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必ずドワーフ国の王都をダンジョンから解放して見せます。

ドワーフ国、王都と王様との話。


「行かないんですか?」


俺達はドワーフ国の王都を目の前にして動こうとしない救援物資を運ぶ援助部隊の人達へと話しかけた。


「あぁ君達か。なんでも、ここに来てダンジョンに入るのが怖くなっちまってな。隊長も兵士の気持ちを感じて、入るメンバーを交代できないかと悩んでるらしい。」


どうやらダンジョンから出れないと言う事が現実味を帯びて、兵隊の中に怖気づいた者がいるそうだ。


「なら俺達が代わりに行きますよ。どうせ行く予定ですし。」

「本当か!直ぐに隊長を呼んでくる!」


そう言って兵隊の一人が、一際大きな馬車へと走って行った。そしてしばらくすると、強面で、真っ黒に日焼けした、角刈りの隊長さんが歩いてきた。傍には、文官っぽい戦闘とは縁が遠そうな人と一緒だ。


「君達か。なんでも、代わりに物資を運んでくれるとか?」

「そうです。代わりと言ってはなんですが、この馬を人族の王様に返して頂けますか?」

「王と知り合いなのか!?いや。その前に身分を確かめたい。物資を持ち逃げされて、ドワーフ国で売られるとも限らん。」


どうやら考えている事が声に出るタイプらしい。俺がわざわざ王と知り合いだと匂わせたにも関わらず、泥棒するかもと言ってくるのだ。失礼だろう。


「どうぞ。王から預かった書面です。」


俺は“魔法の袋”から一通の手紙を出した。この手紙は、ウラガが王様に言って一筆書いてもらったもので、俺達の身分の保障、俺達の要望に出来る限り応える事等が書かれている。


受け取った隊長は、一緒に来た文官っぽい人へと手紙を渡す。彼は一通り読んで、王の印鑑等をチェックしている。


「ふむ。どうやら本物らしい。俺達の荷物、どうか宜しく頼みます。お使いの馬車は責任を持って王へと返還致しますので。」


話がついた。


俺達は皆、馬車を操縦する事が出来るので、援助物資を積んだ馬車4台を引き受ける。残りは人族の援助部隊の人が6人で操縦する様だ。


それまで人が乗っていた部分には、魔法使いが“魔法の袋”に詰め込んで来た食料を詰め込んでいる。馬車が無くなった彼らは、これからまた人族の国へと歩いて戻るらしい。お疲れ様です。


馬車を運転しながら俺達は援助部隊の後に続いて、ダンジョンとの境界へと進んでいく。


境界から内側は、それまで道に生えていた草が焼けて灰になっているのでよくわかる。


トレーネ湖の大渦や、獣人国のダンジョンの砂で引きこまれた様な劇的な変化を期待したが、境界を越えても何も起こらなかった。


俺は不信に思って、後ろを振り向いた。するといきなり境界を一直線に巨大な火の壁が吹きあがった。


「あっつ!」


突然現れた火の壁から来る熱波に、俺だけでなく他のメンバーや馬達も驚いている。


そして厄介な事に、その火の壁はゆっくりと王都側に移動し始めたのだ。当然俺達は追いつかれまいと、馬車を走らせてダンジョンの中央。王都へと走らざるをえない。どうやら外へと逃げようものなら、今の様な火の壁によって阻まれ、無理して通ろうものなら焼け死ぬ事になりそうだ。


「これで確定だな。」


俺達はそれぞれアイコンタクトをとって、頷き合う。俺達はダンジョンから逃げられないと言う事で、ここが“天使”関係のダンジョンだと言う確信を得たのだ。普通のダンジョンなら出入りは自由のはずである。


王都は山の中にあった。山をくり抜いて空いた穴や、出てきた土を建物に再利用しているものなどがある。そしてあちこちから煙突が飛び出しているのが特徴的だ。


「やっぱり鉄鋼業が盛んなだけあるな。」


時刻は昼を過ぎているので、昼食様の煙ではないだろう。火のダンジョンの影響で、11月だと言うのにこの辺はとても暖かい。暖房用の薪の煙でもないだろう。


ならば煙突から出ている煙は、鉄鋼業のものしかない。


俺達が城壁で指示された内容は、支援物資を一端王城へと持っていってほしいというものだ。そこで一括管理しているそうだ。


俺としては、神様から協会に捕まっているドワーフの女の子を救わなければならない。王と会うのは願ったりかなったりだ。


ちなみにドワーフ族は、俺が想像していた通りの姿形だ。身長が120cmほどしかないが、筋肉がしっかり付いていて、がっしりしており、若干耳がとんがっている。肌の色は雑多であり、白から黄土色、黒まで色々だ。さらに、ひげを携える事が常識であり、長すぎず、短すぎず、それでいて丁寧に整えられている。ドワーフのエチケットとして、髭のお手入れは必須のようだ。


俺達は城門で貰った地図を頼りに、支援物資を積んだ10台の馬車が街を進んでいく。


地図を見ると、王都には何か所か間欠泉が噴き出している場所があるようだ。その水を使って北側は農場にしているようだ。


国の右半分は工場区と呼ばれており、鉄鋼業の作業場がひしめき合っている。鉄を冷やすための水も間欠泉からの水を利用しているようだ。


そして街の左側には“温泉”の文字が!どうやらここだけ、温泉が湧いているらしい。という事は間欠泉の水は、硫黄を含んでいないのだろう。だから植物も育つのだが。


他に特徴的な事と言えば、山に囲まれている事くらいだ。山は火山なのか、植物がほとんど生えていない。代わりに白い蒸気があちこちから噴き出している。


王都としては一番狭いのだが、それは地表に出ている部分だけの話だ。ドワーフ達は地下へとまるで蟻の巣の様に住居空間を広げている。


こんな地熱の高い場所で地下へと移動するなど、地獄と思うかもしれないが、ドワーフ国には大量の“火の魔法結晶”が取れるので問題ない。【火魔法】は発熱だけでなく、吸熱もできる。なので一家に一台、クーラーの様に“火の魔法結晶”を置いておくだけで、快適空間になるそうだ。


俺達はとりあえず王城へとやってきた。王城も例にもれず土でできている。3階建てで、結構広そうだ。


俺達を先導していた人族の救援部隊の人が、王城の門番に話を通してくれる。俺達は王城の裏手にある倉庫へと馬車を走らせて、救援物資を置いておく。倉庫の中の食料はまだまだあるが、国民全てを賄うのだ。あっという間に消え去るだろう。


「王が皆様にお会いになるそうです。」


ドワーフの兵士が俺達を王に合わせるために、謁見の間へと連れて行ってくれた。


ドワーフ国の王城も、他の国と同様で中が迷路になっていた。地下に下りたり三階まで登ったり、らせん階段を下りたりして方向感覚が無くなって行く。


しかも王城はほとんど窓が無い。明かりは松明が灯されており、換気用の小窓が開いているくらいだ。


案内されている間になぜこんな作りなのか聞いたら、“火の魔法結晶”で冷気を作っているので、それを逃がさないためだそうだ。部屋の中は明かりとり用の窓があるので、暗いのは廊下だけだそうだ。これもドワーフ国で生きて行く上での知恵だろう。


そうこうしているうちに、俺達は謁見の間へと辿り着いた。謁見の間は、他国同様、真っ赤な絨毯が引かれており、奥には少し高い所に王の玉座が据えられている。


部屋の中はそれは美しかった。壁や部屋の中にある柱に至るまで、全てに彫刻が施されている。しかもそれはドワーフ国の物語でも書かれているのか、ストーリー性がある気がする。産まれて、成長して、戦って、家族が出来て、余生を暮らし、平和になって行く。そんな物語だ。他にもドワーフの祭りだろうか、踊っている風の彫刻がいくつも見受けられる。


金や銀といった装飾は無いが、荘厳さを感じさせる部屋だった。


兵隊さんの案内で俺達は王の目の前まで移動する。


「おぉ!よくぞ参られた人族の方々!さぁ顔を上げて楽にしてくれ!」


めちゃくちゃ声が大きい。かなり離れた場所にいるはずなのに、耳を塞ぎたくなる程の声量だ。耳を塞いだら不敬罪で捕えられるかもしれないので、我慢するしかない。


王は何と言うか、元気な性格の様だ。兵隊出身かもしれない。ハキハキとした者言いで、男気が溢れている。見た目はドワーフとしては長身で130cm程で、筋肉も通常よりついている気がする。斧とか持ったら、かなり似合うだろう。


まずは救援物資を運んだ救援部隊のリーダーが挨拶をしている。俺達は紹介されるまで、部屋を見ている。もちろん視線だけを動かしてだ。


「そしてこちらが、協力してくれた冒険者のテル達です。」

「ご紹介に預かりました、テル・キサラギです。そしてこちらが仲間の」

「ウラガーノ・インヴェルノです。」

「グラス・フルールと申します。」

「クルスタロ・オルトロスと申します。」

「うむ!世話になったな!見ての通りダンジョンに呑まれてしまい、抜け出せぬ。我が王軍がダンジョンを攻略するまで、自由にしてくれて構わない。」


王は既に王軍をダンジョンに向かわせているようだ。俺達は彼らが攻略するまで客人として扱われる様だ。だが俺達は待つ気はさらさら無い。


「王よ。人族の王と、獣人国の王から手紙を預かっております。拝見下さい。」

「人と獣人の王からか!見よう!」


俺は近くにいた兵隊さんに手紙を渡す。この手紙は俺達が“天使の解放”のためにダンジョンを攻略している旨が書かれている。協力してくれという内容だ。


「よかろう!ダンジョンへの挑戦を許可する!どうか我が国も救ってくれ!」

「必ずドワーフ国の王都をダンジョンから解放して見せます。」


かなり話がスムーズに進んでいく。王としても早くこの状況を打開したいのだろう。戦力は幾らでも欲しいのだ。


時間も昼を過ぎているので、とりあえず俺達は今日一日は、王城で休ませてもらう事になった。


俺達は部屋へと案内されて、明日への準備を始めるのだった。


とうとう王都へ着きました。かなりスピーディーを意識して書いていますが、いかがでしょう?

テル君は、既に4人目の王なので対応の仕方がスムーズですね。しかも王は男気溢れる人のようなので、思いっきりも良いようです。

次回は火のダンジョンの話の予定。

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