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ただいま、馬子。

生活の天使さま登場。


10体のボスを倒して集めた魔法結晶は、パズルのようになっていた。


「コレってこっちじゃない?」

「いや、こっちだろ。」

「あ、逆なんじゃない?」


あーだこーだ言いながら、パズルを完成させる。一つ当たり、拳大の魔法結晶は、ちょっと大きなスイカサイズの真ん丸な魔法結晶へと変化した。


最後の魔法結晶をめこむと、ピカッと一瞬だけ白く輝く。


そして魔法結晶から黒いもやの様なものがスーっと出て来て、空気へと溶けていく。


その後、再び魔法結晶が輝きだして、中から白い魔法光を放つ球体が出現した。


白い魔法光はフヨフヨと俺達の前まで浮かび上がり、変化していく。魔法光がおさまるのに伴い、透明な球体を中心として、色々なパーツが生えてくる。


中心の球体は10cm程度で、生えている手と足は直径1cmくらいの可愛らしいものだ。だが背中に生えている翼は、片方だけでも40cmはある。明らかにバランスがおかしい。


変形が終わった後、その透明な天使は俺達へと語りかけてきた。


「ふぅ。助かりました。有難うございます。」


どこかの品の良さそうな女性の声で、丁寧な喋り方だが、それでいて親近感がある。良いところの近所の奥さまっぽい。ちょっとドキドキする。


透明な天使様はゆっくりと俺達を見る。そして何か納得した様に俺達へと声をかけてきた。


「あなた達の所持品から、既に【水】と【土】の天使は助けて下さったようですね。重ねて御礼申し上げます。と言う事は、既にあらかたの話はご存じの様ですね。そして、こちらの魔族の方は、巫女ですね。」

「え!?クルスって巫女なの!?」


天使のいきなりの発言に、俺達は一斉にクルスへと向き直る。


「ばれたー。」


あちゃー。と言いたそうな顔をしながら片手で目を覆っている。だが声には全く悔しさが感じられない。悔しい演技をしているようだ。


「そー。私は巫女―。神様っぽい人から手紙来た。」


クルスは服の中から一通の手紙を取り出し、俺達へと差し出す。読んで良いようだ。


『こんにちは。御告げでは時々話してるけど、今回は手紙にしてみた。唐突だけど、あなたのいる星、世界が拙い事になっているのよ。そこで巫女のあなたには、世界を救う手助けをして欲しいの。もうすぐ魔族の国に私の下僕が行くわ。彼らと共に世界をまわって欲しい。もちろんタダじゃないわよ。成功報酬として、あなたの願いを聞ける範囲で聞いてあげる。あ。下僕は男で、仲間に人族の男と獣人の女を連れてるわ。悪いやつじゃないから、仲良くね。』


「下僕・・・」


俺は久しぶりに自称神様の事を思い出していた。俺を転生させてくれた自称神様。そして俺に対しては、罵詈雑言を並びたてる自称神様。あれ?なんだか殺意が。


「テル達に気付いてー観察した―。私的に、合格―。」

「お、おう。合格か。有難う・・・?」

「うん。宜しくねー。」


クルスが言うには、俺達を探して必ず通るであろう“境界の湖”まで行こうとしたそうだ。途中にある“神の舌”のエリアは、道が時間や時期によって大きく変わる。王都で待っても良かったのだが、外に出たかったそうだ。その口実として俺達を利用したらしい。


そして“神の舌”のダンジョンに捕えられた所で、俺達が現れたそうだ。一目見て、神様の言う下僕が俺だと気付いたらしい。さすが巫女と言ったところか。


彼女は神様からの手紙を秘密にして、俺達の事を観察したらしい。自分が共に歩むに相応しい人物かどうか。そして結果は合格らしい。


「そうそう。自己紹介がまだでしたわね。ご想像の通り、私は【生活】を司る天使です。以後、お見知りおきを。」

「あ。俺はテル・キサラギです。そしてこっちが。」

「ウラガーノ・インヴェルノです。」

「グラス・フルールと申します。」

「クルスタロ・オルトロスですー。」

「はい。宜しくお願いしますね。事情は理解しているようなので、さっそくですが、助けて頂いた御礼をさせて下さい。」


自己紹介をしてから、助けてくれたお礼をの話へと移っていく。しかも俺達の装備を観察して、俺達の事情も理解してくれている。話がスムーズに進む。


「テルさんへは、“いとなみの一振り”を。ウラガさんへは“営みの一帖いちじょう”を。グラスさんへは、“営みのよろい”を。グラスさんは何がいいですか?」

「お供が欲しいー。」


天使の一存で、あっさりと俺達への贈り物が決定される。別に不平は無いのだが、なんだか感動にかけてしまう。


クルスも、ユキやシズク、ダイチの様な精霊や神獣が欲しいらしい。自分だけいないのが寂しいようだ。


「ごめんなさい。私の神獣は皆弱いのよ。その子達の様には戦えないわ。それでも良いかしら?」


天使は申し訳なさそうにクルスへと謝ってきた。


天使の説明では、彼女の司る【生活】はバックアップ専門の様だ。他の天使たちが世界を守る働きをするのを、裏から支える。だから戦闘能力は皆無であり、神獣達も戦うよりバックアップの能力が高いようだ。


「むーーー。」


クルスは相当悩んでいる。バックアップ能力はこれからの旅で色々役立つかもしれない。しかし、神から託されたのは世界を救う事。戦う力は必須なのだ。


「仕方ないー。今回は諦める―。」

「そうですか。では、クルスには“営みの装飾”を。」


天使は、透明な自分の身体から4つの白い魔法光を放つ。ピンポン玉くらいの白い魔法光は、各自の前まで移動するとピカッと光り、それぞれの形を顕わしてく。


それぞれが貰った物は、全て透明だ。ガラスの様に透き通っている。


「【生活】とは生きる事。生きるには様々な事をしなければいけません。ダンジョンでも経験したでしょう。その“営み”シリーズは、皆さんが覚えている属性を全て扱えます。ですが専門の物より威力が、格段に落ちています。上手に使い分けて下さいね。」


説明を受けるが、もの凄く使い難い武器だ。普段の攻撃なら“水の一振り”等の様に、属性が固定されている方が威力も出て良いだろう。だがいちいち“水の一振り”と“土の一振り”を入れ替えるなんて出来ない時は、“営みの一振り”で各属性へと変換する方が楽かもしれない。


「そして精霊や神獣の方達へは“生活の加護”を与えます。宿主の方に預けますね。」


再び天使が光り輝き、4つの魔法光が俺達の胸へと吸収される。クルスも特別に貰ったようだ。


「“火事場の馬鹿力”と言うのを御存じでしょうか?“生活の加護”は月に1度だけ、自分の能力を越えた力を発揮できます。ですがその反動は凄まじいものでしょう。死ぬ事はありませんが、くれぐれもご注意ください。」


どれくらい威力が上がるかは分からないが、天使の口ぶりからするとかなり強力なようだ。そして、月に一度の制限付き。なんだかチートの臭いがプンプンする。


「さて。そろそろ時間ですね。」


天使がそう言うと、ゴゴゴと地響きが聞こえてくる。ダンジョンが元の天使用の神殿へと変化するする時が来たようだ。


「どこへ行かれますか?」

「あ。そうでしたね。では魔族の国の王都まで。」

「ごめんなさい。そこまで遠くへはちょっと。」

「そうですか。あ。馬子がいたんだった。」

「では“神の舌”を安全に抜けれるようにしておきますね。そしてこれも必要になるでしょう。」


天使様は、自分の魔法結晶の半分を渡してくる。10個で真ん丸になる魔法結晶の半分を俺達へと差し出したのだ。


「キュー!キューー!」


突然ユキが天使に向かって鳴き始めた。どうやら精霊たちの住処を聞いているようだ。


「そうですね。今なら“神の舌”と王との間にある、森にいるでしょう。近くに大きな川と湖がありますので、分かりやすいと思います。」

「キュ。」


ユキはその答えに満足した様で、御礼の言葉を述べていた。


「魔法結晶、ありがとうございます。あともう一つお願いなのですが、ダンジョンにいる他の人たちも、安全にダンジョンから出して頂けますか。」

「ふふふ。もちろんです。」


優しいですねと、天使に笑われてしまった。ちょっと照れ臭い。


「今回は本当に有難うございました。残りの天使達を宜しくお願いしますね。」


天使は優雅に一礼する。そして、その透明な羽を一度大きく羽ばたかせる。すると、このダンジョンでは何度も落ちた黒い穴が、俺達の足元へと出現する。


俺達はそのまま穴へと落ちていく。最後までぶれないなこのダンジョンは。というか、落とし穴は天使の趣味だったのだろうか?ちょっと気になる。


穴へと落ちた俺達が出てきたのは、馬子のいる馬小屋の目の前だった。空に開いた穴から俺達がいきなり現れて、さすがの馬子も驚いている。


そして同様に“森の剣”の方達も、隣の馬小屋へと無事に脱出できたようだ。


俺達はダンジョンだった館の方へと視線を向ける。そこには虹色のバリアがドームの様に館を包み込んでおり、中は見えなくなってしまっていた。


「終わったみたいだな。ただいま、馬子。」


俺達は無事にダンジョンをクリア出来た事を喜び合い、そして久しぶりの馬子へと歩みよっていくのだった。


天使様から貰った武器は“営みの~”にしました。“生活の~”と迷ったのですが。どちらも違和感が。どちらが良いと思いますか?

もしかしたら、変更するかもしれません。

テル君は、ようやくクルスの正体が分かったようです。でも旅の目的がテル君とかぶってしまう。うーん。どうしよう。

次回は、王都への移動の話の予定。

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