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二人は寝てていいから。

第31,32,33,34,35,36室の話。

途中、もの凄い飛ばしてます。


その後のダンジョンは、少しは手ごわかったが特に苦戦する事も無く進む。


31室からの掃除シリーズでは、ウラガの【生活魔法】に、グラスとクルスは魔獣から得た【生活魔法】の魔法結晶を使っての掃除で、楽々進む事ができた。


31室の皿洗い。

32室の30kmにも渡る溝掃除と床掃除。

33室の大量の汚れた衣類の洗濯。

34室のきらびやかな装飾品や、壊れやすそうな木彫りの、掃除と油塗り。

35室のトイレや台所の水回り。


もちろん魔獣も出てきた。31室の皿洗いや33室の洗濯ものでは、タコの姿の魔獣が出てきた。そいつがすみを吐き出して、皿や衣類を汚すのだ。そして一度汚れれば、部屋全体にブザーが鳴り響き、やり直しである。


32室と34室、そして35室には、スライムよりドロっとしたゲル状の魔獣や、巨大なネズミが出てきた。ゲルは口からヘドロを吐き出したのだが、それがもの凄く臭い。一週間掃いた靴下に、納豆を混ぜて、さらにクサヤを足したような、もう何とも言えない臭いだった。


獣人族であるグラスは、あまりの臭さに一瞬意識が無くなった程である。


そんなゲルは、【火魔法】か【氷魔法】にとても弱かった。すぐ沸騰して水分が飛んで行き、個体となって砕け散るか、凍らされて砕け散るかだ。ここではグラスとユキが頑張ってくれた。ユキは一刻も早く倒そうと、ゲルを見つけると即座に【火魔法】を発動させるために、あらかじめ準備するほどだ。


そして体長1m近い巨大ネズミは、俺達を食おうと襲ってきた。口からよだれを垂らし、舌舐めづりまでするのだ。鳥肌ものだった。しかも【生活魔法】で身体強化しているのか、見かけによらず素早い動きをして、俺達も最初は戸惑った。


さらにこいつは【火魔法】や【氷魔法】に対する耐性が高い。皮下脂肪で守られているのだ。だからゲルと一緒に出て来られると、かなり面倒だった。



だがそれでも俺達の敵ではない。素早い動きも、目が慣れてくると、易々と切り伏せられたし、氷に対して耐えられても、床が凍れば滑るので、こけたところを切り裂く。


そうして二日かかって掃除シリーズをクリアした俺達は、今は朝食の真っ最中だ。


「これで野菜は最後だよ。」


とうとう俺が用意しておいた野菜が無くなる。最後の野菜は痛みはじめていたので、しっかり加熱して食べる。さすがに生では食べられない。


「どっかに植物系の魔獣、落ちてないかねぇ。」


とウラガがため息をつく。このダンジョンは、部屋の備品は、部屋を出た瞬間に消えるのだが、魔獣の肉は持ち出せるようだった。なので、ウラガは植物系の魔獣が出てくる事を望んでいるようだが、そう易々とは出ない。


次の36室からは仕事ステージだ。


俺達が部屋に入ると、16室同様、大量の書類が積まれた机が何台も並んでいた。また計算問題のようだ。


とりあえず俺達は書類仕事をする前に、魔獣狩りを済ませる。出てきたのは人サイズのサイクロプスに、ミノタウロスだ。手には棍棒や斧を持っており、近くにある机をぶっ潰そうとする。


俺とグラスは【ステップ】で部屋中を駆け回り、魔獣が悪さをする前に倒していく。俺は“水の一振り”を出して、ユキに氷属性を付与してもらう。


ユキに付与してもらった氷属性のおかげで、魔獣を切った時に、傷口から血が飛び散る事は無く、近くにある書類を汚さずに済むのだ。例え身体を半分に切り裂いても、傷口は凍ってしまうので安心だ。


魔獣討伐後は、書類に向かう。書類と言っても、一枚に一問数学の問題が書かれているだけなのだが。


だがそこは少し16室と違った。書かれているのが文章問題なのだ。


例えば、「お兄さんの太郎君は、1時間前に出た弟の次郎君を追いかけて~兄弟が出会うのは、何時間後でしょう?」だ。


ひっかけなのか知らないが、いらない情報もわんさか書き込まれていた。所持金とか、年齢とか、関係無い時間とか。正直子供だましだと思う。元々理系の俺は、そんな文章問題でもスラスラと解いていく。


そこで俺はふと、ある事に気付いた。それは紙に文字を書く音が俺からしか聞こえないからだ。


顔を上げてみると、ウラガもクルスも頭を抱えている。16室で算数の解き方を教えて、理解したはずの二人が、止まっているのだ。ちなみにグラスは、早々に諦めて、自主訓練をしている。


「何が分からないんだ?」

「時速?秒速?、売値と割合?、どの数字を使えばいいのか分からないんだ。」


そうなのだ。この世界ではあまり時速とか秒速という概念が浸透していない。王都の図書館で読んだ本には、時速の表記があったので、存在する事はするのだが、一般人は使わないので知らないようだ。そして、割合というのも浸透していない。○割り引きとかではなく、○円引きが主流なのだ。


俺は時速や秒速、割合について、懇切丁寧に説明した。まずは、実体験に沿った表現方法からだ。馬車で2日かかる道のり100kmは~から始まって、それを時速、分速、秒速へと直していく。そして、商売を例にとっての割合の説明と、売値や原価の計算方法も教える。


「おぉ!何となくわかった!」

「えー。私はまだー。」


さすが商売人を目指すウラガ。計算も得意なようで、直ぐに理解する。だがクルスは、いまいち納得いかないようで、まだ理解出来ないようだ。


「わかった。なら俺が数式を書くから、クルスはそれを解いてくれ。そのうち理解できるよ。」


俺は時間が惜しいと思い、俺が問題を読んで数式を書き、その数式をクルスが計算する方式を取った。


カリカリカリカリ。大量の書類に向かう事5時間。俺達はとうとう全問題を正解する事ができた。


この部屋は答えの欄に数字を書きこむと、正解ならピンポーン♪不正解ならブッブー♪となる親切設計だ。


正解かどうか直ぐに分かるので、とても助かる。もし不正解でも、何も鳴らなければ、部屋中の問題を一から確認し直す事になるはずだ。そんなのは地獄だろう。


しかも途中からクルスが理解できたのも良かったし、慣れてくるとウラガもクルスも計算が早い。おかげで4時間と言う短時間でクリア出来たのだ。


だがそれでも4時間座りっぱなしで、計算し続けるのはキツイ。座るのは馬車の旅で慣れているが、計算となると理系の俺でも嫌になる。


なので今のウラガとクルスは、「ウーン」とうなされながら、寝ている。よっぽどキツかったようだ。


俺は、二人の精神が少しでも安らぐようにと、お茶を入れる。二人は、のそりと起きて、虚ろな瞳のままお茶をすすっている。


「ちょっと早いけど、昼休憩にしようか。二人は寝てていいから。」


ウラガとクルスは俺の声に、コクリと頷くと、直ぐに眠ってしまった。二人のかわりにグラスが俺の手伝いをしてくれる。グラスは一人修行してた見なので、後ろめたいのだろう。何も言わずに、料理の下準備もしてくた。と言っても、肉に塩や胡椒、香草をまぶしたり、ダイチと一緒にテラスに食器を並べるだけなのだが。


そして食事ができるまでの30分という短時間だが、一眠りできたウラガとクルスの顔色はだいぶ良くなっていた。口々にもうりだと言っていたが、ウラガにとっては店を持つ以上、将来に渡って数学が付いて回る。これも慣れるしかないのだ。


早めの昼食を取った俺達は、32室へと挑むのだった。


書くことが無い訳ではないのですが、いまいち盛り上がらなかったので、ばっさりカット。なので掃除ステージである31から35室は省略しました。

テル君は計算が好きみたいですね。数学のテストでも2時間とかって、あっと言う間に過ぎますよね。不思議です。

次回は32室以降の話の予定。


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