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こりゃ、さっさと鳥を倒さないと拙(まず)いな。

地下30階層と31階層の話。

「はぁはぁ。テルさん、あとどれくらいで、着きますか?」

「はぁはぁ。あと2kmくらいだ。」


30階層は、空気が凍りついて空気が薄くなっている。奥にいくほどより薄い。歩くだけで、息切れしてくる。グラスが聞いてくるが、まだ31階層への階段までは2kmある。


「クルス。【風魔法】でなんとかならないか?」

「ちょっと無理かなー。空気はー作れない―。」

「それじゃぁ、どこかに空気が凍った液体を見た人は?」

「「「・・・」」」


誰も答えない。もし液体になった空気が見つかれば、【火魔法】で加熱すれば、大量の空気が手に入るはずだ。だがそんな都合が良い話は無いようだ。


「とにかく、今ある空気を貯めとこう。」

「どうやって?」

「魔法の袋かな?」


俺は魔法の袋に空気を入れてみようとするが、どうにもならない。やはり袋か何かに入れないとダメみたいだ。


という事で、ダイチに土魔法で巨大なかめを作ってもらい、それに蓋をして魔法の袋に入れる。もしもの時様に、10個ほど作った。


それからさらに進んでいくが、あと500mくらいで、本当に空気が無くなってきた。【転移魔法】で飛ぶにはまだ距離がある。


俺達はかめに入れておいた空気をめい一杯吸い込み、走って行く。途中、芋虫の魔獣がゾロゾロ出てきたが、全て無視だ。


そして最後は俺の【転移魔法】によって、一気に階段へと飛び込んだ。


「だはぁ。はぁはぁ。みんな無事か。」

「「「大丈夫。」」」


俺達は大きく息を吸い込んで、呼吸を整えていく。息ができないのが、あれほど苦しいとは。空気の有り難さを思い知った。


その後は、もう無理をせず、身体を休める事となった。時間も夜になる間際だったので、ちょうど良かった。


翌日、俺達は31階層へとやってきた。


今度の31階層は、見渡す限りの平原と池がチラホラある、いたって長閑のどかな階層だった。気温も暑くも無いし、寒くも無い。天井も高いし、ピクニックでもしたくなるような雰囲気だ。


「なんだ?休憩用の階層か?」

「今までの事を考えると、それはないだろ。」

「何があるんでしょうか?」


俺の希望はウラガにバッサリと切られた。グラスが話を切り替える様に、質問をぶつけてくる。


だがそれに答えられる人間はいないので、俺達はゆっくりと進んでいく。


「!空から魔獣が来ます。右側からです。」


グラスが最初に気付いた。どうやら【聴覚強化】を使っていたようで、羽の羽ばたきの音を聞き付けた様だ。

 

それから少しした後、巨大な鳥の魔獣が現れた。身体だけでも3mはありそうであり、色は黒い。そして特徴的なのが、頭が二つ付いている事だ。双頭の鳥だ。


「ギョエエエエ!」


その見ため通りの、低くてかすれた鳴き声で俺達を威嚇してくる。


俺は【土魔法】で、クルスが【風魔法】で対抗しようとするが、先に動いたのは鳥の魔獣だった。


鳥は【火魔法】特有の赤い魔法光をまとうと、周囲の空気がグニャリと歪む。そして、先ほどまで一頭だった魔獣が、歪な形ではあるが、二頭に増えたのだ。


その後も魔法が発動された様で、合計4頭へと増えた。


「え!あの魔獣増えるの!?ってか【火魔法】で増やせるの?」


一番動揺しているのはグラスだった。自分も【火魔法】を使っているので、それが不可能だと本能的に分かっているようで、その現象が理解できないでいる。


「たぶん蜃気楼だよ。空気に局所的な温度差を作って、光を曲げてるんだよ。」


推測だが、俺の意見を述べてみた。【火魔法】の吸熱と加熱を併用すれば、それくらい簡単だろう。根拠としては、空気が揺らめいている事と、形がいびつで、ぼやけている点だ。


ただ、繊細な【火魔法】の制御と、光がどう歪むかを理解していないと作れない、相当高度な方法だ。あの鳥がそこまでできるのだろうか?


「とりあえず、クルス、あの辺りに風を送って、吹き飛ばしてくれ。」

「りょーかいー。」


クルスが得意の【風魔法】を発動させる。俺達へと今にも襲いかかろうとしていた鳥目掛けて、猛烈な風が吹き抜けた。


すると、空気の歪みが解消されて、蜃気楼で作りだされた偽物は、跡形もなく消えていった。


鳥は自分の分身が消されたことを理解した様で、再び【火魔法】で分身を作ろうとしている。やはり鳥頭だ。無意味な事に気付いていない。


だがその隙を逃す俺ではない。俺は用意していた土の大剣を思いっきり投げつけた。


ドスン。という音と共に鳥の身体へと突き刺さった大剣で、当たり所が良かったのだろう、そのまま鳥を倒す事ができた。


落ちてきた鳥へと駆け寄り、魔法結晶をとりだす。


「ち。中さいずか。これだけ大きいと大とか取れると思ったのに。」


だが得られたのは中サイズだ。一撃で仕留められた魔獣としては、お得だ。


その後、俺達は草原を歩いていく。本当にピクニックをしている気分になる。


だがそんな暢気のんきな旅が続くはずもなく、再び双頭の鳥の魔獣に襲われた。


今度の鳥も最初は蜃気楼を作るが、クルスによって吹き飛ばされ、本体があらわになる。だが今度の魔獣は賢かった。俺達に蜃気楼が通じないと分かると、別の方法に切り替えてきたのだ。しかもご丁寧に距離までとっている。


再び鳥の身体が【火魔法】の赤色に包まれると、双頭のそれぞれの口から、ファイアーボールとフリーズボールを打ちだしてきたのだ。


「俺の後ろに!」


ウラガがそう言うと、俺達は急いでウラガの後ろに隠れた。ウラガは【大盾】を半ドーム状のして、前と横からの影響を防ぐ。


そしてウラガ目掛けて、ファイアーボールが命中した。そしてフリーズボールは俺達から見て、右手前方へと落ちる。


二つのボールは強烈な熱波と寒波を巻き起こして、猛烈な乱気流を生む。


ウラガが踏ん張ってくれたおかげで、俺達は事なきを得た。だが目の前の草原は、片方が燃えており、片方は氷漬けになっていた。


おそらく、【火魔法】でそれぞれの熱量を移動させて作ったのだろう。フリーズボールを作るために奪った熱を、ファイアーボールへと注ぐ。効率的な良い攻撃だ。


「こりゃ、さっさと鳥を倒さないとまずいな。」


下手をすれば、防戦一方になりかねない状況を打破するため、俺は【土魔法】で土の大剣を錬成し、距離をとっている鳥目掛けて、思いっきり投げつけるのだった。


熱だけでできる事も、もう少なくなってきた。という事で、今回は蜃気楼。富山県を思い出して、書いてみました。某海賊アニメの、ミカンの女性が使ってますが、あんなイメージで大丈夫です。べ、別にパクッた訳じゃないんだからね。本当にパクッてないです。書いてるうちに、あ、そう言えばってなりました。

テル君も、一発で蜃気楼だと見抜きましたね。色々可能性を考えていたのでしょう。そして攻略方法の簡単な事。クルスが大活躍ですね。

次回は、31階層以降の話の予定。


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