巫女パワー半端ないな。
王都の話。
ちょっとした絵があります。
参考になればと。
王都に対して南から進んだ俺達は、クルスのアドバイスで第一門へとやってきた。
「「「でけー」」」
王都の外壁は、5m以上は確実にある。しかも外壁の上を、兵隊さんが歩いている。上部に通路があるようだ。
そしてその城壁が延々と続いている。
「この壁ってどこまであるんだ?」
「うーん。一辺15kmくらいー?」
「「「15km!?」」」
そりゃ広いわ。どおりで先の方が霞んで見えるはずである。
俺達は王都へ入ろうとしている列に行儀よく並んで、順番を待っている。目立つのは冒険者風の魔族や、商人だろうか?何台もの馬車を引き連れた団体さんもいる。
そのほとんどが魔族であり、他種族は珍しいがいない事も無い。まぁ、魔族と獣人族は似ているのでパッと見は判断がつきにくいのだが。あ。小人がいる。ドワーフかも。
列に並んでいる間、クルスから話を聞く。
王都マゴスは、一番左奥の海に面したところに、王城と官僚達が住む貴族街の第1区。
次に、大商人や冒険で成功した人が住む富裕層の第2区。
そして、昔からある市民街で、今では第一市民街と言われる第3区。
数百年前に増設された、第二市民街の第4区があるらしい。
門も第1から第6まであり、門から一直線に大通りが通っているらしい。
そして武器屋等は、第2-5と言うように、大通りの交わる場所にあるそうだ。
「あと、スラムは行かない方がいい。きっと絡まれる。」
第4区のの右奥にある大きな区画はスラム街だそうだ。魔力が安定している王都には、国中から人が集まる。当然、事業に失敗したり、騙されたりして金が無くなる人も出てくる。そうした人たちが集まって、スラムを形成したらしい。
そしてそのスラムに併設するように、大実験場があるそうだ。実験場と言っても、加工品や製造の業者が集まった場所がメインだ。だが本当に実験も行われている。
魔力の高い魔族にとって、魔法は身近なものである。なので魔法をいかにして製品に繋げるか。どうすれば効率良くなるかを試している。
そんな生活に関わる他に、純粋な魔法の進歩をはかる研究機関もあるそうだ。街中なのでド派手な研究は出来ないが、新魔法の開発を行っているそうだ。
「あと、大噴水は行くべきー。とっても綺麗―。」
クルスが絶賛するのは、王とのちょうど中央にある憩いの森と、その中にある大噴水だ。大通り2-5、つまり武器屋とかの近くにあるらしい。
巨大な王都を支える水は、川以外にこの噴水からももたらされる。市民にとって重要な水場だ。魔法を使おうにも、空気中など周りの水分が少なければ消費魔力が多くなる。なので水場は常に衛生的に守られ、その周りの森も美しく保たれているそうだ。
「お。そろそろ俺達の番だな。」
クルスの話を聞いている間に、順番はどんどん進み、前の人たちが終われば俺達の番になる。
「ちょっと隠れるー。」
「え?クルス??」
クルスはフードを眼深にかぶり、誰だか分からないような格好をする。
俺達はクルスの行動を不信に思いながらも、やってきた門番さんに集めたギルド証を提示する。
「人が2人に、獣人族が1人の冒険者とー。あの者の身分証は?」
「クルス、身分証だって。」
「うー。はいこれー。」
クルスが差し出したのは、ギルド証ではなく、厚手の紙に書かれた証書の様なものだった。俺はそれをクルスから受け取り、門番へとすぐさま渡す。
「なになに~・・・!!クルスタロ・オルトロス様!!」
門番が大声を上げると、周りにいた兵士たちが一斉に集まってくる。詰所にいた人も駆けつけた。
そして俺達へと向かって、銛や剣、弓を向け、さらには魔法を放とうと準備しだす。
「貴様ら!良くも巫女様を攫ったな!」
「「「えぇ!!?」」」
理由は分からないが、俺達は巫女を誘拐した犯人だと思われている様だ。俺達はすぐさま両手を上にあげて、抵抗の意思が無い事を伝える。そしてクルスへ向かって声を投げかける。
「クルス!なんとか!「武器を降ろしなさい!」」
クルスはフードを取り、馬車の中から外へと踏み出す。明らかに普段のクルスとは印象が違う。
「かの者達は、私をここまで連れてきてくれた恩人だ。即刻武器を降ろしなさい。」
「ですが巫女様、この「三度目はありませんよ!」」
クルスの威圧するような声に、門番長らしき人は、すくみあがる。そして、クルスの言葉に従うように門番達は次々に武器を降ろし、魔法を中断していく。
「彼らの身分は私が保証します。ギルド証もおかしな点は無かったでしょう!」
「はい。」
「ならば我が恩人たちを街へと入れても構いませんね?」
「はい巫女様。」
クルスの威厳ある態度に、門番達は頭を下げて、しょんぼりしている。よほど巫女であるクルスに怒られたのがショックだったらしい。
「皆、顔を上げなさい。皆は忠実に職務を実行しただけ。その点は誇りなさい。」
「「「!!はい!巫女様!」」」
クルスは門番達の行いを正当化し、問題にしないと言外に伝える。激励を受けた門番達は、先ほどまでのションボリした顔とは打って変わって、晴れ晴れとした顔へと変化していた。
そしてクルスはまたフードを被りなおして、馬車の中へと引っ込んでいく。
門番達は馬車が通れる様に列をなして、道を作る。そして、その外側にいた市民達は、まるで神様でも拝むかのように、地面に膝をついて、手を合わせていた。
「巫女パワー半端ないな。」
俺達は呆気にとられながらも、ギルド証を返してもらい、門番達が敬礼する道へと馬車を進めて王都へと入っていくのだった。
巫女様は、アイドルか何かなんでしょうか。
きっと神に近い存在として、崇拝の対象になっているのでしょう。
テル君は、クルスの変貌ぶりに驚いていましたね。普段の眠たそうなやる気の感じられない雰囲気は消え、威厳たっぷりな姿に戸惑っているでしょう。
次回は王への報告の話の予定。