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王様とか教皇様とか、色々衝撃だったよなぁ

王と教皇の話。

「陛下、教皇様、クルスタロ様と護送して下さった方をお連れしました。」


開かれた扉の先にあったのは、そこそこ広い謁見えっけんの間だった。


床一面には真っ赤な絨毯が敷き詰められており、ちょっとしたパーティーでも開けそうだ。そして奥は、壁から壁までの無駄に広い階段になっており、10段ほど上がったところの中央に玉座が置かれていた。玉座の色は黒、壁や柱は白、そして赤い絨毯。良くも悪くも良い趣味だ。


俺達は玉座の前の階段下まで連れていかれる。俺達はすかさずひざまずいて、頭を下げる。クルスは一人、堂々と立ったままだ。


後ろで扉が閉まる音が聞こえる。そして扉が完全に閉まった事を確認してからか、王はいきなり叫び出した。


「お姉ちゃん!いったいどこ行ってたの!私も民も、心配したじゃない!」

「ちょっとーそこまでー。」

「何がちょっとよ!二月近く居なかったじゃない!」


俺達の頭の中は、驚きと疑問で一杯になる。


(お姉ちゃん?って事は王様はクルスの妹!?しかも口調が元に戻ってる。周りの人たちも理解してるって事か?ってか王様って何歳だよ。)


「そうよークルスタロちゃん。おばあちゃんも心配したわー。」

「うー。」

「うーってうならないの。相談くらいして欲しかったわー。」

「相談したらー出してくれないー。」

「そうね。可愛い孫の頼みでも、ダンジョンへは行かせられないわぁ。」


俺達の頭の中は、さらに驚きと疑問で一杯になる。


(おばあちゃん?って事は、教皇様ってクルスの祖母にあたるのか。ってかダンジョンの事もバレてる。あ。森の剣の人たちが報告したのか。ってか、教皇様何歳だよ。)


「旅のお方。姉がお世話になりました。顔を上げて楽にして下さい。」


王様であるクルスの妹が俺達へと声をかける。俺達はその言葉に御礼を述べてからゆっくりと立ち上がり、王様と教皇様の姿を近くで見る。


王様は、クルスとは異なり髪も瞳も真っ黒だ。背中の小さな翼も、額からちょっと生えている角も、何もかも真っ黒だ。しかも服装まで真っ黒だ。ドレスっぽいが、ゴテゴテした感じは無くスマートであり、ワンポイントのフリルでアクセントを出している。


そして見た目は違うが、クルスを思わせる面影も見て取れる。年齢は18歳くらい。あれ?クルスの妹のわりに、年齢はそんなに変わらないのかも?


と思った俺は、隣にいる教皇へと視線を向けて驚く事になる。こちらは、年齢が40歳近い祖母と言う割には若過ぎる見ためだった。


教皇である祖母は、黒い王とは正反対で真っ白だ。紙も服も全てが白い。辛うじて瞳だけは白っぽい黄色というだけで、他は本当に真っ白だ。服装はシスターさんが着るような形だが、明らかに高級そうな材質で、白い装飾がされている。こちらはフリルのワンポイントは無しだ。


「初めまして。私はテル・キサラギと申します。」

「ウラガーノ・インヴェルノと申します。」

「グラス・フルールと申します。」


「私は魔族の国の王をしています、マゴス・バシレウスです。姉がお世話になったそうで、ここまで連れて来ていただいて、本当に有難うございました。」

「私は魔族の国の教会で教皇をしています、レスコス・オルトロスと申します。孫がお世話になりました。」


本当にクルスの親族の様だ。俺達は驚きで一瞬の間、ボケーっと思考を停止して二人を見ている。うん。確かにクルスに似ている。当り前か。


「ふふ。他種族の方には私の若さって珍しいでしょう?魔族は長寿なのよ。こう見えて、とっくの昔に3ケタを越えてるのよ。」

「「「・・・えぇ!」」」


俺達は謁見の間と言う事も忘れて大声をあげてしまう。それもそうだ。俺は今までクルスが同年代くらいだと思っていたのに、魔族の寿命が長いなら、見た目と年齢は関係が無くなってしまう。


人族のウラガと獣人族のグラスも驚いている。というか二人は魔族が長寿だと知っていてもおかしくないのだが。何に驚いているんだろう?


「大丈夫―。私は今年でー19歳くらいー。」

「・・・あ。はい。」


どうやらクルスは見た目通りらしい。と言う事は、妹さんは何歳なんだ?妹さんは王様なので聞くに聞けない。


「ちなみにー妹はー18。」

「ちょっとお姉ちゃん!」


クルスがさらっと年齢をばらす。仕返しの意味も含んでいるのかもしれないが、疑問が消えてスッキリだ。


そして俺はある手紙を渡す事を思い出す。


「マゴス王。人族の王から私の事を証明する手紙を頂いております。お目通し願います。」


俺は王へとそう告げてから、“魔法の袋”から手紙を取り出して、俺達の横に控えていた王軍の団長さんに手紙を渡す。


彼は手紙を一通りチェックした後、スタスタと王の元へと送り届けた。


そして王と教皇は手紙を読み始める。みるみるうちに顔色が変わっていく。


彼女たちが手紙を読み終えて、何かしら考えている風な顔をする。


「今回、“神の舌”にて生活を司る天使様を、クルス様の援護のも解放いたしました。こちらが証拠です。」


俺は再び“魔法の袋”をゴソゴソして、生活の天使様から頂いた、魔法結晶の半分を差し出す。


再び団長が取りに来て、王と教皇へと渡してくれる。


二人というか、団長を含めた全ての人がザワザワと騒ぎ出した。実は、王と教皇と団長以外に主要な官僚達が揃っていたようだ。魔法で姿を隠していたようだが、俺は【空間把握】を使っていて、彼らの存在だけは最初から分かっていた。


「ばれていたようですね。商業長。こちらへ。」


王がそう言うと、まるできりが晴れるかのように、後ろの壁だと思っていたところに。横一列で官僚達が姿を現す。そして、ひょろ長い商業長と呼ばれた人が王の傍へと行き、俺の差し出した魔法結晶の塊を【解析】する。


「5つの魔法結晶からなる、球体状の半分ですね。どれもが品質は神級です。天使様から貰ったと言われても、疑う余地は無いと具申します。」

「そうですか。ありがとう。」

「と言う事は、クルスちゃんは天使様を助けに行ったって事でいいのね?」

「そうー。」

「神様から信託を頂いたのかしら?」

「今回は手紙―。」

「見せて頂いても?」

「うん。」


クルスが無造作にポケットへと入れていた手紙を団長さんへと預ける。保管状態が悪いのか、手紙はしわくちゃだ。


「お姉ちゃん!神様からの手紙をぞんざいに扱って!」


どうやら妹の王様はしっかりした性格の様だ。神から選ばれる王だけのことはある。


そしてクルスから預かった手紙を受け取って読んだ王と教皇は、はぁと深いため息を漏らす。


「納得はしました。テル様達が世界を救う存在で、神のお告げにある存在だとも。そして姉がなぜ急に居なくなったのかも。」

「そうね。もし神様からの手紙が見つかったら、審議と準備で一月は確実に動けなったわねぇ。」


戦う事を宿命づけられた巫女であっても、いつもの討伐とは違い、これほど大きな事なら準備に時間をかける事になるらしい。もしそうなれば、俺達と出会う事も無かっただろう。だからクルスはこっそり王都を出る必要があったようだ。


「今回の事は不問にします。」

「もちろんよー。」

「お姉ちゃん!」


妹にたしなめられるクルス。悪びれた様子も無く、受け流している。


「はぁ。まぁいいわ。今日は姉の帰還と“神の舌”の天使様の解放を祝って、祝賀会を開きます。是非皆さんも参加して、お話を聞かせて下さいね。」

「部屋は教会でも用意できますが、王城とどちらがいいですか?」

「私は―外の宿がいいー。」

「お姉ちゃんは黙ってて!お姉ちゃんは王城か教会どっちかよ!もし逃げようとしたら、監視も付けるわ!」

「うー。」

「俺達・・・私たちはどちらでも構いません。」

「そう。じゃあとりあえず今日は王城で泊まってってください。メイド長。お客様の案内とお世話を何名か選出して下さい。国賓として御もてなしして下さい。」

「畏まりました。」

「料理長さんも、お願いしますね。」

「畏まりました。」

「ではテル様、ウラガ様、グラス様、あとお姉ちゃん。また後ほどお会いしましょうね。」


王がそう言って一端話合いはお開きとなった。王軍の団長さんが王達から手紙や魔法結晶を預かって、俺達へと返却してくれる。


その後はメイド長が客室まで案内してくれた。もちろんあの木製のエレベーターに入っての移動だ。【風魔法】で速度を落として、最後は【水魔法】で衝撃を吸収して一階まで下りる。といか落ちる。


客室へと通された俺達は、とりあえずソファに座って、メイドさんが淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。


「王様とか教皇様とか、色々衝撃だったよなぁ。」


俺達はクルスの妹の王と、祖母である教皇について、クルスから色々と聞いていく。


最初は祖母が教皇になったそうだ。教皇になて数十年後、クルスと妹が生まれたらしい。


次にクルスが15歳の時に、神様から巫女として選ばれたらしい。その当時でも、教皇と巫女が血縁であると言う事で、国中で奇跡だなんだと祝福されたらしい。


そして翌年、妹が15歳の時に神様から王として選ばれる。さすがに血縁者が3人も、国の最重役に選ばれた事に不信がる人もいたが、巫女と王は神が選ぶものだ。こればかりはどうしようもない。一時の不信は直ぐに解消されて、また国を挙げてのお祝いムードになったそうだ。


ちなみに、妹さんは新米国王だ。まだ画期的な政策等は無いが、確実に正確に着実に、それでいて遅くなる事は無い政策手腕が評判になっている。今後が期待された王なのだ。


クルスから他にも色々聞いているうちに、あっという間に時間は過ぎて、俺達は晩餐会ばんさんかいへと招待される。ちょっとだけ正装して、俺達は会場へと移動するのだった。


親族が国の偉いさん。テンプレですね。

テル君はさすがに慣れたもので、王といえども伝える事は伝えるスキルを得た様です。まぁ王と教皇がクルスの親族ってのもあったかもしれませんね。

次回は、晩餐会と報酬と街の話の予定。

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