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ストレスは、こまめに解消しないとな。

17階層から20階層までの話と、付与についての話。


17階へと降りてきた俺達は、とりあえず壁に並んでいる明かり用の火が消せるのかを確かめてみた。


水をかけてみると、簡単に消す事は出来た。同様に、土を振りかけても消せる事が分かった。


だがこの火は、壁沿いにずらっと並んでいるので、1階層分くらいならなんとかなるが、残り3階層分、全てを消すには魔力が幾らあっても足りないだろう。


火と相性の悪いクルスも、魔力が少ないグラスも、活躍でき無さそうでなんとも悔しそうだ。


「火を消せば良いんでしょ?私もやってみて良いかしら?」


アンがそう聞いてきた。どうやるのかと聞いたところ、斧を思いっきり振り抜く。アンの怪力で振るわれた斧は、轟音と共に猛烈な風を伴う。その風圧によって、局所的な真空が生まれる。それによって、壁の火が完全に消えたのだ。


その結果に満足したのか、アンはまたもやドヤ顔だ。


「凄いなアンは。でもそれだと罠には掛るだろうなぁ。」

「ウッ。」


アンの技は本当に凄いのだが、効果が出るのはかなり狭いのだ。これだと罠を発動させることなく解除する事は出来ない。だがここで、一人不敵な笑みを浮かべる人がいた。


「フフフー。空気を抜けばー良かったの―。」


クルスだ。先の人魂の件で、クルスはこのダンジョン内での火に対して苦手意識を持っていた。だがアンの技を見て、できる事が分かったようだ。


クルスは得意の【風魔法】で、壁に並んだ火の列に対して、一気に空気を抜く。すると数十メートル先の火まで一気に消えて、周りは一気に暗くなった。


「【光魔法】!」


俺はライト代わりの光のナイフを点ける。先程はアンがやっていたドヤ顔をクルスがしていた。ドヤ顔が流行っているのだろうか?


「さすがクルスだな。空気を抜く事も直ぐに出来るなんてな。」

「ふふふーん。もっと褒めてもいいー。」


幾ら得意な【風魔法】だと言っても、やった事のない空気を抜く事を簡単にやってのけるクルスは、さすが巫女、さすが魔族といったところだろう。魔法に関しては、ずば抜けたセンスを持っている。


こうして俺達は壁の火を消す事に成功した。暗くなった中を歩いて行くが、全く罠は発生しなかった。やはりあの壁の火が感知装置だったようだ。


普通の人達なら、全部の火を消す事も出来ないし、明かり用の松明も必要になるだろう。俺達だから出来る荒業なのだ。


しかも魔獣である火の鳥も、暗闇だと明るく燃えているので、見つけやす。早さにも慣れてきたようで、グラスが蹴り飛ばしたりして難なく退治する事が出来た。


17階層、18階層と特に問題も無くクリア出来たが、今日の攻略はそこまでだ。クルスの魔力が足りなくなってきたからだ。


俺が残りをやっても良いのだが、時間も遅くなってきたので無理しない事にした。


「アン、どうかしたのか?」


何となくアンがしんどそうにしていたので、聞いてみた。


「ちょっと身体がね。久しぶりに動くからかしら。」


アンは教会の地下で幽閉してもらっていたので、身体が鈍っていたのだろう。呪いの副産物的な怪力のせいで、今までは固有能力に依存した力の使い方をしてきた。昔なら怪力に身体が慣れていたので、問題は無かったのだろうが、今は身体がその負荷に耐えられない。


全身が筋肉痛に襲われていたようだ。今まで上手く隠してきたようだが、我慢が出来ないようだった。


「なんだよ言えば良かったのに。」


ウラガがそう言うと、光魔法で彼女の体を直そうとする。


「あ、魔法はいいです。筋肉がつきにくくなるので。」


アンが言うには、魔法で筋肉痛を直すと、筋肉が育たない。超回復という筋肉が育つ行為が弱められるそうだ。長い人生での経験から学んだようだ。


アンが筋肉痛で苦しむ中、俺達は夕食をとる。今日はサラダ饂飩うどんだ。魔法の袋の中は、時間は経過するが気温はほぼ一定だ。冷蔵庫の様に、氷を入れた場所ならば冷やせるが、外側からの影響は受けない。なのでこの猛暑の中でも野菜が痛むスピードは変わらない。


「アンは魔法の袋の時間を止められないのか?」

「付与でってこと?ちょっと難しいわね。式が定まってないのよ。」

「他には方法ってないのか?」

「付与と【魔法】を合わせる事は出来るわよ。でも付与する人がその【魔法】を使えないとダメだけどね。」

「【火魔法】が使える人は、火の付与を付けられるって事か。」

「そうよ。普通に【火魔法】を使って自分の武器とかに、一時的に属性を付与するでしょう。それを固定するようなものなの。」


という事は、俺が【時魔法】を覚えないといけないようだ。


さて、どうやったら【時魔法】を覚えられるんだろうか。それとも、付与するための紋章を開発した方が早いかもな。


翌日は、19階層からスタートだ。19階層からは、壁の火がより多く、しかもランダムに並ぶようになっていた。今までのように、一列で並んでいないので、クルスは面倒だと言って、壁一面の空気を真空にして火を消していく。


「ちょっとー消費がー激しい。」


だからと言って、火をいちいち消す事は面倒だ。


「ウラガ、大丈夫なら魔力を分けて欲しい。」

「大丈夫だ。クルス、ちょっとこっちへ。」


ウラガは【大盾】を使う以外に、特に魔力を消費する事は無い。俺と同量程度の一般人にしては桁外れの魔力を持っているので、【光魔法】で魔力を渡しても平気だ。


だが【光魔法】による魔力の受け渡しは魔力のロスが大きい。なのであまり効果的ではないのだ。だがそれでも魔力を貰ったクルスは幾らか回復した様で、頑張って壁の火を消していく。


そうして魔力の消費と戦いながら、19階層、20階層とクリアした。


一度だけ、20階層で火の鳥の大群に囲まれたが、それまで何も出来ずにフラストレーションが溜まっていた、クルスとアンによって、無双された。俺達は彼女たちを突破した数匹を退治するだけの簡単なお仕事だった。


「ストレスは、こまめに解消しないとな。」


ずっと暇だった彼女たちの戦いは、正に阿修羅だった。しかも戦っている最中に、彼女たちは笑っていた。マジ怖い。


俺は人数が増えたこの状況下で、皆がストレスを貯めないよう、努力しようと秘かに誓うのだった。


ダンジョンをあっさり進めていますが、なんだかなぁ。

楽なのは楽なんだけど、面白みに欠けるなぁ。頑張ろう。

テル君は、魔法の袋の改良をやりたいようです。おそらく野菜や料理の保存のため、袋の中の時間を止めたいのでしょう。どうしようかなぁ。

次回は21階層以降の話の予定。

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