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吸熱用の球か。地味に怖いな。

25階層。26階層の話。

ちょっと短め。


「重い。」


溶岩の海を土で作った箱舟で航海している。中には人間が5人も乗っているのだ。そりゃ重いだろう。


船の横に着けた土の剣を【遠隔操作】で動かしているんだが、あまり速度は出ていない。


「ちょっと疲れてきた。」


【遠隔操作】も大きく分ければ魔法の一種だ。魔力を細い糸のようにして、操作している。消費魔力はそれほど多くは無いのだが、精神的な負担が大きい。


魔法の連続使用は、10分で辛くなる。30分もすれば、冷や汗をかいて魔法を維持できなくなる。


俺は20分間隔で、5分の休憩をとる。それを繰り返して、ゆっくりと進む。


ドーン。


「やっぱり来たか。」


そう。溶岩を泳ぐ魚の魔獣だ。だがそれは土の大剣を【遠隔操作】する事で、難なく退治できる。


「やっぱり勿体ないなw」


ウラガが冗談交じりに言ってきた。魚は中サイズの魔法結晶を落とす。それなのに溶岩の中に消えていくのだから、確かに勿体ないだろう。


だが俺にとってはそんな事は今は瑣末な事だ。魔法で精神的に負担が掛っているのだ。心まで荒みそうだ。


その後も、ゆっくりと、ゆらりゆらりと荒れ狂う溶岩の海を渡って行った。


結局半日もかかってしまった。26階へと続く階段へと辿り着いた俺は、そのまま気を失うのだった。


「お。起きたか。今回は早いなw」


ウラガが俺の顔を覗きながら挨拶をする。俺は起き上がって周りを確認すると、ちょうど昼食が終わって、次へと進む準備をしているようだった。俺が気絶していた時間は、せいぜい30分くらいだろう。


「慣れって怖いなぁ」


この正解に来てから、魔力不足や魔力の使い過ぎで何度気を失ったことか。最近ではドデカイのも経験したからな。身体が慣れているようだ。


俺は魔法の袋からサンドイッチをとりだして、ちゃちゃっと昼食をとる。そして水筒の水や、吸熱用の袋に魔力を注いで、次のフロアの準備をする。


「そう言えば、ウラガって【大盾】をずっと使ってるよな。なんで疲れないんだ?」

「俺のは一度作ると、あとは維持だけだからな。テルみたいに魔法で操作して魔力を消費したりしないんだよ。」

「いいなぁ。」


俺は素直に羨ましいと思った。ウラガの【大盾】は基本の盾に対して、魔法で盾を延長しているのだ。自分の傍から離れたりしないので、維持する魔力もほぼいらないのだそうだ。


そんなウラガの話を聞きながら準備を終えた俺達は、地下26階層へとやってきた。


というか、地下26階層は25階層から下りるのではなく、上へと登る事になっていた。


「寒くね?」

「ガクガクブルブル。」


それまでの溶岩地帯とは打って変わって、26階層は冬のように寒くなっていた。ウラガが、短文投稿サイトで使われそうな言葉で、返事をする。なぜ知っている。


「【火魔法】の吸熱エリアが始まったようですね。」


そんな俺達を他所に、アンが分析する。今までは【火魔法】の発熱のエリアだったが、今度は吸熱のエリアの様だ。


「とりあえず戻って、服を着ようか。」


俺達は溶岩地帯用の薄手の服を着ていたので、階段へと一時撤退する。そこで何枚も重ね着をして寒さ対策をする事になった。


「アン。今度は発熱用の紋章を刻んでくれないか?」

「お安いご用ね。でも新たに刻まないとダメだから、時間がかかるわよ。」


紋章は、文字や数字、図形を総合して効果を発揮させる。なので、吸熱用の付与の紋章と、発熱用では全く別物になるらしい。裏返したり、逆にしたり、記号を足せば済む訳ではなさそうだ。


「じゃぁ、とりあえずこの26階層を越えて、休憩時間にちょっとずつ作ってくれるか?」

「そうね。急いでるものね。」


寒くなったと言っても、冬の始まりくらいだ。重ね着をしただけで、十分に我慢ができた。


26階層は、ただの迷路だった。別段、何か罠がある訳でもなく、ただ寒いだけだ。まるで1階層へと戻ってきたようだ。


【地形把握】によって最短コースを選択して、俺達は進む。


「この先魔獣がいるな。気を付けろ。」


俺の【周辺把握】に魔獣を感知する。俺達は最初の敵なので慎重に対峙する事にした。


そして曲がり角の先にいたのは、毛虫の様な、まりもの様な、魔獣だった。白い短い毛で覆われたサッカーボール大の球が3つ連結されており、くねくねしながら移動している。無性に蹴り飛ばしたくなる魔獣だった。


とりあえず俺の【土魔法】でつっくったナイフを魔獣目掛けて投げつける。見事、先頭の球体に突き刺さった。


俺の攻撃に怒ったようで、ようやく魔獣が攻撃を仕掛けてきた。


無事な球体2つから、それぞれ【火魔法】が放たれる。放たれた魔法は、淡い青色を呈した野球ボール大の球であり、ファイアーボールとは全く違ったし、氷の弾丸とも言えない不思議なものだ。


とりあえず、ウラガが【大盾】で一つを防ぎ、もう一つは避けて地面に落ちた。


パキーン。


「こりゃすごい。凍っちまったぜ。」


そういうウラガの【大盾】は全面が白く凍りついていた。ウラガは、シズクによって【水魔法】の付与をかけていたようで、【大盾】にうっすらと水がまとわりついていたのだ。それが一気に氷へと変化している。


「地面もー凍ってる―。」


クルスが言うとおり、青い球が落ちた地面は、半径30cmほどの円形に凍りついていた。地面の中にある水分を凍らせたのだろう。


「吸熱用の球か。地味に怖いな。」


名付けるならフリーズボールだろうか。肌に直撃すると、最悪凍傷になりかねない。俺はまた攻撃される前に、とっとと土ナイフで残りの球を突き刺した。


その白い芋虫のような魔獣の中からは、3つの魔法結晶が出てきた。どうやらミミズの様に心臓が3つある魔獣の様だ。なので倒すためには確実に3つのボールを壊す必要があるようだ。地味に面倒臭い。


俺達は新たな攻撃に対して対応策を話し合いながら、26階層を進んでいく。





吸熱の罠って難しい。氷や雪は水を使うから、純粋な火のダンジョンでは使えない。どうしようか。もうちょっとペース早めようかなぁ。

テル君は、魔法による気絶に慣れた様です。ですが体力的に気絶から解放されても、精神的なダメージは残っているものです。早急に休んだ方が良いですよー。

次回は26階層以降の話の予定。

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