経験した【生活の天使のダンジョン】で披露した、ウラガの技を使うのだ。


ウラガは【大盾】を発動する。大量の魔力を消費することで、俺達を包み込むような大木屋ドーム型へと【大盾】を変形させていく。


「ふー。これでどうよ。」


ウラガがドヤ顔で俺達を見てくる。以前見た時より更に広く【大盾】を発動できるようになっている。アンが巨大なオノを多少振り回せるギリギリのスペースといったところだ。


「さすがウラガだ。」


俺はとりあえずウラガを褒める。だが、これは決定的な欠陥を含んでいる。


「ただ、攻撃をどうやるんだ?」

「・・・根性だ。」


たとえ魔法の世界だろうと、こちらだけ盾を素通りして攻撃を放てるはずがない。魔法を発動しようとしても、ウラガの【大盾】の外で魔法を発動させることはできない。


魔法は、導火線のついた花火のようなものだ。発動する人のイメージや魔力がを、導火線のような魔力の道標の先で発動する。その導火線が【大盾】を超えられないのだ。


だから今までも【大盾】に穴を開けてもらったり、【大盾】を避けるようにして発動させていた。


だが、今は完全にドーム状に包み込んでいる。穴を開けたとしても、そこから熱風や寒気が流れこむかもしれない。


「今までみたいに、穴は開けれるか?」

「ちょっとでかく作ったからなぁ。開けたり閉めたりするのは、難しいけど、穴を開けれないことはないな。」


ウラガは可能だと言うが、それは意外と大変な事だと知っている。【大盾】の分厚さが、まばらでも良いのなら、完全に包み込むの力を込めれば可能だ。だが、穴を開けるとなると、そこだけ意識して変形しなければならないし、強度が落ちるので、分厚さも増す必要がある。


【大盾】は作り上げれば、後は維持のみの優秀なスキルだ。開閉できないのは、どうにかするしかない。


「ちょっと待っててくれ。」


ウラガはほんの数秒で、天井付近に穴を開けてみせた。ピンポン球程度の穴だ。ピンポン球サイズだが、これは非常に高度な技術なのだ。ウラガの固有能力【ハイガード】がなければ、安易にできない。


とりあえず、俺達はウラガの【大盾】に包み込まれた状態で歩いて行く。【大盾】に阻まれて熱風が直に来ることはないが、やはり空いた穴から、熱風が入ってくる。ただ、天井に開いてるので、それほどの量ではないが、徐々に気温が上がってくる。


アンが【火の魔法結晶】を使って、魔力の消費を抑えた【火魔法】によって温度を調整してくれた。近接戦闘に特化したアンは、外に出られないこの状況では役に立たないとからと、温度調整を買って出てくれたのだ。


熱風はそれほど入ってこないが、冷気はものすごい勢いで入ってくる。冷たい空気は下へ、温かい空気は上へ行く。自然の摂理に則った現象だ。


アンが頑張って気温をコントロールしながら、俺達は足早にこのフロアを越えようとする。出現回数が増えたアメンボ型の魔獣を、俺とクルスが、魔法を【大盾】の穴から発動させ、確実に遠距離で始末する。


もし【大盾】が壊れでもしたら、大惨事だからだ。


そんなこんなで、気温に対する対応をなんとか確立して、38階層を踏破した。


そして39階層。そこは更に気温が変化していた。具体的には地面の色が変わるほど。


高温だと思われるところは、地面がほんのり赤くなっている。地面の下で溶岩でも流れているのかもしれない。


低音だと思われるところは、地面が白くなっている。しもが降りているのだろうか。地面が凍っているように、見るからに滑りそうだ。


「このままじゃあ歩けないよなぁ。」


俺たちは自分たちの装備を見なおしてみる。魔獣の革や金属を使った靴を履いている。どう考えても溶ける。もしくは冷えて足が凍りつくだろう。


俺たちは再び頭を悩ます事になった。ここに来て攻略ペースが更に落ちる事になるかもしれない。


むー。もっとコンパクトにまとめたかった。そしてペース上げたい。

空気が歪むほどの温度変化。ダンジョンならではですね。

実際攻略しようとすると、この上なく面倒だと思いますが。

テル君は、ウラガのことをよくわかってますね。ウラガは「面倒だ」とかは言いますが、出来ることはよっぽど難しい事でもない限り、弱音は吐きません。いいコンビですね。

次回は、39階層以降の話の予定。

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