スキル獲得がちょろ過ぎるぞ
今後欲しいスキルのお話。
と神様の手紙。
図書館は広かった。学校と同じくらいの建物に、蔵書が敷き詰められていた。俺は司書さんにスキルについて書かれている本の場所を聞き、エリア2呼ばれる場所に来た。スキルや魔法に関わる書籍が置かれていた。ちなみにエリア1は物語や伝記。エリア3は歴史や他国の話と地図。エリア4は禁書庫であった。
エリア2と言っても、ものすごい量がある。と思ったが、製紙技術が拙く、紙が一枚一枚分厚いために、本自体が大きくなっているだけだった。そのかわりに一冊が重い。めっちゃ重い。俺は二冊が限界で、近くのテーブルに運んだ。
スキルについての謂われや、真しやかな話しか書かれていない。ハズレである。こんなにある中から、目当ての戦闘に使えるスキルとその覚え方を探すのは、時間が足りない。
途方に暮れていると遠くにある一冊の本が、バサリと落ちた。明らかに怪しい。以前にもあったやつだ。きっとあの自称神様だろう。俺は素直にその本を拾って、テーブルに持っていき開いた。手紙が挟まっていた。案の定、神様からだ。
「はーい。神様だよ。ちょっと目を離した隙に、奴隷になっててびっくりしたよ。私の予想だと、最初の道を東に進んでザルツに行って、途中のゴブリンを倒した腕を見込まれるの。偶然来ていた王家の騎士と共に、王都に向かう。その途中でスキルの力に気付いて、騎士から色々学んで、王都で旅の準備に明け暮れるっていう、割と簡単な初期ストーリーだったのにね。そのために、わざわざ東側に荷物を落としたのに。まさか西に進むなんて。君はイレギュラーだね。本当に面白いよ。」
最悪だ。最初の一歩を間違えたばかりに、天と地ほどの差が生じている。だったら最初の手紙に、東に行くように書いとけよな。そして、まだ手紙は続いていた。
「まあ可哀そうだから、君の旅に役立ちそうな本を選んであげたよ。頑張ってスキルを覚えてね。今回は特別に手を貸してあげるけど、私も忙しいから、次の手紙がいつになるかは分かんないなぁ。なんて言っても、君はイレギュラーだからね。じゃーねー。」
神様の高笑いが聞こえてくるような、手紙だった。何がイレギュラーだ。ふん!
手紙はさっさと服の中に隠して、俺は本を読み始めた。そこには、実際の冒険者の旅がスキル獲得を中心に書かれた物語だった。
辺境の貴族の末席が、冒険を通じて大金を掴むまでの話だ。そこで著者は6つのスキルを特に褒めていた。【鷹の目】【交渉】【鍛冶】【付与】【ステップ】【隠密】である。俺はとりあえず、メモを取る事にした。
司書さんに尋ねると、筆記用具と紙のセットで銅貨20枚、2000円相当だ。紙が高いらしい。俺はこの6つのスキルと獲得方法をメモした。ちなみに本の題名は“ライゼの成り上がり~スキル編”であった。他のシリーズもありそうだ。
メモを終える頃には日没の鐘が鳴っていた。俺は慌てて本を返却して、司書さんの元へ向かった。手荷物を確認され後、銀貨一枚を返してもらった。もちろんギルド証に入金してもらう。
屋敷に戻って夕食を取った後、エバさんの指導の元、素振りをしてから自室に戻った。すぐに必要なスキルである【鷹の目】【交渉】【ステップ】に目を通す。
【鷹の目】:【遠目】と【地形把握】の複合スキル。共にレベル2であると【鷹の目】になる。視線を飛ばすように、岩などの障害物の影響なく、遠くを見る事ができる。レベルが上がると距離が延びる。レベル2で3km先の人の顔が判断できる。壁に囲まれたり、屋内に視線を飛ばす事はできない。
【遠目】:通常より遠くを見る事ができる。レベル2で、1km先の人の顔がわかる。障害物があると、先は見えない。習得のコツは、より遠くを熱い目で見る事である。空を飛ぶ鳥、遠くの木々、さらに遠くの目標など、徐々に距離を広げながら、限界の先を見たいと熱望する事。
【地形把握】:山や丘、河川の場所等の地形を把握できる。街中だと建物の位置や道が認識できて、迷子にならない。ダンジョンでは必需スキルである。習得のコツは、目を閉じて自然を感じる事である。自室、家の中、街中、都市全体、郊外へと徐々に広くしていき、大雑把にでも感じるようする。そのためには、街中を歩き回るのがオススメ。
【交渉】:商品を売る際や人を説得するにも役立つ。レベルが上がると、他人に損を気付かせない程の話術ができる。【洗脳】等のスキルの基礎となる。習得のコツは、とにかく買い物の際に、商人と話す事。内容は問わない。金銭が絡むと若干効率が良いが、レベルが低いうちは相手を怒らせ、買い物ができなくなることもあるので、注意が必要。
【ステップ】:近距離、中距離の冒険者に必須のスキル。瞬発的な加速と足運びで、相手に近付くのも遠ざかるのも、攻撃をかわす事も可能。習得のコツは、スタートダッシュを繰り返す事。障害物を置いて、それを避けながら短距離を走る事で、足運びと瞬発力が身に着く。
この本は分かりやすい。しかもお金がかからない所がいい!
さっそく【地形把握】を覚える練習をする。まずは自室からである。ベッドと小さな箪笥と机しかない小さな部屋だが、俺は目を閉じて意識を集中させる。
(この部屋で剣を振り回したい。でも障害物が邪魔。剣を振りぬくためには周りを知る必要がある。剣の為に・・・)
俺は一応剣を構えながら、ベットや箪笥、机の場所を思い出す。すると、ゾクリとスキル獲得の寒気が来た。すぐにステータスを確認すると、【地形把握】が増えていた。ついでに【周辺把握】も増えていた。一石二鳥である。俺は笑いが止まらなかった。
「ちょろい。スキル獲得がちょろ過ぎるぞ。」
夜も遅いので、明日を楽しみにしながら眠りに着いた。
■ステータス
テル・キサラギ 人族 男 18歳 レベル5
体力:60 魔力:30 筋力:35
速度:30 耐性:20 魔耐:15
召喚獣:氷の精霊【ユキ】
スキル:【オール・フォー・ソード】【採取2】【伐採1】【鑑定1】【スラッシュ1】【二段突き1】【地形把握1】【周辺把握1】
今回も説明回になってしまいました。
次回は、スキル獲得とスキルレベル上げ。の予定。
会話とかが欲しいなぁ。話を進めたいなぁ。
(´・ω・`)