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予想してたけど、こんな凄いエレベーターは初めてだ。

王都と王城の話。



「もうやだー。冬眠するー。」


クルスが馬車の中で何か言っている。魔族って冬眠できるのだろうか?獣人なら出来そうな気がするが。


門番によって誘拐犯にされそうになった俺達は、クルスの一喝によって救われて、今は第一大通りを馬車で闊歩している。


「助かったけどよー。何?クルスって逃亡でもしてたのか?」

「うっ・・・ひみつー。」


何が秘密だ。きっと勝手に出かけて、王都では大騒ぎになったに違いない。門番さんの崇拝っぷりを見る限り、クルスはこの国を代表する人の様だ。そんな重要人物が消えて数週間も見つからなければ、そりゃ犯人扱いされるだろう。


「まぁそれより、これからどこ行けば?」

「たぶんー協会が動くー。捕まる?」

「え!?逮捕されるの!?」

「保護ってかんじー?」


結局、しばらくは自由がなくなるだろう。捕まるまでは、観光をしようと言う事になった。


魔族の国は、とにかく発展している。魔族は魔法が得意なので、土木工事や建物の建設には【土魔法】が大活躍する。


道は中央に馬車用の道が二車線。その横に歩道が整備されている。地面はしっかりと【土魔法】で平らに固められており、馬車はほとんど揺れない。


視線を道から建物へと移すと、建物も凄かった。平均して5階はありそうなビル群が立ち並んでいる。これも魔法でがっしり固められているので、ここまで高さが出せるのだろう。


しかも色がカラフルだ。緑や赤。白に黒など、本当に色とりどりだ。しかもガラスまではめられており、イタリアのベネチアみたいな印象だ。


しかも、おしゃれに気を使っているのか、街には緑や花が溢れている。馬車道と歩道の間には細い木が並んでおり並木道のようだし、街頭にも家の壁にも花が飾られている。


明らかに水やりが面倒そうとか考えてしまうが、それすらも【水魔法】でできてしまうのだろう。


「わー!綺麗―!お店もおしゃれ!」


大通り沿いは、人族の王都同様、観光向けの様に綺麗になっており、ウインドウショッピングができるお店や、おしゃれなカフェなんかが並んでいる。


そんな美しい街並に似合うように、魔族にの人たちの服装もこの世界では最先端だ。燕尾服や、ワンポイントフリルが流行っているらしいので、そうした服装の人が目立つ。女性の服は、スカートやパンツスタイル、ハイネックやセーター等、冬の終わりでありながら春へと向けた、やわらかい色合いだが多彩な色合いで、華やかだ。


俺達がゆっくりと馬車を走らせていると、前方に何やら待ち構えているのが見える。


「クルスーお出迎えだぞー。」

「クルスとかー、そんな人はいませんー。」

「はいはい。」


待ち構えていたのは、銀色の甲冑に身を固め、真っ黒な羽を生やした馬にまたがっている。傍らには魔族の姿と魔法の光を表した国旗をはためかせ、いかにも王軍です!という恰好の人が10人程いる。


俺は馬子を彼らから少し離れた位置で止める。


「クルス様は?」

「中でごねてます。」

「分かった。こっちへ。」


俺達にそう言って隊長と思しき人は歩きだした。俺達は彼の後を追いかけて、馬車をとことこ走らせる。


そして、あれよあれよという間に、俺達は王門までやってきていた。


王門は、高さが7mはありそうな、真っ黒な鉄の扉だ。そこに魔族や魔法をあしらった美しい装飾が施されていている。


それに見合うように、王城の壁は10m以上あり、存在感だけで俺達を圧迫してくる。


「あー。私の自由も終わり―。」

「話せば分かってくれるって。」

「説得してねー。」


王軍の人が、王門にいる人たちへ向かって声を張り上げた。


「巫女様をお連れした。彼らは巫女様を連れて戻ってくれた恩人である。早々に門を開けよ!」


その言葉が終わると直ぐに、門がギギギと音を立てて開かれた。相当重い物のようで、サイの様な動物の力を借りて開けている。


「行きましょう。」


王軍の人に導かれて、俺達は魔族の国の城へとやってきた。


王城へと入った俺達を出迎えたのは、大量の協会関係者だった。彼らは道の横にずらっと並び、拍手で俺達を迎えてくれた。


「よくぞお戻りに。」

「無事でなにより。」

「君達、有難うね。」


等々、様々な声をかけられながら俺達は馬車を進める。なんだか居心地が非常に悪い。その元凶であるクルスはというと、未だに馬車の中で隠れている。


王城の入り口へと辿り着いた俺達は、馬車から下りる事になった。当然クルスも降りてくる。


「巫女様。念のため、フードをお取り下さい。」

「分かりました。」


またもや、クルスは威厳たっぷりな声色で優雅にフードを取り払う。そしてクルスの姿が露になると、教会関係者だけでなく、王軍やメイドさん達までもが一斉に拍手をしだす。


その拍手の音は凄まじいもので、爆音となって俺達を襲ってくる。耳の良いグラスは堪らず耳を押さえている。


「王様と教皇様がお待ちです。皆さまもどうぞ。」

「案内、宜しくお願いしますね。」


俺達は王軍の団長さんのっぽい人の後をついて行く。ちなみに、俺達がすんなり王と会えるのは、王都へ入る際にクルスが身元を保証すると発言したためだ。それが無ければ、いくら送り届けた人であっても、王と面会できるはずが無い。報奨金を貰っておさらばが普通だろう。


王城は、他の建物よりも倍ほど高い。20mは優にある。まるでビルの様な建物が規則正しく並んでおり、入口から奥へと行くに従ってさらに高くなる。ひし形のような並びで、一番奥が高く、一番手前が低い。そんな作りになっている。


そして案の定、中は複雑な迷路となっている。階段の途中で別の塔へと移り、さらに階段を下りたり上がったりする。


そうしてようやく一番奥の建物へとついた俺達は、この世界で初めて見た物に驚く事になる。


それは木でできた箱であった。箱と言っても、動物園で見かけるようなおりに似て、底板以外は木の棒で囲われている。


「こちらにお乗りください。」

「ちょっと揺れますわよ。」


(((わよ!?)))


本来のクルスなら絶対に言わないであろう、貴婦人っぽいセルフに俺達はさらに衝撃を受ける。どうやらクルスは演技を続けているようだ。


俺達は全員で箱の中へと入った。


「それで、この後どうなるんだ?」

「たぶん上に飛ぶよ。」

「!!」


ウラガの質問に対して俺が答えると、王軍の団長さんは驚いた様子で俺を見てくる。


俺の予想ではこれはエレベーターだ。どういう仕掛けで動くのか、とても楽しみだ。


「では、行きます。」


団長さんがそう言うと、エレベーターの前で控えていた男がおもむろに魔法を使い始めた。その身体から茶色い魔法光が一瞬放たれる。


すると、木の箱の舌の地面がギューーンと延びて、箱ごともの凄い速度で押し上げていく。超原始的だ。


「キャ。」


グラスがバランスを崩しそうになるのをウラガが支えてやる。チッ。こんなところでもイチャイチャしやがって。羨ましい。


「次です。」


団長さんがそう言うと、それまで押し上げていた土が急に止まる。だが箱はそのままの勢いで地面から離れて上へと飛んでいく。


そして、箱の勢いそのままに、今度は【風魔法】が発動されてさらに上へと押し上げられる。魔法を使ったのは、土から放り出された直後に一瞬見えた小窓から、手だけを出していた兵隊さんだろう。


そして【風魔法】の力が弱まり始めるが、それより先に天井へとぶつかりそうになる。なんと、俺達は今まさに天井に衝突しようとしていたのだ。【風魔法】の人が威力を誤ったのだろうか?


「ちょ!ぶつかるぞ。」

「ご安心を。」


グラスの言葉に対して団長さんは、優しそうな落ちつかせるような声色で問題ないと告げてくる。


そして壁にぶつかりそうになった時、またもや小窓が見えてきて、その小窓にいた男性が魔法を発動する。


彼の放った魔法は【空間魔法】であったようだ。俺達の乗った木の箱は、天井に激突する寸前で、その壁を突き抜けた先へと転移する。


きわめて短い距離だが、かなりの質量をを転移させているので、あの魔法使いさんはかなりできる。俺は勝手に評価を下す。


天井を無事クリアした後は、自然落下するだけだ。もちろんここでも魔法が登場する。床に叩きつけられそうになる前に、【水魔法】による水のクッションで勢いを完全に吸収して、優しく床へと着いたのだった。


「予想してたけど、こんな凄いエレベーターは初めてだ。」


俺達は木の箱から歩きだす。グラスは今ので酔ってしまったようで、ふらふらになるが、ウラガがしっかりと支えている。


クルスはというと、慣れているのか表情や姿勢もビシッとしたままだ。本当に同一人物だろうか?


エレベーターを降りた先にあったのは、またしても黒い扉だった。だが今度は2mくらいの小さな物だ。それでもしっかりと装飾が施されていて、一級品だと分かる。


やっとの事で王へと対峙する時がやってきたようだ。俺達は服を正して準備する。俺達の準備が終わったのを確認した王軍の団長さんが、扉の外から来訪者が来た事を伝える。


そしてゆっくりと王への最後の扉が開かれていくのだった。


王へと会うはずが、なぜかそこまで辿り着くまででこの文章量。

どうしてこうなった。

テル君は、あっさりとエレベーター気付いた様ですが、その仕組みは荒業だったようです。空を飛べなかったり、魔法を使えない人が王へと会おうとすると大変ですね。防犯上の設計だと思います。

次回は、王との話の予定。


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