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君を連れ出しに来たんだ。

王都での準備というかなんというか。




「皆さま、晩餐の準備ができました。」


俺達はドワーフ国の王と夕食を共にするために、食堂へとやってきた。長い食卓に、俺達と王だけが座っている。


「さて、今は非常時なので質素で悪いが、楽しんでくれ。」

「「「いただきます。」」」


出された料理は、少し大き目な皿に、お肉のソテーとハッシュドポテトと緑の野菜が少々、後はスープといった、極々質素なものだ。やはりダンジョンの発生時なので、王といえども節制している。


「王よ。ダンジョンの事について色々聞かせて下さいませんか?」

「ふむ。武官長。」

「はい。ダンジョンが発生したのは王城の北。農場に面した区画になります。」

「かなり近くですね。」

「ダンジョンは火だと思われます。」

「よくわかりますね。」

「ダンジョンの入り口までは出て来れるので、そこから手旗信号によって情報を得ています。声は結界の様なもので届きません。」

「なるほど。そうやって情報を共有しているんですね。」

「今のところ10階までは攻略しております。」

「だいぶゆっくりなんですね?」

「まぁ、部隊ですから。あまり無茶をして、死なせる訳にはいきませんので。」


俺達の場合は少人数で移動するし、スピード重視で攻略している。本来なら一日1階層が新しいダンジョン攻略の目安とされているそうだ。


「なるほど。ところで、ここは“神の”何と呼ばれているんですか?」

「おお、そうであった。この辺一帯は“神の胃”と呼ばれておる。溶岩が溢れだす場所もあるので、なんでも溶かすという意味だと、歴史学者は言っておるな。」

「“神の胃”ですか。なんでも溶かす。やっかいですね。」

「そなたらもダンジョンに挑むのであろう?先行している我が部隊に便宜を図るよう、手紙を書いたので渡しておく。それと【火の魔法結晶】を渡しておく。中は相当暑いようだからの、切れぬように中でも拾得するんじゃぞ。」

「有難うござます。ところで、この街にも教会ってありますよね?」

「あるぞ。教会がどうしたのじゃ?」

「実は王だけに話したい事が・・・」

「分かった。だが武官長だけは同席させてくれ。」

「分かりました。」


俺が承諾すると、王は他の人達に向かって、うなずく。それだけで官僚の人達は食堂から退室した。この部屋に残っているのは俺達と王、武官長だけだ。


「手紙にもありました通り、これは“天使様”関連の事案なんです。」

「それは分かった。して教会がどう関係する?」

「俺達は神様からの指示で世界をまわるようになったのです。ですので時々神様から御告げを頂く事があります。」

「神から直々にか!凄いな。」

「はい。それで神が言うには、教会の地下に捕われている少女を救えと。」

「なるほどな。だが教会ならば、そこの巫女の権限でどうにでもなろう?」

「その少女というのが、呪われているそうなのです。いくら巫女の言葉とは言え、手続きや審議で時間がかかるでしょう。そこで、俺達が一切の責任を持ちますので、王からも一筆頂けないでしょうか?」

「そんな事か。神からの指示でもある。この非常時だしのぉ。よかろう。食事の後、直ぐに用意する。」

「ありがとうございます。」


拍子抜けするほどあっさりと許可を貰えた。これで明日は教会との交渉が上手くいくはずだ。


「明日は朝から教会に行き、装備を整えた後、その足でダンジョンへ挑ませて貰おうと思っております。」

「そうか。くれぐれも無茶をするでないぞ。そしてそなたらの活躍を期待している。どうかダンジョンを攻略して、我が民を救ってくれ。」


王は深々と頭を下げている。俺達は王が頭を下げるので、オロオロしてしまった。傍に控えていた官僚の人達もオロオロしている。


普通王はそうそう頭を下げない。王とは威厳のある存在であり、人の上に立ち、導かなければならないからだ。それなのに今回は頭を下げている。それほど王は俺達に期待していると言う事の様だ。王の威厳より、国民を思っての行動だ。良い王様なのだろう。


王は、俺達の明日の事を思って、早めに食事会を閉じた。本当は今までの冒険の話を聞きたいと顔に書いてあったが、我慢したようだ。


俺達は王城内の客室で明日の予定を立てている。


「民のいない王に、何の意味も無いからな。」

「??なんだテル。えらく詩的だな。」

「これは俺のいた国で読んだ本の受け売りだよ。」

「ふーん。ところで、明日はどうするんだ?」

「それなんだが、先に教会へと行くけど、もしかしたら、もめるかもしれない。」

「?それは無いだろう。巫女であるクルスもいるし、王の手紙もある。」

「そうだな。教会はなんとかなるかもしれない。けど問題は、助け出すドワーフの方だ。神からの手紙を尽く無視しているらしい。」

「そりゃ硬くなだな。普通神から手紙が来たら、従うだろうに。」

「いや、手紙すら開けていないそうだ。夢に出ようにも、拒否されるらしい。呪いのせいで、神の力すら及びにくいそうだ。」


神の力すら拒否できる呪いってどんなだよ。と最初はつっこんだが、神様曰く、人の夢とはその人の独壇場どくだんじょうらしい。呪いによって神の力が効き辛い上に、そのドワーフは人を拒絶する傾向があるので、夢にも出にくいそうだ。神の力をもってすれば、強引に夢に入れるが、その神の力のせいで脳に後遺症が出ないとも限らない。なので無理もできないそうだ。


「そうなった場合は、無理やりにでも連れて行く。」

「大丈夫なのか?」

「あぁ。いざとなれば【空間魔法】で転移しても良いし、【土魔法】で拘束してでもだ。」

「過激だな。」

「神が言うんだ。たぶんダンジョン攻略で不可欠になるんだろう。」


たぶんダンジョンだけでなく、今後の旅でも戦力になるはずだ。少し厄介な性格の様だが、こればっかりは直接会うしかない。


グラスとクルスも「分かった」と言って、俺の行動を支持してくれるらしい。予定が決まった俺達は明日に備えて早めに寝る事にした。


翌朝。日の出と共に行動を開始する。朝食はパンを料理長からもらって、移動中に済ませる事にした。


街馬車を使って教会へと来た。俺達は出迎えたシスターに話通して、一番偉い人を呼んでもらった。もちろん巫女であるクルスのおかげで、スムーズだ。やってきたのはドワーフ国の教会の長である教皇だ。


「これはこれは巫女様。よくぞドワーフの王都へ。ダンジョンが発生したので、助けに来て下さったのですね。」

「えぇ。神のお導きで参りました。そこで今回はこちらのテルより話があります。」


相変わらず巫女(お仕事)モードのクルスは神々しい。話を振られた俺は、ドワーフ王から貰った手紙を見せて、神からの指示ということで、地下に幽閉されているドワーフを連れだす話をした。


最初は難しそうな顔をしていた教皇だっただ、クルスの存在と王の手紙によって、承諾するしかないと分かり、あっさりとくだんのドワーフに会わせてくれた。


地下へと降りた俺達が見たのは、地下の独居房で座禅を組んで瞑想めいそうする、一人の女性ドワーフだった。


「誰かは知らないけど、出てって。」

「初めまして。俺はテル・キサラギ。君を連れ出しに来たんだ。」


俺がそう話しかけると、目をつむっていた少女が目を開けて、俺の事をにらみつけてくる。


身長はドワーフの平均よりちょっと大柄な120cmほどだろう。だいたい、小学校低学年くらいだ。


髪は燃えるような赤。肌は黄土色だ。目がつり上がっているのか、結構怖い。目の色も髪同様、赤い。とても意思の強そうな印象を受ける。筋肉もかなりついているのが、服の上からでも分かる。そして胸がでかい。さらしでも巻いているのか、胸の形は服の上からは分からないが、その膨らみから、かなりの大きさだと分かる。


これがドワーフの仲間、アバランチャ・コンヘラルとの出会いであった。



話が進まなーい。

ダンジョンはサクサク進める予定ですが、ドワーフちゃんがどう動くか。私のイメージでは、勝気で頑固な女の子。

テル君は、なんだか臭いセリフを吐いてますね。力づくでも連れて行くとも。この世界に来て過激になりましたね。

次回は連れだす話とダンジョンの話の予定。

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