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俺が船を引っ張るしかないかな。

地下22階層から25階層までの話。



21階層をクリアして、22階層への階段で昼食の準備をしている。


「やっぱり魚はお刺身だよね。」

「「やっぱり生なのか。」」

「「生!?」」


俺の言葉に、返された言葉は二通りだった。ウラガとグラスは、すでに旅の間に刺身を食べさせている。最初は絶対に嫌と言っていた二人だが、今では食べれない事はないという程度には慣れた様だ。


そしてクルスとアンは、生で魚を食べる事に対してかなり懐疑的だ。信じられないとでも言いたそうな目を俺に向けてくる。「絶対身体を壊すよ」とか「やめた方がいい」とか言ってくるが、俺は皿を二人の前にも出した。


「うま!!」

「うーん。確かに美味いけどー・・・生はなぁー。」


溶岩を泳いでいた魚は、白身である。見た目はあっさりしていそうなのだが、噛めば噛むほどに魚の旨味が出てくる。歯ごたえもそこそこある。味は鯛のようで、歯ごたえはフグの様だ。


クルスも勇気を出して一口食べる。美味しいとは言っているが、やはり先入観からか、なかなか飲み込めないようだ。最後は、目を閉じて一気に飲み込んだ。そこまで嫌か。


「分かったよ。次は焼いたの出すから。」


俺は残った魚の半身を焼いていく。その間に、残った刺身をしゃぶしゃぶで食べれるように、お湯と出汁を準備しておいた。


「このしゃぶしゃぶって、面白いですよね。」

「こんな料理初めてだ。」


グラスとアンは、しゃぶしゃぶが気に入ったようだ。刺身が火を通す事で、透明から白色に変わるのが面白いようだ。


焼いた魚は、そのまま醤油をかけて食べた。刺身で食べた時とは違い、身はふっくらしており、その濃厚な魚の味を楽しめた。


「テルの言うとおり、何でも食べてみないとな。」

「だろ。しかも新鮮な魚は美味いんだよ。」


あれほど嫌そうにしていた溶岩を泳ぐ魚も、食べ始めたら止まらなくなったようで、あっという間に完食した。皆お腹いっぱいになったようだ。だがあれだけ巨大な魚だ。まだ半分が残っているし、普通サイズの魚も残っている。数日は魚づくしだろう。


午後は、22階層だ。


21階層で使った箱舟を“魔法の袋”に入れて持ち込んだので、さっそく川を下って行く。


21階層に比べて、溶岩の粘土が緩いのか、速度が出るようになっている。しかも一本道ではなく、何度か支流の様に分かれている。


普通ならどうにかして川を飛び越えて地面を渡るのだろうが、俺達は川を下っている。道を間違えると面倒になる。


俺は22階層に着いて、最初に【地形把握】で感じ取った情報を紙に起こしていた。それを頼りに【周辺把握】と【鷹の目】を使って道案内をしている。船の中にいるので【地形把握】は使えないのだ。


魔獣も、攻略方法が分かっている魚だけだ。特段苦労する事も無く22階層を渡り切った。


水や魔法結晶の補充を確認してから、23階層へとやってきた。23階層はさらに溶岩の粘度が落ちて、溶岩なのにサラサラしている。普通の水の中を移動するかのようだ。しかも全体的に下り坂の様で、かなりの速度が出ている。


「ちょっと早すぎない?」

「任せとけって。」

「次、200m先は右の支流へ。」


アンが心配そうにするが、ウラガが前方に立って【大盾】を発動している。既に急流下りのように、溶岩がバシャバシャと跳ねているので、それを防いでくれているのだ。俺はと言うと、相変わらず道案内だ。船の操作はアンとグラスが担当してくれている。クルスではちょっと腕力が足りないようだ。


代わりにクルスは【風魔法】を使って、俺と一緒に魚を倒す手伝いをしてくれている。クルスがいてくれるだけで、熱の塊であるボールが飛んできても弾き飛ばす事ができるので、とても安全だ。


24階層へとやってくると、もう溶岩とか関係なしに、激流となっていた。しかもどういう訳か、坂道を登ったり、下ったりしている。どこかのアトラクションの乗り物の様だ。


「ジェットコースターよりはゆっくりだけど、本格的にヤバいかも。」


速度も上がっている上に、道が細分化されていた。間違えていしまうと、かなり遠回りになったり、一周して戻らなければならないなど、より船の進行に注意が必要になっていた。


「もう船を止めて、地面を行こうぜ?」

「やめた方がー良いと思う―。」

「そうですね。きっと足から溶けますよ。」


クルスとグラスが、ウラガの提案を否定している。彼女達が指をす地面に対して、俺が【遠隔操作】でオールと突き刺してみると、グリュリと沈みこんだ。


地面のように見えていたのは、表面だけ固まった溶岩だったようだ。底なし沼のように、足を踏み入れたら一気に身体を呑みこまれそうだ。そして呑みこまれたが最後、全身を溶岩で焼かれる。考えただけで恐ろしい。


たぶんだが、本来ならこの階層までに貯めた火の魔法結晶を総動員して、地面を冷やして進むのだろう。そんな面倒な事はやっていられない。


俺達は地面を歩くのを諦めて、船で我慢する。


船の速度が増した事で、ウラガの負担が増えた。今は船全体の前半分くらいを【大盾】で覆い、跳ねた溶岩を防いでくれている。


オールで船をコントロールするアンとグラスも、【大盾】の隙間からオールを出して、安全に配慮しながら、なんとかやってくれている。


唯一の救いは、魔獣である魚がそれほど増えなかった事だろう。船のスピードが上がって、俺達の攻撃も当てにくくなったが、それは向こうも同じであるようだ。下り坂では、魚が跳ねて溶岩から姿を現している間に、船との距離がかなり開いてしまい、そのままお別れしてしまう事も多々あった。


そして、どうにかこうにか24階層をクリアした俺達は、その日はもう休む事にした。少し早目の昼食をとったせいで、皆腹ペコなのだ。


夕食は溶岩魚の溶岩焼きである。ウラガに【土魔法】で作ってもらった、特性の平皿に魚を入れて、溶岩の中へ。なんちゃってオーブンだ。


味付けは少量のバターとレモンでさっぱり。他にサラダとスープ付きだ。


普通に美味しかったとだけ言っておく。


翌日、25階層へとやってきたが、そこはもう溶岩の海だった。川のいきつく先は海だと相場が決まっているのだ。


溶岩の海は、粘度がかなり低く、サラサラで、本物の水の様だ。本当に溶岩なのか?と疑いたくなるが、赤々と熱を発し、中から次々に溢れてくる姿は正しく溶岩だ。


もちろんただの海ではない。冬の日本海のように、大時化おおしけだ。


安全地帯から【地形把握】で探ってみると、5km先に階段を感知した。それほど広くは無いようだ。


「で、どうやって進むんだ?さすがにオールだと無理があるぞ。」

「そうですよね。オールで漕いでる間に、ウラガさんの【大盾】を飛び越えて、溶岩がかかりそうです。」

「俺が船を引っ張るしかないかな。」


俺は【土魔法】で巨大な剣を4本作り出す。それを箱舟の横に、二本ずつペタリと張り付けた。


全員が、俺がやろうとしている事に気付いたようで、不安そうな目を向けてくる。しかしこれしかないだろう。


俺達は箱舟へと乗り込んで、上部はウラガが【大盾】で蓋をする。シズクがサポートとして【水魔法】で付与を与え続けている。


俺は【遠隔操作】を発動させ、船の横に付けた土の大剣を操作し、むりやり推進力を作り出す。ずっと魔法を使い続ける事になりそうだが、ここが正念場とばかりに、俺は集中するのだった。



お魚の回でした。ちなみに私は魚介類食べられません。なので鯛の味とか、ふぐの食感とかさっぱり分かってません。

テル君が、また無茶をしているようです。本当に船は進むのか。無事26階層へと辿りつけるのか。がんばれー。

次回は25階層以降の話の予定。

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