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やっぱり胃の中でも消えるんだな。

第37、38室の話。

ちょっと短め。


36室の計算という仕事を終え、昼食もとり終えた俺達は、次の部屋へと挑む。


37室には500m×1kmの部屋に、たくさんの野菜が植わっている。さらに右奥の方には、たくさんの果樹が植えられている。土の臭いと、果樹の甘い臭いがなんとも心地よい。


ここの部屋で出た魔獣はハーピーだった。鳥人間のハーピーは、【生活魔法】を使って、弱い【風魔法】を使ってきた。カマイタチの様に俺達を傷つけようとするが、全てウラガが防ぐ。


野菜が植わっている上空は、特に何も無いのでグラスが【火魔法】を使い、口から火炎を吐いて、ハーピーを燃やす。羽が燃えて落ちてきたハーピーを俺が止めを刺していく。


俺も久しぶりに【斬戟】のスキルを発動する。さらに【水魔法】を使って、剣が通った斬戟通りに、水の刃が飛んでいく。水ナイフは数が打てるので今までよく使ってきた。だがこの部屋では、ハーピーには悪いが、移動する敵を狙う練習台になってもらおう。


最初こそハーピーには避けられるが、だんだん慣れてくる。初撃はおとりで、二戟目が本命だ。俺には【オール・フォー・ソード】の固有能力があるので、すぐに身体の動きも最適化されていく。


俺とグラスが頑張ったせいで、ウラガとクルスは特にする事が無くなってしまった。ハーピーの射程距離より、俺達が攻撃できる射程距離の方が広いので、敵の攻撃が発動する前に勝負は付いているのだ。


ハーピーを殲滅した後は、畑や果樹の作物を収穫する。そのあと、肥料を撒いて、土を耕して、種を撒いて、水をやる。


畑の中には、車のように大きな岩が埋まっていたり、なぜか埴輪はにわが発掘される。そういう物は、植物の成長の邪魔になるので、ゴミ置き場と書かれた壁際に集めた。


土を耕すのは、モノリスのダイチ。水撒きは、俺とユキのチーム。ウラガとシズクのチーム。クルスは単独でそれぞれ分担した。なので魔力の消費も抑えられて、短時間で終わった。魔法を使える事の便利さを、改めて実感する。


次の部屋は18室。料理だ。右側の壁には大量の食材が。部屋の中央には、ずらっと調理台が並び、部屋の左側には食材を洗ったりする水場と、食器棚、そしてレシピが書かれた黒板がある。


「じゃぁ今回も、クルスが料理の補助って事で。」

「むー。しょうがないー。」


全開同様、俺の料理の補助を決めるジャンケンで、クルスが負けた。部屋に入ると、食材を食い荒そうと、ケルベロス達が動き出した。とりあえず、俺とグラスは【ステップ】を使って、食材に近付くケルベロスを優先して退治する。ある程度距離があるケルベロスは、クルスが魔法で攻撃する。ウラガは・・・まぁ野菜を守っている。暇そうだ。


料理は、付与のあるナイフのおかげでスムーズに終わった。だが時間はかなりかかった。4時間だ。第38室をクリアしたら、もう日が暮れる時間になった。


俺は、38室に続いて料理をしようと思ったのだが、俺達は一つの実験を試みる。


「やってきました!一回、料理大会!はい!拍手―。」

「「「・・・パチパチ」」」


三人は、愛想笑いを浮かべながらも、拍手してくれる。


もう一度戻ってきた38室で、俺達はケルベロスを退治した後、一つのキッチンの前に集まっていた。これから始めるのは、料理大会と言う名の実験だ。


このダンジョンは、部屋の中の物を部屋の外へと持ちだせない。なら、食事として料理し、胃の中へ、さらに栄養として身体へ吸収された後はどうなるのかを確認するのが目的だ。


「部屋に入って、最初に確認したんだが、一応食べる事は許されているようだ。」


38室へと戻ってきた時、まず食材を食べれるのかをチェックした。食べた瞬間にブザーが鳴って、部屋に戻されないかを調べたのだ。結果は大丈夫だった。味見の部類に含まれるのかもしれない。おそらく38室限定で許可されているのだろう。37室の畑だと、無理かもしれない。


「良い機会だから、皆にも料理を体験してもらおうと思ったんだ。一応レシピもあるし、食いたいものを作ってみてくれ。それを皆で食べよう。」


と言う事で、俺は鳥肉を使ったグラタンにした。久しぶりに牛乳が使いたいし、オーブン等は、高い料理店にしか無いので、旅をしている俺にとっては使う機会がほぼ無いのだ。


本当は、ドリアを食べたいのだが、このダンジョンで用意された食材の中には、米が無かった。お米は、どこにあるんだろう。


そして30分後。出てきた料理は、料理では無かった。


ウラガは、簡単なはずのポトフにチャレンジした様だが、なぜか食材がドロドロに溶けて、スープは塩辛い。


グラスはお好み焼きを作ろうとした様だが、なんといか・・・新しい料理だ。生地は水分が多くてドロドロだし、キャベツも細切りとは言えないし、細切れともいえない。もんじゃ焼きと、お好み焼きの間の様な、気持ち悪い見ためだ。


クルスは、一番まともだ。といっても野菜炒めだ。ざく切りの野菜と、豚肉?を炒めてある。味も食べれる味だった。


俺は念のために、グラタン以外に唐揚げやお好み焼きを作っておいた。久しぶりの野菜や乳製品に俺達は舌鼓したつづみをうつ。うまい。


腹が膨れた俺達は、実験の最終段階へと移る。部屋を出るのだ。


その前に、今日の所はここで眠る。栄養が吸収されるかは実感できないが、消化されれば、おそらく吸収されているだろう。もし吸収された分も消えるなら、それこそ実感できないので数日の観察が必要だろう。


そして翌日。俺達は再び料理大会を開いて、腹に何か知らを詰め込んだ。と言っても、うほとんど俺の作ったサンドイッチだ。野菜たっぷりだ。


「みんな、いいか?」

「おう!」


俺達は意を決して、38室から出る。


部屋から出た瞬間、今まで腹いっぱいだったものが、すっからかんになった。


「うへぇ。なんか気持ち悪ぃ。」


それまで食料を溶かそうと大量に分泌されていた胃酸だけが、胃の中に残ったのだ。当然気持ち悪くなる。胃酸過多に似ている。


「やっぱり胃の中でも消えるんだな。」


俺は事前に用意していた、ミノタウロスの肉で作った干し肉を皆に配る。何か胃に入れないと、吐きそうになっているのを、なんとか抑えることができた。


結局、ダンジョンの部屋で食べた物は、胃の中だろうが部屋を出た瞬間に消え去る事が分かった。栄養については分からないが、とりあえず晩飯は18室か38室に戻ってきて、検証する事にしよう。


俺達が38室の前で肉を食っていると、階段を上がってくる音が聞こえた。


俺達は大階段まで移動すると、一階から、魔族の冒険者パーティーである“森の剣”が上がってきたところだった。


リーダーが俺達に向かって手を振っているが、その顔は疲労困憊のようで、青くなっていた。


俺達は何があったのか話を聞こうと、彼らに近付く。そして彼らから聞かされたのは、壮絶な修羅場だった。


ダンジョンは甘くないのです。食べたものが消える。想像しただけで、恐ろしい。栄養面はどうしようか、作者自体未定w。

テル君は、皆に料理をさせようとイベントを企画しましたが、苦手意識を増長させただけかもしれませんね。ですが、クルスは進歩している気がします。よかったねテル君。

次回は39室以降の話の予定。

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