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付与の袋が無いと、一瞬で氷漬けになるぞ。

地下26階層から30階層の話。


その後も、白いサッカーボールが3つ連結した、芋虫魔獣はちょこちょこ出てきた。


俺の土ナイフで一撃なのだが、一体倒すために3本も刺さなければならない。しかも面倒な事に、芋虫の3つの身体はコロコロと転がって、意外とすばしっこいのだ。なので、土ナイフを外す事もある。すると当然反撃される。


「よっと!」


ウラガが俺の目の前へと飛び込んでくる。


俺目掛けて放たれたフリーズボールを、ウラガが防いでくれる。最初に氷漬けにされた【大盾】は既に解除してあり、新たな【大盾】が展開されている。今度はシズクによる【水魔法】の付与が無いので、凍る事はなく、その冷気だけが弾け飛ぶ。


「おぉ!寒いぃ。」


後ろにいたグラスが寒そうに、身体を縮こまらせている。若干だが震えている様にも見える。


どうやら地面を冷気が通りぬけたのが、グラスの戦乙女を冷やした様だ。足や腕に鉄製の防具兼武器を装備しているグラスは、俺達の中で一番寒さの被害を受けるようだ。


芋虫に止めを刺す。魔法結晶をとりだした後は、早々にダンジョンを進んでいく。というか途中からは小走りになっていた。どうやら皆、寒さが辛いようだ。


そして2時間もしないうちに、26階層を攻略した。俺達は27階層の階段で、暖かい紅茶を飲みながら休憩している。


「皆、今日はここで終わりにしないか?さすがに寒さに、身体がついて行かないだろう。」

「俺もそれが良いと思う。」

「私も賛成です!装備が冷たくて、凍えそうですもん。」

「さんせー。」

「私も特にないわね。ゆっくり発熱用の付与の袋を作れるから、気が楽だわ。」


やはり皆、急激な温度変化が辛いようだった。幾ら付与によって暑さ対策をしていたとしても、全く暑くない訳ではない。直の溶岩の気温に比べると我慢できるという位で、体感は夏のようなものだった。それがいきなり冬になるのだ。身体が不調をきたしてもおかしくは無い。


「とりあえず、身体を冷やさない様にしないと。風邪には注意してくれ。」


風邪は【生活魔法】や【光魔法】でも、完全には直せない。少しくらいの体力や、解熱位は出来るが、やはり戦うとなると無理がある。ダンジョンの中なので、無理をすると死ぬ可能性があるのだ。健康維持は重要な課題なのだ。


「とりあえず、ウラガとグラスは26階層の安全地帯でドームを作ってくれないか?部屋全体を暖めよう。」

「「わかった」」


ウラガとグラス、そしてダイチの【土魔法】があれば、直ぐに5人が寝るくらいの小部屋は出来るだろう。


「クルスと俺は食事の準備と、お茶のお代わりを作ろうか。アンは、“魔法の袋”から必要な布を探しててくれ。」

「「はーい。」」


そして、ものの10分も経たないうちに、安全地帯には立派な箱状の部屋ができた。天井壁の一部には穴が開いており、換気も十分だ。これまで何度も作っているので、三人とも慣れているようだ。


俺達はさっそく中へと入り、真ん中に火の魔法結晶を置いて、暖をとる。魔法の袋の中にあった、木材などを使って火を付けて暖かくする。


「そう言えば、馬車に火鉢があったけど、さすがに持ってきてないよな。」

「獣人国で買った奴か?あれなら、魔族の国に、馬子と一緒に置いて来ちまったな。」

「馬子元気かなぁ。」


グラスが馬子に思いを馳せている。きっとクルスの妹の王様が、丁寧に世話してくれているだろう。それより今は暖をとる事だ。


「アン。火鉢の様な魔法道具って作れないのか?」

「できなくもないけど、ちょっと大がかりよ?」

「【土魔法】と【火魔法】で焼きものもできるぞ?」

「うーーん。じゃぁ作ってみる?」


俺達は部屋の中で、火鉢を作り始める。【土魔法】で原形を作り、アンが【火魔法】の効果を上げる付与を刻む。かなり複雑なようで、結構な大きさの付与の紋章が、火鉢の中に刻まれる。


紋章を崩さない様に慎重に【土魔法】で圧縮した後、【水魔法】である程度乾燥させる。後は【土魔法】で作ったかまに入れて、【火魔法】と【風魔法】で焼いていく。焼ければ、【風魔法】で風を送り、自然に熱が下がるまで待つだけだ。


俺達が火鉢を作っている間に、アンは発熱用の魔法結晶入れを作っている。


魔法があるだけで、本来なら数週間、週カ月かかる事もあっという間にできてしまった。素晴らしきかな、魔法のある世界。


「あとは、ここに灰と火の魔法結晶を入れれば・・・おぉ!!成功だ。」

「ふぅ。どうやら紋章も壊れなかったようね。運が良かったわ。」


どうやら焼いた時に土が縮んだり、ひびが入る事で紋章が壊れる事がよくあるそうだ。今回は事前に圧縮させたり、水分を飛ばしたおかげで防げたようだ。ちなみに焼いた後に入れると、複雑な文様が入れにくいそうだ。しかもかなり大きな火鉢でなければ、書き切れないので、小型化が難しいらしい。


火鉢のおかげで、より部屋の中は暖かくなった。燃やす必要が無いので、煙たくも無いし、家事の心配も無い。イイネ。


そしてアンの方も、人数分の袋ができた様だ。俺達は吸熱用の袋を、魔法の袋へ収納して、新しいのを装備する。そして、確かに発動するかを確認した。


その日は、寒さに悩まされることも無く、ぬくぬくと眠りに着いた。ちなみに夕食はポトフだった。


そして翌日、27階層へとやってきた。さらに寒くなっていたが、アンがつくってくれた発熱用の付与の袋のおかげで、寒さはへっちゃらだった。


続く28、29階層も、迷路が広くなり、芋虫の数が多くなっただけで、特に何事も無く進む事ができた。


だが問題は30階層だった。


「息苦しくないか?」


最初にそう言ったのは、ウラガだった。それに賛同する声が、皆からも上がる。


「空気が薄いのかな?山の上にいるみたいだ。」

「もしかして。」


俺は、水筒の中の水を、目の前の空中へ撒いてみた。すると、俺達から数センチ離れた瞬間に、一瞬にして凍りついて、パラパラと地面に氷となって落ちた。


「信じられないけど、空気が凍ってるんだ。」

「「「???」」」


皆は俺が言う事が理解できないようだ。この正解では分子や原子といった事が、解明されていない。もし前世と同じで、この世界も原子や分子で構成されているのなら、空気は大まかに窒素と酸素と二酸化炭素でできている。


それがあまりの寒さに、気体から液体、個体へと変化しているのだ。ドライアイスや液体窒素になっているのだ。そのせいで空気が全体的に少なくなっている。


という事は、-198度くらいはある事になる。いや、局所的にそうなっているだけで、部屋全体が層とは限らないが、尋常ではないくらい寒いのは変わりないだろう。


「皆、付与の袋の魔力を再度補充して、魔法結晶を新しいのに入れ替えよう。そして予備として、直ぐに魔法結晶を握れるようにしててくれ。」

「そんなにヤバいのか?」

「あぁ。付与の袋が無いと、一瞬で氷漬けになるぞ。」


俺が真剣な声で話すので、皆もその危険性を何となく理化した様だ。俺の指示通りに、装備を万全に整える。そして、慎重に30階層を進んでいく。



冷えると言う事は、暑くなるのとは別の危険性があるのです。気圧の変化とは違う方法で空気が薄くなってます。どんだけ寒いねんというツッコミを入れたくなりますね。

テル君はさすが理系と言いますか、理解が早いですね。ですがテル自信も半信半疑の様です。そりゃ空気が凍るなんて、あり得ない寒さですもの。ですが実験するほどバカではないので、念のため対策をとったようです。

次回は30階層以降の話の予定。


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