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労力にあった報酬ってことかな。

お魚との戦いの話。


溶岩を泳ぐ魚を退治してから、溶岩をかなりの距離進んだはずだが、魔獣が出てこない。魚の魔獣は、かなり広い範囲を縄張りにするようだ。


俺達は、どんぶらこ♪と溶岩の川を箱舟に乗って下って行く


安心しきっていた俺達に、再び魔の手が襲いかかる。


「お。魔獣の反応が・・・デカイ!ってか、もう来る!」


物に俺が暇で【周辺把握】を怠っていた訳ではない。無理の無い範囲、500m四方をカバーしていたのだが、その魚の移動速度が凄く早いのだ。


「ぶつかる!ウラガ蓋してくれ!」

「おう!」


ウラガは【大盾】を頭上に展開して箱舟に蓋をする。


ドゴーン!!


ウラガが蓋をしてから数秒後、船にかなりの衝撃が走った。箱舟が大きく揺さぶられて、跳ねた溶岩が内部に侵入しようとするが、ウラガの蓋に阻まれて、なんとか阻止する事ができた。


俺はすぐさま【空間把握】によって、より詳細に魚を探す。


俺の探知にかかった魚影は、体長が2mは軽く越える巨大さだった。先の戦闘で倒した魚が80cm程度だったので、軽く1.5倍はある。


その事を皆に伝えてから、俺は急いで【土魔法】を発動し、土の大剣を3本作り上げる。ちなみにウラガの盾は既に解除してもらっている。


俺は土で作った剣を、魚目掛けて、溶岩の中へと突き刺した。


ガキン


音は鳴らなかったが、手ごたえとして、何か硬い物で阻まれた。それでも俺は【遠隔操作】で土の大剣をグリグルと押しこむ。


魚は俺の攻撃が嫌だったのか、船から距離をとり始めた。


「またあの熱波が来たら、ウラガ頼むぞ!」

「へ!俺の盾で防いでやるよ!」

「いや、さっきみたいに船に蓋をしてくれ。たぶん船の方がもたない。」

「分かった。皆は直ぐに船の中に隠れろよ!シズク!」


ウラガはシズクに直ぐに【水魔法】の付与ができるように準備するように伝える。


俺達が対策をとっている間に、魚の方はかなりの距離をとったようだ。


そして案の定、溶岩から飛び出して、口から真っ赤な球体を俺達に向かって放ってきた。しかも一個ではなく、三つも同時にだ。


「こりゃ予想以上にヤバいかも。」


俺達は作戦通りに箱舟に隠れて、ウラガが【水魔法】の付与された【大盾】を発生させて箱舟に蓋をする。


ドドドーン!!!


三つの熱の塊が一斉に弾けて、箱舟を襲う。鼓膜が破れるのではと思う程の爆音を伴って、猛烈な熱波が襲いかかった。


「熱いー!」


珍しくクルスが叫ぶ。箱舟の中まで温度が急上昇する。外に施した吸熱のための魔法結晶の許容量を超えた熱が襲いかかっているのだ。


ウラガの【大盾】もシズクの【水魔法】の付与を剥がしかけている。シズクが懸命に魔力を注いで維持している。


ガコン!


「倒れます!」


俺は【鷹の目】を使って外の状況を確認すると、俺達の箱舟が熱波によって岸へと流され、その勢いのまま陸へと弾き飛ばされるところだった。


グラスの【危険予知】を聞いた全員は、すぐさま防御態勢をとる。そしてグラスの言葉通り、箱舟は陸へと押し上げられ、転がり始める。


一回転、二回転、と転がった後、ようやく止まった。


「皆大丈夫か?怪我した人は声をかけて!」


誰からも声は上がらない。どうやら皆大丈夫なようだ。ウラガがかけた【生活魔法】の身体強化が効いたのかもしれない。


俺達は箱舟から這い出ると、箱舟を盾にして魚を警戒した。


「右斜め100m先の溶岩の中だ。」


俺の【空間把握】によって、正確に場所を感知する。


「クソーどうやって攻撃すりゃいいんだよ。テルの攻撃もあんまり効いてないしよ。」

「たぶん溶岩が冷えた岩で身体を覆っているんだ。とりあえず溶岩から引きずり出さないと。」

「釣ればいいじゃない。」


アンが簡単に言ってくる。だがどうやって。


「あーもう!考えるよりも、やってみよう。」


(俺は釣り針の様に、先端が曲がって返しのついた剣。これは釣り針じゃなくて、変わった形の剣。)


そうやて無理やり【土魔法】で巨大な剣、(釣り針)を作り上げた。


俺はそれを【遠隔操作】で操り、魚の口元付近の溶岩までもっていく。だがそんな罠にかかる程、魚も馬鹿ではない。


俺の針をかいくぐる様にして再び跳ねた魚は、口から炎の雨をふらせた。見た目はツバのようだが、明らかに燃えている。俺達は急いで箱舟の中や、ウラガの【大盾】に隠れる。


「クソ!どうすりゃいいんだよ!」

「俺に考えがある。もう一度、魚に口を開けさせて、無理やり針をねじ込む!」

「力技かよ。ったくそれしかないか。皆は隠れてろよ。」


俺とウラガは再び魚を挑発する。ウラガは【土魔法】で俺の土剣を真似た武器を溶岩へと突き刺す。俺は【遠隔操作】に集中し、針を準備する。


魚は再び溶岩から飛び出し、今度はバレーボール程のファイアーボールを放ってきた。


「今だ!」


俺は【遠隔操作】によって針を魚の口へと入れる事に成功した。すぐさまウラガが俺の前へと駆け寄って、【大盾】でファイアーボールを防いでくれる。


魚は再び溶岩に潜ろうとするが、俺が逃がすわけがない。


「お前はこっちだ!」


俺は土の針を【遠隔操作】して、魚ごと移動させて陸地へと持ってくる。


魚は全身を黒い溶岩が冷えて固まった鎧を身にまとっていた。かなりの分厚さだ。


ビチビチと跳ねて、俺達へと口を向けようとする魚を、俺は【遠隔操作】で口の位置を変える。


「ここは私の番ね!」


俺の作戦がうまく行ったのを確認したアン達が箱舟から出てきた。アンの手には、巨大な斧が両手に握られている。


アンは躊躇うことなく、二本の斧を一気に魚の首へと振り下ろした。


スパンという音が鳴ったかと思うほどに、綺麗に首が切り離された。怖すぎる。


頭を切り離された魚は、しばらくビチビチと動いた後、どんどん動かなくなっていく。恐ろしい程の生命力だ。


とりあえず、魚を退治できた事を確認した俺達は、魔法結晶を探す。心臓にあたる位置に、魔法結晶は埋まっていた。


「おぉ!こりゃ大サイズだぜ。しかも品質も良だ。」


【解析】によって魔法結晶を調べたウラガが皆に伝える。どうやらユニークモンスターだったようであり、あれほど強力な魔法攻撃は、この大サイズの魔法結晶のなせる技だったようだ。


「労力にあった報酬ってことかな。」


この魚のせいで、この階で作ったばかりの箱舟は一部に穴が開いていた。最初の突撃攻撃と地面を転がったのが響いたようだ。


再びダイチとウラガが【土魔法】で穴を塞いで、クルスが【風魔法】で空気を抜いて、箱舟を復活させた。付与の紋章はウラガの【大盾】で守られて無傷だった。


修復した箱舟にのって俺達は21階層の溶岩を再び下って行く。どうやら魔獣が出て来なかったのは、あのユニークモンスターのせいだったようだ。またしばらく行ってから、小さな魚は出たが、もう攻撃パターンが分かっている俺達の敵ではなかった。


どんどん倒して、どんどん溶岩の川を下る。2時間ほどで21階層をクリアして、俺達は22階層へと続く階段へとやってきた。


お待ちかねの昼食の時間だ。




なぜかユニークモンスターが出てきました。予定ではさっさと21階層以下を進むはずだったのに。ナゼー?

テル君は、ちょっとやけくそ気味ですね。きっと暑さと、転がされた事で気が立っていたのでしょう。上手くいって良かったね。

次回は地下22階層以下の話の予定。

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